eぶらあぼ 2022.10月号
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174ショパン・リサイタル 2022/牛田智大追憶 MEMORY/相曽賢一朗&ヴァレリア・モルゴフスカヤアザラシヴィリ:追憶、バレエ「ヘヴィスベリ」より〈女たちの踊り〉/ダヴィタシュヴィリ:ポエム/マチャヴァリアニ:民族舞踊/民謡「ヴァ・ギョルコ・マ〜私を愛していないの?」/ツィンツァゼ:メロディア/チュビニシヴィリ:ムハンバジ〜あなたをどれだけ心配しているかを知ったなら 他相曽賢一朗(ヴァイオリン)ヴァレリア・モルゴフスカヤ(ピアノ)オクタヴィア・レコードOVCX-00101 ¥3300(税込)ファゴット協奏曲集/リッカルド・テルツォ牛田智大が12歳でデビューを飾ってから早くも10年が経つ。その記念リサイタルとして東京で開かれた「ショパン・リサイタル 2022」のライブ録音。ショパンの重要作である「幻想曲」「バラード第4番」「英雄ポロネーズ」「舟歌」「幻想ポロネーズ」、そして「マズルカ第49番」を収める。熱い情念を伝えるドラマティックな表情から、輝きに満ちた勢いのある流れ、かそけき呟き声のようなタッチまで、自在に描き分ける牛田のショパンのエッセンスが凝縮したような一枚だ。アルバムの最後に配置された、ショパン最後の作品である「マズルカ第49番」が、聴き手の心に残す余韻は深く長い。(飯田有抄)一度は音楽を諦め6年間もクラリネットから遠ざかるが、2020年の1月に一念発起し再び楽器を手にして並外れた努力を重ねて“道”を取り戻し、今やライブ配信アプリ「17LIVE」で4万人近くのファンを持つ人気ライバーに成長。そんなバックグラウンドを持つ榊原花梨のファースト・アルバムは、心の中で鳴り続けて彼女の支えとなった「サウンド・オブ・ミュージック」の名曲のひとつ〈すべての山に登れ〉にインスパイアされた映画音楽集。現役藝大生の福留亜音によるピアノ&編曲の好サポートも素晴らしく、特にメドレーの繋ぎ方が絶品。ユニットとして今後の活躍にも期待が膨らむ。(東端哲也)パラジャーノフやピロスマニの作品を観ると実感できようが、ジョージア(グルジア)の文化の独自性には目をみはる。それはある種の「無時間性」と言えるだろうか。相曽賢一朗とヴァレリア・モルゴフスカヤによる「MEMORY」と題された、かの国の作曲家による本作品集もまったく同様。アザラシヴィリ作品から始まって民謡をも挟み込んでのチュビニシヴィリ作品に至るどの曲も民族的色調が濃く、極めて懐古的かつ感傷的で誠に美しい。ヴァイオリンとピアノというオーセンティックなクラシックの「形式」はそれらに格調の高さをもたらし、繰り返し聴くにも値する。理屈は不要、愉しめる一枚だ。(藤原 聡)ファゴットという楽器を、“縁の下の力持ち”のごとく扱うのは一体、誰だ? 名門ゲヴァントハウス管の首席を務めるイタリア出身の名手、リッカルド・テルツォの快演は、こう大らかに問いかけるかのよう。18~20世紀の4つの名ファゴット協奏曲を取り上げたアルバム。豊潤な低音域、テノールを思わせる高音域は、人の歌声さながら。そして、人生の在り様に悩むシリアスさも、道化が演じる軽妙さも併せ持つ、ソロ楽器としての魅力を余さず表現。共演のカメラータ・ザルツブルクも、そんな変幻自在なテルツォの表現へ寄り添う、緻密なバックアップで応えている。   (笹田和人)ショパン:幻想曲 ヘ短調、バラード第4番、ポロネーズ第6番「英雄」、同第7番「幻想」、舟歌 嬰ヘ長調、マズルカ第49番(遺作)牛田智大(ピアノ)マンシーニ:「ティファニーで朝食を」より〈ムーン・リヴァー〉/バーンスタイン:「ウエスト・サイド・ストーリー」より〈トゥナイト〉/E.モリコーネ&A.モリコーネ:「ニュー・シネマ・パラダイス」メドレー/ロジャース:「サウンド・オブ・ミュージック」メドレー 他榊原花梨(クラリネット)福留亜音(ピアノ/編曲)モーツァルト:ファゴット協奏曲 K.191/ウェーバー:ファゴット協奏曲 op.75/ロッシーニ:ファゴット協奏曲/ジョリヴェ:ファゴット協奏曲リッカルド・テルツォ(ファゴット)グレゴリー・アース(コンサートマスター)カメラータ・ザルツブルク収録:2022年3月、東京オペラシティ コンサートホール 他(ライブ)ユニバーサルミュージックUCCY-1115 ¥3300(税込)UCBY-1007 ¥4180(税込)(DVD)UCXY-1003 ¥5500(税込)(Blu-ray)コジマ録音ALCD-3127 ¥2530(税込)キングレコードKICC-1601 ¥3300(税込)CDCDCDCDCINEMA/榊原花梨

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