eぶらあぼ 2022.10月号
171/201

168マーラー:交響曲第9番/サイモン・ラトル&バイエルン放送響ベートーヴェン チェロとピアノのための作品全集/花崎薫&野田清隆ハイドン:交響曲集 Vol.16/飯森範親&日本センチュリー響ショパン:ピアノ協奏曲第2番 他/實川風ラトルが2023/24シーズンから首席指揮者に就任する名楽団と行った、ハイティンク追悼コンサートのライブ録音。すでに同曲のCDを2種類出しているラトルだが、コンサートの出来に感激してCD化を強く要望したという。演奏を聴くとその話も頷ける。全体に、あらゆる動きが明瞭で、細かな音が意味を放ちながら進む。特に第3楽章の音の絡みが新鮮で、第4楽章は実に感動的。そしてこれは、この曲が、「絶望」や「死」だけでなく、「愛情」「憧れ」「温もり」「生命力」などあらゆる要素を含んだ、「人の一生」を表すような作品だと感じさせる、類のない名演だ。 (柴田克彦)花崎薫は大阪フィルの客演首席。ベートーヴェンのチェロ・ソナタは、小倉貴久子のフォルテピアノと全集録音している。この野田清隆のモダンピアノとの全集は、長年の取り組みの集大成のような出来である。まず初期の第1、2番からは、青年の楽想を詰め込むだけ詰め込んだ覇気が伝わってくる。ピアノも自らの力を誇示するために特に力が入っていて、野田もそれに十二分に応えている。第3番は傑作に相応しい大柄で重厚な演奏。それでいてセンスがよく上品だ。第4、5番は難渋だが、本盤は対位法的なデリカシー(特にフーガの構築)やカンタービレの美しさなど特筆に値する。素晴らしいベートーヴェンだ。(横原千史)日本センチュリー交響楽団が、首席指揮者の飯森範親の下で2015年にスタートした「ハイドンマラソン」。104の全交響曲を8年かけて演奏、併せてCD収録を行う壮大なプロジェクトも、いよいよ終盤に。第16弾では、それぞれ30、40、50代で書かれた3曲を取り上げた。時代特有の語法や管・弦の連携、音の透明度にいっそうの磨きがかかり、ハイドンがスコアにしたためた、深い精神性に根差す愉悦や、上質な諧謔をつぶさに体現。随所に仕込まれた各楽器のソロも美しい。彼らの快演によって、着実に変化がもたらされた、わが国でのハイドン観。「継続は力」との言葉を裏付ける。(笹田和人)實川風のソロと「ハマのJACK」メンバーの弦楽五重奏による、室内楽編成で協奏曲を演奏する「横浜18区コンサート」ライブ録音。ピアノ協奏曲第2番では、實川が確かなタッチで鳴らすピアノの音が、ショパン20歳の頃の純粋さ、初々しさ、内に秘めた感情を再現するよう。ストリングスはしなやかな音で絡み合う。第2楽章も過剰に甘い味付けをすることなく、どこか爽やかさを保って歌っていくことで、弦楽器に促されて感情を吐露する場面が際立つ。アンコールは、實川のソロによるマズルカop.50-2。繊細に揺らぐ自由なダンスを聴くことができる。 (高坂はる香)マーラー:交響曲第9番サイモン・ラトル(指揮)バイエルン放送交響楽団ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第1番〜第5番、ヘンデル「マカベウスのユダ」の〈見よ、勇者は帰る〉の主題による12の変奏曲、モーツァルト《魔笛》の〈恋人か女房が〉の主題による12の変奏曲、同〈恋を知る男たちは〉の主題による7つの変奏曲花崎薫(チェロ)野田清隆(ピアノ)ハイドン:交響曲第51番 変ロ長調、同第28番 イ長調、同第91番 変ホ長調飯森範親(指揮)日本センチュリー交響楽団ショパン(ケヴィン・ケナー、クシシュトフ・ドンベク編):ピアノ協奏曲第2番(室内楽版)、マズルカ第31番實川風(ピアノ)ハマのJACKメンバー(弦楽五重奏)【三又治彦 白井篤(以上ヴァイオリン) 村松龍(ヴィオラ) 海野幹雄(チェロ) 松井理史(コントラバス)】収録:2022年3月、港南区民文化センター ひまわりの郷(ライブ)BRAVO RECORDSBRAVO-10009 ¥3300(税込)収録:2021年11月、ミュンヘン(ライブ)BR-KLASSIK/ナクソス・ジャパンNYCX-10340 ¥2970(税込)コジマ録音ALCD-9238,9239(2枚組) ¥3740(税込)収録:2019年11月、いずみホール(ライブ)オクタヴィア・レコードOVCL-00791 ¥3520(税込)CDCDSACDCD

元のページ  ../index.html#171

このブックを見る