eぶらあぼ 2022.9月号
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7010/18(火)13:30 浜離宮朝日ホール問 朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990 https://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/浜離宮アフタヌーンコンサート 風ぐるま 〜時代を越えて音楽の輪を回す〜バロックから現代まで、独自の“ことば”で綴る唯一無二の世界観 2012年結成。幅広いレパートリーでキャリアを重ねるメゾソプラノの名手・波多野睦美と、日本を代表するコンポーザー・ピアニストの高橋悠治、多彩な活動を展開しているバリトン・サクソフォン奏者の栃尾克樹という逸材が集まり、中世・バロックのクラシック曲からオリジナル作品まで「時代を越えて音楽の輪を回す」魅惑のステージが再び。この3人組がよくあるアンサンブルなどでないことは、過去の公演やこれまでにリリースされた2枚のアルバムからも明らか。言葉や歌詞に対する執拗なまでの“こだわり”は時に、朗読劇のようなスタイルで音楽世界を完成させる。例えば、麻酔のない時代の膀胱結石手術の恐ろしい情景をピアノに乗せた、いななくバリトン・サクソフォンと日本語(高橋訳)の語りで綴るマラン・マレ(1656~1728)作品の編曲ものもユニークだが、同じく1stアルバム収録の高橋作品〈六番の御掟について〉クでスケールが大きい。 今回はライスキンが得意とするスラヴ音楽(チェコ、ロシア)を取り上げる。チャイコフスキー「幻想序曲『ロメオとジュリエット』」はお国ものであり、スメタナ「モルダウ」とドヴォルザーク「交響曲第8番」はスロヴァキア・フィルでの経験が生きる。今年6月に配信された同オケとのドヴォルザーク「交響曲第7番」は第3楽章が特に民族色豊かな演奏だった。ライスキンはオーケストラと信頼を築き、リハーサルと本番で新しい感情と発見を導き出すことに重点を置く。このところ絶好調の神奈川フィル定期演奏会 第380回 10/15(土)14:00 神奈川県民ホール問 神奈川フィル・チケットサービス045-226-5107 https://www.kanaphil.or.jpにも乞うご期待…同作では1600年頃日本にいた宣教師が書いた「コリャード懺悔録」からインスパイアされた辻征夫の詩(ほとんど腐れ縁の男女の会話劇)と、原文の九州弁によるテキストが歌われる。他にも、第一次世界大戦の波多野睦美 ©HAL KUZUYAダニエル・ライスキン ©Marco Borggreveとライスキンは、作品に新たな命を吹き込む新鮮な演奏を聴かせてくれるに違いない。高橋悠治 え/柳生弦一郎文:長谷川京介文:東端哲也栃尾克樹後遺症で後半生を病院で過ごした作曲家で詩人のアイヴァー・ガーニーが、戦場でバッハの前奏曲を思い出している歩哨を詠んだ〈バッハと歩哨〉に作曲した作品なども必聴。この美しくも刺激的な世界をぜひ体験してみるべき!ダニエル・ライスキン(指揮) 神奈川フィルハーモニー管弦楽団世界で活躍する実力派で聴くスラヴ音楽の魅力 神奈川フィル初登場となる指揮者ダニエル・ライスキンは、サンクトペテルブルク生まれ。マリス・ヤンソンス、ネーメ・ヤルヴィ、ヨルマ・パヌラ(サロネンやマケラを育てた名教師)といった錚々たる名匠たちの教えを受けた。これまでロシア国立響、モスクワ・フィル、マリインスキー劇場管、ハノーファー北ドイツ放送フィルなど名門オーケストラを多数指揮、現在スロヴァキア・フィル首席指揮者、カナダのウィニペグ響音楽監督およびセルビアのベオグラード・フィル首席客演指揮者を務めている。 録音も多く、近年のブラームス「交響曲全曲」、ショスタコーヴィチ「交響曲第4番」、マーラー「交響曲第3番」は高い評価を得ている。これらを聴くと、指揮は堂々としており、まさに正統派。ブラームスは内声部を充実させ、ショスタコーヴィチは鋭い切り口と強靭なパワーがあり、マーラーはドラマティッ

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