6910/20(木)19:00 浜離宮朝日ホール問 テレビマンユニオン03-6418-8617 https://www.tvumd.comInterview柳田茄那子(ヴァイオリン)伝統を継承する若きヴァイオリニストの今を聴く 9月にリサイタルを開催するヴァイオリニスト柳田茄那子は、東京藝術大学在学中に英国王立音楽院に留学し、ジョルジュ・パウクに師事。2016年に帰国後は精力的な演奏活動を行い、21年には「東銀座バイオリンスクール」も開始した、気鋭のアーティストである。8歳で来日公演を聴いて以来憧れ続けていたパウクにロンドンマスタークラスで再会し、やはりぜひ師事したいと決断して渡英に至ったという。興味深いことに、柳田がそれまで師事した小川有紀子、山崎貴子、澤和樹、全員パウクの門下生である。 「偶然ではあるのですが、幸いなことにある種の一貫性が先生方の教えの中にあって、パウク先生のご指導にも繋がりました。人の声に近い音、歌っているように弾く“ヒューマンボイス”がパウク先生のモットーです。長く継承されているハンガリアン・スクールの演奏法を引き継いでいく重要性を感じています」 柳田はまさにそれを受け継いだ、美しくも濃密、隅々まで歌心に満ちた音が特色で、日本でその奏法を伝える貴重な存在だ。今回は、17年の初共演以来「共演者と音で会話ができる方で、経験や感覚も豊かで学ぶところが多い」と全幅の信頼をおくピアニスト居福健太郎との共演で、満を持しての“いま弾きたい曲”を集めた祈りのプログラム テーマとして掲げられている「祈り」というキーワードは、有吉亮治が今もっとも客席に届けたいと思う作品を並べていくなかで、ふと行き着いた言葉だという。ピアノ・リサイタルの開催は実に3年ぶり。優れた器楽奏者たちとの室内楽やオーケストラとの共演の経験を重ね、桐朋学園大学では後進の指導にもエネルギーを注ぐ有吉の奏でるピアノは、伸びやかな優しさに富み、作品理解の深さを着実に音にする鋭さを併せ持つ。 そんな有吉が選んだ、ブラームスの内省的な後期作品「3つの間奏曲 op.117」、シューベルトによるメランコリックな表情をもったソナタ第14番、ショパンの情念が映し出されたバラード第2番や「幻想ポロネーズ」といった作品群は、リサイタル名の「音の彼方へ」にもある通り、音楽のその先にある大切なメッセージを届けたいという心を伝える。「『祈り』が『希望』へとつながることを願って」と語るその音楽に、この秋、ゆっくりと耳を傾けたい。リサイタルとなる。 「前半はシューベルトの2曲、ソナチネ第1番とロ短調のロンドです。シューベルトは楽しい中にも悲しさがあり、心に沁みるものがあります。後半、イザイの無伴奏ソナタ第4番は独特な和声感の中にヴァイオリンの面白さ、テクニックが散りばめられ、入り込みやすい曲だと思います。武満徹『妖精の距離』は詩が土台にある曲で、私は禅のような日本の“静”、“間”の感性を感じ、それを表現したい。最後のパガニーニ『魔女の踊り』はめったに聴く機会がありませんが、私にとっては重要で大好きな曲です。技巧的にはなかなかの難曲ですが(笑)、こういう曲が埋もれないように、掘り起こしていきたいという精神もあります」 リサイタル会場で先行発売するデビューアルバム『SUONO ETERNO』は昨年9月の録音で、かのミッシャ・エルマンが愛奏していたストラディヴァリウス「サマズィユ」(日本音楽財団から柳田茄那子 ヴァイオリン・リサイタル 9/24(土)14:00 王子ホール問 パシフィック・コンサート・マネジメント03-3552-3831 http://www.pacific-concert.co.jp短期貸与)で収録に臨んだ。タイトルはイタリア語で「永遠の音」で、「永遠に引き継がれるべきものを受け継いでいく」という思いが込められていると語る。まさに柳田の「受け継ぐ、引き継ぐ」精神の表れともいえる。奏法の伝統の担い手を自負し、埋もれた曲を再発見し、それらを説得力ある名技で聴かせていく。柳田のリサイタルとその後の活動、深く注目していきたい。文:飯田有抄取材・文:林 昌英©大野智嗣有吉亮治ピアノリサイタル 〜音の彼方へ2022「祈り」
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