eぶらあぼ 2022.9月号
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 BCJはいまさら説明するまでもなく、世界の第一線で活躍するオリジナル楽器、つまり古いスタイルの楽器のスペシャリストが集結したオーケストラと合唱団。バッハの時代に用いられた楽器やピッチを探求しながら、バロック音楽の理想的な演奏をめざし、日本をはじめ世界で演奏活動を繰り広げている。 全6曲からなり、1曲ごとに異なった楽器編成で書かれているブランデンブルク協奏曲は、バラエティに富み聴き手を飽きさせない。そのかわり演奏するのは大変だが、そこでBCJの本領が発揮されるはずだ。なにより古楽を指揮して日本一の鈴木優人の棒だからまちがいない。18世紀に聴かれたであろうシャープだがやさしい音色と親密な雰囲気が再現されるだろう。 そして、その音は16世紀に大分で聴かれた音につながる。西洋音楽発祥の地で聴くブランデンブルク協奏曲は、特別な音楽体験になるはずだ。大分の史実を題材にした60 西洋音楽が日本に受容されたのは幕末が初めてではない。そこから300年さかのぼる16世紀後半、キリスト教とともに伝えられていた。たとえば大分。キリシタン大名として知られ、フランシスコ・ザビエルにも面会している大友宗麟の庇護のもと、教会で聖歌が歌われ、日本における「西洋音楽発祥の地」とされている。 その後も島原半島などのセミナリオ(初等教育機関)では音楽教育が行われ、そこで学んだ天正遣欧少年使節の4人は、鍵盤楽器や木管楽器の名手だったと伝わる。もし鎖国が行われず西洋音楽が排除されなかったら、日本の音楽環境はどう発展していただろうか。筆者はつい夢想してしまうが、そんな思いに応えてくれるのが、大分のiichiko総合文化センターで開催されている「西洋音楽発祥の地プロジェクト」である。 その当時に近い音による演奏や、当時の音楽環境が理解できる舞台を通して、四百数十年前の文化交流に思いを馳せることができる。すると、西洋音楽がより身近に感じられるようになるから不思議だ。 今年も2回、そんな得難い体験ができるチャンスがある。ひとつは10月6日に開催される。J.S.バッハのブランデンブルク協奏曲全曲演奏会で、鈴木優人が指揮するバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)による演奏だ。奏でるバッハの音楽鈴木優人 ©Marco Borggreve もうひとつのチャンスは、11月6日に上演される創作舞台『ムジカと生きる』である。 大分県出身で、コンテンポラリーダバッハ・コレギウム・ジャパン ブランデンブルク協奏曲 全曲演奏会10/6(木)18:30 創作舞台「ムジカと生きる」 11/6(日)16:00 大分/iichiko総合文化センター iichikoグランシアタ問 iichiko総合文化センター097-533-4004 https://emo.or.jpバッハ・コレギウム・ジャパン ©Ayumu Kakamuオリジナルの舞台左より:椎原克知、田中なずな、石橋直也、嘉目真木子ンサーとして世界で活躍する穴井豪が総合監督と演出を務めるこの公演は、演劇、洋舞、日舞、合唱、器楽とジャンルを超えた120人が集うスケールの大きな舞台だ。藤原道山が音楽監修および作曲を手がける。 主人公はカトリックの司祭で、鎖国前の日本人としてはもっとも世界を渡り歩いた末に殉教したペトロ・カスイ・岐部。キリスト教への圧力が強まるなか、司祭になろうとローマ行きをめざすペトロ・岐部には、大友宗麟が音楽あふれる平和な理想郷をそう呼んだのと同名の「ムジカ」という謎の存在が寄り添う。そして、ムジカの力でペトロ・岐部は故・宗麟と出逢い、2人の願いと情熱が交わって奇跡が起きる。 脚本を手がけた石橋直也が自らペトロ・岐部を演じ、ムジカを田中なずな、宗麟を椎原克知(文学座)、マリア波多(ペトロの母)を嘉目真木子(東京二期会)が演じる。 あの時代、理想郷「ムジカ」が地上に出現し、禁教や鎖国が行われなければ――。そんな想像をめぐらせながら、音楽があふれていた400年前にタイムスリップする。そうした体験のあとでは、音楽がより深く、豊かに、自分のなかに根差すのではないだろうか。文:香原斗志西洋音楽発祥の地プロジェクトバッハ・コレギウム・ジャパン ブランデンブルク協奏曲 全曲演奏会創作舞台「ムジカと生きる」400年以上前に西洋音楽が奏でられた地で夢のタイムスリップ古楽のスペシャリストが

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