eぶらあぼ 2022.9月号
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第355回 定期演奏会 10/28(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 https://www.cityphil.jp5510/21(金)11:00 文京シビックホール(小) 問 シビックチケット03-5803-1111 https://www.b-academy.jp/hall/“古楽界の雄”が追究する古典派交響曲の軌跡 東京シティ・フィルの第355回定期演奏会を指揮するのは古楽のスペシャリスト、鈴木秀美。古典派交響曲を並べたプログラムで本領を発揮する。 曲はハイドンの交響曲第12番と交響曲第92番「オックスフォード」、そしてベートーヴェンの交響曲第7番。傑作ぞろいのハイドンの交響曲だが、第12番に親しんでいるという方はまれだろう。番号が示す通り初期の作品で、1763年、ハイドン31歳の年に書かれている。いまだ「急─緩─急」の3楽章制がとられ、ホ長調というハイドンとしては珍しい調が採用されているのが目を引く。後の堅固な構築感に支えられた作風とは一味違ったトリッキーで冒険的な曲想に魅力がある。ホ短調のシチリアーナ風中間楽章もおもしろい。一方、第92番「オックスフォード」は成熟期の作品で、エネルギッシュで推進力にあふれた楽想や、緊張と弛昼クラシック〜平日、お昼前のコンサート〜 岡田 奏 & 鈴木隆太郎(以上ピアノ)新シリーズのスタートは、旧友2人のスリリングなアンサンブルで華やかに文:長井進之介 21世紀の文京区のまちづくりの核となり、強い存在感を放つ文京シビックセンター。大・小二つある音楽ホールは多くのアーティストが名演を繰り広げ、文化の拠点として注目を集めている。現在は改修工事のために休館中だが、この秋、小ホールから公演が再開されることになった。そのリニューアル・オープンにふさわしい、新たな企画も行われる。平日のお昼前(11時開演)に開催される「昼クラシック」だ。これはクラシックの名曲と楽しいトークを楽しめる「夜クラシック」シリーズの“昼”バージョンと言えるもの。 その第1回は2台ピアノによる優雅なコンサート。登場するのは、共にパリ国立高等音楽院で学んだピアニストである岡田奏と鈴木隆太郎だ。国際的な活動も目覚ましい二人は、13年来の友人であり、互いの音楽に強いリスペクトを抱いている。今回は、フランスのエスプリに溢れたラヴェルの「マ・緩の対比が作り出す雄大な作品世界は、後のベートーヴェンを予感させる。 そして、ベートーヴェンの交響曲第7番は古典派交響曲のひとつの到達点とでもいうべき大傑作。ベートーヴェンが交響曲の世界にもたらした熱風のようなパッションを鈴木秀美と東京シティ・フィルがどう再現してくれるだろうか。モダン・オーケストラ相手であっても可能な限り古楽的アプローチを実践するのが鈴木秀美の魅力。刺激的な一夜になるのでは。岡田 奏 ©Kazashito Nakamuraメール・ロワ」をはじめ、留学時代の思い出がつまった作品だというラフマニノフの「2台のピアノのための組曲第2番」、“2台ピアノといえばこの曲”というモーツァルトの傑作「2台のピアノのためのソナタ」を演奏。両者の掛け合いなどダイナミックなアンサンブル鈴木秀美 ©K.Miura鈴木隆太郎の魅力を存分に楽しめるプログラムを届けてくれる。さらに、それぞれの個性とピアニズムを味わえるソロもプログラミング。同じパリで学びながらもまったく異なる輝きを放つ岡田と鈴木の共演は、リニューアル後のホールを美しく彩ることであろう。文:飯尾洋一鈴木秀美(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

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