第959回 定期演奏会Aシリーズ[別宮貞雄生誕100年記念:協奏三景]9/30(金)19:00 東京文化会館問 都響ガイド0570-056-057 https://www.tmso.or.jp4弦楽器で演奏される。見た目は少々奇異かもしれないが、その音色は驚くほど豊かな低音が鳴り、魅了される。ともすれば「重厚」なイメージが強かったバッハの組曲が、軽やかな舞曲本来の性格で羽ばたく面白さ…名手クイケンの演奏は、そんな発見に満ちているはず。さらに彼は、ヴァイオリンによって無伴奏パルティータ第2番も演奏する。 およそ無伴奏作品ほど楽器と演奏者のすべてがさらけ出されるジャンルはない。しかもバッハとなればなおさらだ。今回のコンサートは音楽にとどまらず、古楽界の雄となっても新しいアプローチでバッハの世界を追求しつづけるクイケンの人間像までも実感できる空間になるだろう。4210/7(金)19:00 浜離宮朝日ホール問 朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990 https://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/浜離宮朝日ホール 開館30周年記念シギスヴァルト・クイケン(ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ/ヴァイオリン) 無伴奏リサイタル名匠が明かす歴史的傑作の真の姿 シギスヴァルト・クイケンと言えば、今は亡きレオンハルトやブリュッヘンと並び1960年代から古楽演奏に携わってきた古楽パイオニア世代の一人である。その彼は近年、「新しい古楽器」とも言うべきヴィオロンチェロ・ダ・スパッラの演奏でバッハにアプローチしており、今回は無伴奏チェロ組曲第1番と第3番を披露する。 実はバッハのチェロ組曲には、チェロでは演奏困難や演奏不可能な音符があるのをご存知だろうか? バッハ自身の自筆楽譜も存在しないことから「果たして本当にチェロのための作品なのか?」という疑問が提起され、当時の楽器の研究の結果、復元されたのがこの楽器なのである。 ヴィオラを一回り大きくして肩(イタリア語でスパッラ)から吊るして、ギターのように構えて弾く弦楽器。本公演ではすく仕上がっている。「チェロ協奏曲」(1997/2001)は《秋》というサブタイトルが示す通り、抒情的・感傷的な音楽で、ロマン派の歌謡性を現代風の感覚でつかみなおした爽やかな作品。 日本の現代音楽を積極的に紹介してきた下野竜也のタクトの下、目覚ましい躍進を遂げている若手たちがソ下野竜也 ©Naoya Yamaguchi南 紫音 ©Shuichi Tsunodaティモシー・リダウト ©Kaupo Kikkasロに立つのも注目ポイントだ。ヴァイオリンの南紫音やチェロの岡本侑也は難関国際コンクールで入賞した後、着実にキャリアを重ね、おなじみのソリストとなりつつある。ヴィオラのティモシー・リダウトはイギリス出身で今井信子に学び、独奏から室内楽まで欧州を中心に活躍する俊英だ。文:江藤光紀文:朝岡 聡岡本侑也 ©Shigeto Imura下野竜也(指揮) 東京都交響楽団生誕100年に新世代のソリストが奏でる3つの協奏曲 別宮貞雄(1922~2012)は東大で物理学・美学を学んだ後、パリに渡ってミヨーやメシアンに学んだ。前衛が花盛りの時代にあって、調性音楽を堅持、オペラ、交響曲、協奏曲など数多くの作品を残している。都響では選曲から創作の背景を読み解くシリーズ「日本管弦楽の名曲とその源流」のプロデューサーを務めたこともあってか、生誕100年に協奏曲3曲を集めた粋な企画が組まれた。 これらを通して聴けば、高度な技術に支えられた別宮の創作が、万華鏡のような広がりを持つことに気づくはずだ。「ヴァイオリン協奏曲」(1969)は、後期ロマン派風の調性の限界のようなところから始まり、熱狂の舞踏へと流れ込む。作曲当時は“後衛”のように見えたかもしれないが、今日聴きなおすとそれなりに複雑。「ヴィオラ協奏曲」(1971)はその2年後の作だが、メロディーラインがはっきりしオーケストレーションも整理され、ずっと聴きや
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