eぶらあぼ 2022.9月号
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39松を離れて山梨にやってきた。史弥の高校生活は、吹奏楽によってまったく思ってもいなかった方向へ変わっていった。「コロナのせいで活動が始まったのは1年生の6月から。その年は吹奏楽コンクールがなくなってしまったこともあり、冬に行われたソロコンテストに出場してみました。結果は、山梨県で40人中39位。『そんな甘くないよな……』と思いながらも悔しかったです」 高2のときは吹奏楽コンクールで初の西関東大会出場を果たした後、史弥は再びソロコンテストにチャレンジした。「冬休みになると寮生は帰省するんですけど、僕は学校に残って練習を続けました。そして、今度は山梨県で4位になれたんです」 そんな努力も認められ、未経験から始めた史弥は2022年度の団長に抜擢されたのだった。「去年のコンクールが西関東大会銀賞で終わったとき、決めたんです。今年の目標は東日本学校吹奏楽大会に出場して金賞をとることです!」 史弥は力強くそう語った。 2年生のクラリネット担当、松永野々花(ののか)は地元の甲斐市で生まれ育った。寮には入っておらず、自宅から原付バイクで通学している(山梨県では原付バイクでの通学を認めている高校が多い)。「中1のとき、私のいた中学校にこころ先生が教えに来てくれて、私に『耳がいいね』って言ってくれたんです。それ以来、『こころ先生がいる高校に行きたい』と思うようになりました。日本航空高校は全国大会や東日本学校吹奏楽大会に出たことはないですけど、『私が入ることで、上の大会に行けるバンドになったらいいな!』とむしろやりがいを感じました」 明るい性格の野々花は吹奏楽団のムードメーカー。合奏中も笑顔を振りまき、積極的に発言する。だが、それは野々花だけではない。「みんなが明るくて、誰もが意見を言える雰囲気があります。『Be positive, be elegant』というのがこころ先生が考えてくれたバンドの哲学(フィロソフィー)なんですけど、その言葉どおりに誰かが光り始めると、連動してみんなが輝き始めるんです」 今年度の団員数は37人。野々花は中学から吹奏楽を始めたが、史弥のように未経験で入団する者も多い。一方で、中学時代にコンクールの頂点である全日本吹奏楽コンクールを経験した団員も2人いる。また、モンゴルからの留学生が11人入っているのも日本航空高校ならではの特徴だ(9月からはトルコとキルギスの団員が加わる予定)。男子はパイロットシャツ、女子はキャビンアテンダント風の衣装(いずれも制服)でコンクールに出場するのも珍しく、会場では注目を浴びる。 実にユニークな存在である日本航空高校吹奏楽団はいま、コンクールという空を旅している。行き先は西関東大会経由、東日本学校吹奏楽大会だ。 コロナ禍という暗雲を突き抜け、千野こころ先生と高校生たちのフライトは続く。♪♪♪拡大版はぶらあぼONLINEで!→右より:成瀬史弥さん、松永野々花さん 左:千野こころ先生

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