eぶらあぼ 2022.9月号
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SACDCDCDCD134ドホナーニの世界 Vol.1 ―ハンガリー牧歌―/鈴木啓資ラスト・ソロ・アルバム ―フロム・マイ・ライフ―/リチャード・ストルツマン波の盆 武満徹 映像音楽集/尾高忠明&N響武満徹:夢千代日記、弦楽オーケストラのための「3つの映画音楽」、オーケストラのための「波の盆」/武満徹/芥川也寸志:オーケストラのための組曲「太平洋ひとりぼっち」尾高忠明(指揮) NHK交響楽団南里沙(ハーモニカ) 鈴木大介(ウクレレ) 大坪純平(ギター) 山崎燿(シンセサイザー) キングレコードKICC-1600 ¥3300(税込)旅〜ヴォワヤージュ/酒井茜後期ロマン主義の伝統に根ざしつつ、故国ハンガリーの民俗的要素を採り入れた独特の作品を遺したドホナーニ・エルネー(エルンスト・フォン・ドホナーニ)(1877〜1960)。リスト音大へ留学中の7年前、その音楽に魅了されたピアニストの鈴木啓資は、「納得できる演奏ができるまでは」と研究に専念してきた。そんな名手が“満を持して”発表した、日本人奏者による初のドホナーニのピアノ独奏曲集。親しみやすい「ハンガリー牧歌」を軸に、10代で書かれたマズルカ、煌びやかなワルツの編曲など、シンプルながら魅力的な和声に彩られた佳品の数々を、熱い思い入れとともに、清冽なタッチで紡いでゆく。(笹田和人)6月からマリンバ奏者の妻ミカ・ストルツマンらと来日ツアーを実施、8月にはジャズ界の巨匠チック・コリア(昨年2月に逝去)関連の様々なトリビュート企画でも健在ぶりを示したリチャード・ストルツマン。クラリネット界のレジェンド80歳を記念する(これが最後の)ソロ・アルバムは、モリコーネからJ.S.バッハ、ブラームス、ビートルズ、現代音楽と、どのジャンルも隔たりなく愛し、常に新しいことに挑戦し続けてきた演奏家人生を振り返るかのような充実の内容だ。ライナーノーツに、彼をこよなく愛する二人(村上春樹とロバート・キャンベル)から素敵な寄稿があるのも素晴らしい。(東端哲也)武満徹が残した無数の映画音楽から選りすぐった珠玉の作品を、尾高忠明&N響がセッションで収録した。考えられる限りの最高のディスクが登場。戦争の苦しみ、生活の喜び、若いチャレンジ――数々のドラマや映画が形づくった懐かしい昭和の記憶を、音楽の喚起力が蘇生させる。映画音楽について武満は映像とセットで完成と考えていたようだが、その余白に時代の精神が宿っていたということか。同時にここにはシリアスな作品へと育っていくアイディアの芽も聴こえてくる。現代音楽の枠から出て世の風を体感する場でもあった映画音楽は、武満にとって蒸留前の原液のようなものだったのかもしれない。(江藤光紀)アルゲリッチに認められ、ソリストはもちろん、室内楽奏者としても活躍するピアニスト酒井茜。本盤は“旅”をコンセプトに様々な作曲家の作品が収められた意欲的なプログラムとなっており、彼女のレパートリーの広さが活きている。バッハ「パルティータ第1番」の演奏は透明感のある音色と軽やかな装飾音の扱いが印象深く、ソナタ第2番に3曲のマズルカ(第39〜41番)が選ばれたショパンでは、旋律の歌いまわし、テンポ・ルバートなどでセンスの良さが光る。シマノフスキやマチエイェフスキらのマズルカは、個性豊かなハーモニーが酒井のデリケートな声部の弾き分けによってさらに魅力的な響きとして届く。(長井進之介)鈴木啓資(ピアノ)J.S.バッハ:パルティータ第1番 BWV825/シマノフスキ:マズルカ op.50/マチエイェフスキ:マズルカ〈第9番 タトラ山脈からのエコー〉〈第10番〉/ヴァインベルグ:マズルカ 第2番/シュピルマン:マズレック(マズルカ)/ショパン:ソナタ第2番「葬送」、3つのマズルカ op.63酒井茜(ピアノ)ドホナーニ:パストラーレ(ハンガリーのクリスマスの歌)、ガヴォットとミュゼット、アルブムブラット(アルバムの綴り)、マズルカ ハ長調、同変ロ長調、ハンガリー牧歌/J.シュトラウスⅡ(ドホナーニ編):喜歌劇《ジプシー男爵》より〈宝のワルツ〉、同《こうもり》より〈親しき仲〉モリコーネ:「ニュー・シネマ・パラダイス」メインテーマ〜愛のテーマ、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」デボラのテーマ/ブラームス:間奏曲/レノン/マッカートニー:ミッシェル/J.S.バッハ:シンフォニア第11番/エリオット・カーター:Gra 他リチャード・ストルツマン(クラリネット)ミカ・ストルツマン(マリンバ)Acousence recordsACO-CD14322 ¥オープン価格オクタヴィア・レコードOVCT-00201 ¥3520(税込)日本コロムビアCOCQ-85583 ¥3300(税込)

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