eぶらあぼ 2022.9月号
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CDCDSACDCD132カール・ツェルニー:100番練習曲/中井正子フルート音楽で巡る 18世紀、パリの風景/有田正広エルガー:エニグマ変奏曲、ラフマニノフ:コレルリの主題による変奏曲/角田鋼亮&セントラル愛知響メシアンへのオマージュ 平林弓奈 メシアンを弾くピアノ練習曲といえば、ともすると「退屈」「辛い」といった印象を持たれがちだが、ベートーヴェンの弟子であったカール・ツェルニーの練習曲は、古典派作品を演奏する上で欠かせない技術や和声感といった音楽的基礎力を学べる信頼の厚い教則本だ。「100番練習曲」は導入期の練習曲だが、中井正子は一曲ごとにダイナミクスや和声の変化を丁寧に伝え、美しく生き生きとした音色で奏でる。素朴ながらも音楽的な機微を伝える演奏は、作品としての魅力も存分に伝えるため、鑑賞用にもおすすめしたい。ピアノ文化、そして後進の奏者たちへの愛情に溢れた2枚組である。(飯田有抄)ルネサンスから現代に至る400年間に登場した様々なフルートを使い、時空を超えたレパートリーを披露する名手・有田正広。今回は18世紀のパリへと飛び、当時の大スター、27歳の「ジャン・ダリトウ」に扮して、フィリドールやオトテール、ルクレール、大クープランらの佳品に触れてゆく。有田の自作を含めた、2つのオトテールのレプリカを使用。低めのピッチ(a=400Hz)が落ち着きを与え、より人の声へと近づける。その演奏は、時に音程の不安定さをも音楽に採り込み、まさに変幻自在。千代子夫人との連携も絶妙。端正でありつつ、随所に盛り込まれた創意が、ウィットやエスプリをもたらす。(寺西 肇)セントラル愛知交響楽団常任指揮者に角田鋼亮が就任してから3年、その成果を如実に示した今年3月の定期演奏会のライブ録音。テーマは「変奏曲」ながら、エルガーの名曲のほかは、萩森英明の優美な佳品とラフマニノフのピアノ曲の管弦楽編曲版という、角田ならではのユニークな選曲。「コレルリ変奏曲」は原曲の凝った各変奏が見事な色彩で再構築されていて、一聴の価値あり。今後各地でも演奏されそうだ。「エニグマ変奏曲」はいま彼らが作りあげている音色と機能がうまく発揮された好演で、変奏の描き分けは確かなものだし、旋律の歌い方にも気持ちがこもる。(林 昌英)ピアニストの「弾きたい」「聴かせたい」という熱い思いがダイレクトに伝わってくる、潔いディスクだ。メシアン「幼な子イエスにそそぐ20の眼差し」では、神の化身が地上に出現した喜びが全身を貫くように駆け巡り(第10曲)、聖女に接吻したというイエスの慈愛が穏やかなタッチで描かれる(第15曲)。「鳥のカタログ」からはもっとも長大な〈ヨーロッパヨシキリ〉をチョイス。楽譜が鳥の声を正確になぞっているという確信をもって約27分間狂い鳴く。オアナの「24の前奏曲」も目の覚めるような激しくキレのあるタッチで攻めまくった。地響きがしそうな舞踏の後、ラヴェルの懐古調でクール・ダウン。(江藤光紀)カール・ツェルニー:100番練習曲中井正子(ピアノ)オトテール:「プレリュードの技法 op.7」より〈フルートと通奏低音のためのプレリュード ホ短調〉/ルクレール:「ヴァイオリンまたはフルートのためのソナタ集 第2巻」より〈フルートと通奏低音のためのソナタ ホ短調〉/クープラン:「王宮のコンセール」より〈フルートと通奏低音のためのコンセール 第1番 ト長調〉 他有田正広(フルート)有田千代子(チェンバロ)日本コロムビアCOCQ-85586 ¥3520(税込)エルガー:エニグマ変奏曲/ラフマニノフ:コレルリの主題による変奏曲(C.ダンブラヴェヌーによる管弦楽編)/萩森英明:Novelette for Violette On a Theme by Scarlatti角田鋼亮(指揮)セントラル愛知交響楽団収録:2022年3月、三井住友海上しらかわホール(ライブ)オクタヴィア・レコードOVCL-00786 ¥3520(税込)メシアン:「幼な子イエスにそそぐ20の眼差し」より〈第10曲 喜びの精霊のまなざし〉〈第15曲 幼子イエスの接吻〉、「鳥のカタログ」より〈第7曲 ヨーロッパヨシキリ〉/モーリス・オアナ:「24の前奏曲」より〈No.16〜No.24〉/ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ平林弓奈(ピアノ)コジマ録音ALCD-7282,7283(2枚組) ¥3740(税込)ナミ・レコードWWCC-7966 ¥2750(税込)

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