eぶらあぼ 2022.9月号
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CDCDSACDCD128反田恭平凱旋コンサート All Chopin Program サントリーホール ライブハイドン:交響曲集Vol.15/飯森範親&日本センチュリー響ショパン:ピアノ協奏曲第1番 他/福間洸太朗ショパン国際ピアノコンクールの熱狂冷めやらぬ「凱旋コンサート」ツアーのファイナル、サントリーホールでの公演のライブ録音(2022.1/6,1/7)である。抜粋ではなくアンコールをも含めて全13曲を2枚組に収めているのが嬉しい。1枚目の冒頭に収められたワルツ第4番の喜びに溢れ、エレガントな演奏から一気に惹き込まれる。曲目は、1次〜3次予選の演奏曲目をすべて網羅したプログラムで、話題となった「ラルゴ」もじっくりと聴かせる。アンコールはシューマン=リストの「献呈」。感謝の念が音色に込められたような、温かく煌めきに満ちた演奏で締めくくる。   (飯田有抄)複数のコンクールで実績をあげ、現在は航空自衛隊航空中央音楽隊に在籍するバスクラリネットの若きスペシャリストのデビュー・アルバム。ミディアムからスローテンポのメロディアスな名作が18曲収録されている(なお1曲は恩師・藤井一男との共演)。深みのある独特の音色と、ナチュラルかつ伸びやかなフレージングで奏された各曲は、他に類のない魅力に富んでおり、ソロ楽器としてのバスクラリネットの素晴らしさを存分に伝えてくれる。高橋亜侑美の包容力のあるピアノも美しき音空間の醸成に大きく貢献。これは新感覚の癒し効果も期待できそうだ。  (柴田克彦)ハイドン全集第15弾。メインの交響曲第89番は、冒頭から弦が爽やか。ノン・ヴィブラートが透明な響きを生み出している。前半も後半も反復はすべて行うので、構成の見通しを明確に聞き取れる。展開部のフェルマータや突然のパウゼが表現のアクセントとなる。緩徐楽章は、シチリアーノの付点リズムの揺れが快い。メヌエットは力強く激しい。終楽章はシンコペーションによる運動性が顕著で、最後はライブらしい自然な加速から白熱ぶりが伝わってくる。第4番冒頭楽章展開部で細かい表情の変化がうまく捉えられ、動機労作の始まりがみてとれる。第10番も両端楽章で生き生きとした躍動感が楽しめる。(横原千史)福間洸太朗と日本フィルハーモニー交響楽団メンバーの弦楽五重奏による、ショパンのピアノ協奏曲第1番のライブ録音。スコアはケヴィン・ケナーとクシシュトフ・ドンベクが研究に基づいて編曲した室内楽版(2019年出版)で、かつてショパン自身が自作を披露していた際のスタイルに迫るもの。福間の品のある音が、若きショパンの詩情、情熱、傷つきやすさを丁寧に表現。弦楽器は室内楽ならではの身軽さでそれぞれが伸びやかに歌い、旋律の交差する様を管弦楽版より一層楽しむことができる。アンコールは、福間の繊細で輝かしい音で奏でられるノクターン第8番。  (高坂はる香)ショパン:ワルツ第4番 ヘ長調、マズルカ風ロンド ヘ長調、バラード第2番 ヘ長調、アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ、3つのマズルカ op.56、ピアノ・ソナタ第2番「葬送」、ラルゴ 変ホ長調、ポロネーズ第6番「英雄」、ノクターン第17番、「12の練習曲」op.10-1、同 op.25-10、スケルツォ第2番/シューマン(リスト編):献呈反田恭平(ピアノ)収録:2022年1月、サントリーホール(ライブ)NOVA RecordNR-02202(2枚組) ¥4400(税込)サン=サーンス:白鳥/ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ/ラフマニノフ:ヴォカリーズ/フォーレ:夢のあとに/チャップリン:『モダン・タイムス』より〈スマイル〉/モリコーネ:ニュー・シネマ・パラダイス/久石譲(加藤和宏編):アシタカとサン/村松崇継(岡村雄之典編):彼方の光 他小和田芽愛(バスクラリネット)高橋亜侑美(ピアノ)藤井一男(クラリネット)コジマ録音ALCD-3126 ¥3080(税込)ハイドン:交響曲第89番 ヘ長調、同第4番 ニ長調、同第10番 ニ長調飯森範親(指揮)日本センチュリー交響楽団ショパン:ピアノ協奏曲第1番(室内楽版/ケヴィン・ケナー、クシシュトフ・ドンベク編)、ノクターン第8番福間洸太朗(ピアノ)日本フィルハーモニー交響楽団メンバー(弦楽五重奏)【田野倉雅秋 竹歳夏鈴(以上ヴァイオリン) 安達真理(ヴィオラ) 石崎美雨(チェロ) 髙山智仁(コントラバス)】収録:2022年1月、横浜市鶴見区文化センター サルビアホール(ライブ)BRAVO RECORDS BRAVO-10008 ¥3300(税込)収録:2019年8月、いずみホール(ライブ)オクタヴィア・レコードOVCL-00780 ¥3520(税込)Air/小和田芽愛

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