eぶらあぼ 2022.08月号
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第958回 定期演奏会Bシリーズ 9/9(金)19:00 サントリーホール問 都響ガイド0570-056-057 https://www.tmso.or.jp 東京都交響楽団の秋シーズンは、音楽監督・大野和士が指揮する定期演奏会B、Cシリーズで始まる。注目はBシリーズのヤナーチェク「グラゴル・ミサ」(1927)だ。大野にとっては2019年、ロンドン交響楽団へのデビューを飾った記念すべき作品でもある。直前にキャンセルしたガーディナーに代わって急遽指揮台に上るというセンセーショナルな成功だった。 「グラゴル」というのは、9世紀、キリスト教の布教目的のために、聖書をスラヴ語に翻訳すべく人為的に作られたアルファベット「グラゴル文字」のこと。左より:大野和士©Herbie Yamaguchi/小林厚子 ©Yoshinobu Fukaya/山下裕賀 ©深谷義宣/福井 敬/妻屋秀和/大木麻理 ©高山龍也聴きごたえ十分。もちろんヤナーチェクらしくモラヴィアの民族色は濃厚だ。後奏に置かれたオルガン・ソロ楽章や、(初稿版では)両端で作品全体を挟むファンファーレ楽章(イントラーダ)の金管大活躍など、声楽以外の聴きどころも外せないポイント。出演は、ソプラノ小林厚子、アルト山下裕賀、テノール福井敬、バス妻屋秀和、オルガン大木麻理、新国立劇場合唱団。キリル文字の元になったとされる。「グラゴル・ミサ」は、この文字を用いた、古代教会スラヴ語のミサ通常文をテクストとしている。日本での上演はけっして多くないが、都響では2010年にヤクブ・フルシャとの名演があった。今回は作曲家の初期構想を復元したスコアを用いるという大野らしい選択。 ソロも合唱も、宗教曲というよりはオラトリオ的にドラマティックに歌われていておりカラフルなハーモニーが輝かしい作品だ。ブラームスの「11のコラール前奏曲」は生涯最後の白鳥の歌である。バッハのマタイ受難曲でも繰り返し使用されたコラールを題材とした「心からあこがれ望む」が取り上げられる。フランクの「3つのコラール」もまた最晩年作品である。ドイツとフランスの作曲家たちが、それぞれに思いを込めたコラールの響きを、三8/11(木・祝) サントリーホールオルガン研究所 10:30 大ホール “ポジティフ” ビー アンビシャス! 12:30 15:00 ブルーローズ(小)珠玉のオルガンコンサート 13:30 大ホールオルガン×オペラ座の怪人 16:00 大ホールトークでもオルガンZANMAI! 17:30 ブルーローズ(小)問 サントリーホールチケットセンター0570-55-0017 https://suntory.jp/HALL/三浦はつみ ©平舘 平浦の奏でる壮麗なサントリーホールのオルガンで存分に味わいたい。「デジタルサントリーホール」で有料オンライン配信視聴も可能だ。©サントリーホール文:宮本 明文:飯田有抄73大野和士(指揮) 東京都交響楽団大野が魅せる、こだわりのヤナーチェクサントリーホールでオルガンZANMAI! 「珠玉のオルガンコンサート」たった一日であなたもオルガン通に⁉︎ サントリーホール「オルガンZANMAI!」は、丸一日オルガンの響きを浴びるように楽しむことのできる夏恒例のイベントだ。今年もバラエティに富んだ全6公演が催されるが、なかでも三浦はつみが出演する「珠玉のオルガンコンサート」には、オルガン音楽入門者からコアなオルガンファンまで一度は聴いておきたい王道的作品が取り上げられる。1時間のプログラムで三浦が聴かせるのはJ.S.バッハ、ジャン・アラン、ブラームス、そして生誕200年のフランクの作品だ。隠れテーマは「コラール」。コラールはもともとプロテスタントの教会で歌われる讃美歌で、作曲家毎に必ず1曲コラールにまつわる作品をプログラミングしている。 バッハのコラール「身を飾れ、おお愛する魂よ」BWV654は、柔らかなコラールのメロディーが装飾的に展開してゆく作品。アランの組曲第3番「コラール」は、アラン自作の旋律に基づ

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