eぶらあぼ 2022.08月号
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Interviewハンサム四兄弟日本を代表するバリトン4人の磨かれた個性の聴きくらべ 実際、目の前に並んだ4人はハンサムだが、同時に強烈な個性がまばゆい。ユニット名に「ハンサム」とつくのはみな面映ゆいようで、「“ユニット組んでいるよね?”と聞かれると“四兄弟です”って(笑)」(次男の与那城敬)。 長兄の宮本益光によると、「ハンサム」を狙った面もあるが本質ではないという。「ソプラノやテノールと一緒に歌う機会は多いですが、同じ声種の、レパートリーが重なるなどして意識している人たちと一緒にできたらいいな、と考えたのが最初です」。 かつての「三大テノール夢の共演」も、同じ声種の歌手が一緒に歌うことで個性が浮き彫りになったが、いわばそのバリトン版。「みな音楽の持っていき方が絶妙に違う」(四男の加耒徹)ので、「練習でほかの3人の歌に聴き入ってしまい、“すごいな”と思って鼓舞されるところはありますね」と三男の近藤圭が言えば、与那城も「逆に自分には真似できないものがわかるので、自分の進むべき道がはっきり見えてきますね」。 こうして同じ声種の異なる個性が刺激し合うのは、観客にはたまらない魅力だ。「みなレパートリーがかぶっていて、たとえば私がいつも歌っている曲をほかの方が歌うのを聴くと、お客さまにも新しい発見があると思います」(加耒)。ト長調 K.423といったこの編成の代表作と、モーツァルトと同世代の弦の名手アレッサンドロ・ロッラのデュオ曲やマルティヌー「3つのマドリガル」など実演の稀少な佳品が並ぶ。デュオの魅力と可能性を体感できるプログラムで、しかもこれほどの実力者たちの共演で聴けるのは弦楽器ファンには嬉しい限り。「互いに敬愛し、高め合う演奏家二人のアンサンブル」(チラシより)を心ゆくまで味わう一夜。9/23(金・祝)19:15 杉並公会堂(小)問 陽向企画コンサート企画部 youkouconcert@gmail.comhttps://youkouconcert.studio.site ハーモニーもおもしろい。なにしろ「AROUND THE WORLD 映画音楽で巡る世界一周メドレー」はバリトンの四重唱。「私たちの声をよく知っている加藤昌則さんが、私たちのために組み直してくれて。力強く歌うとすごい4人ですが、同時にハモりたいという欲があるので、とてもおもしろい」と宮本。ただし「音圧はすごいでしょうね」(加耒)。それを浴びるのはさぞかし快感だろう。 だれがなにを歌うかでもめたりしないのか。宮本によれば「選曲を促して困ったことはないですね。みんな幅広いし、それぞれが歌いたい歌を堂々とハンサム四兄弟 オペラティック・コンサート8/7(日)15:00 よこすか芸術劇場問 横須賀芸術劇場046-823-9999 https://www.yokosuka-arts.or.jp歌い、そこに聴きくらべのおもしろさもある」。ただ、どの歌も濃い。「肉、肉、肉みたい。肉尽くし、バリトン尽くしみたいな(笑)」と与那城。 そんな4人がいよいよ馬蹄形の本格的なオペラ劇場、よこすか芸術劇場で歌う。「いままでで一番大きな劇場なのでオペラアリアもちゃんと入れます」(宮本)。ただし、だれがどの曲を歌うかは当日のお楽しみで、未知数の楽しみはほかにもある。「それぞれがオペラなどに出演し、その役を背負って集まってくる」と全員が声をそろえる。結果、たがいに受ける刺激は増し、8月7日、すばらしい化学反応が期待できそうだ。三浦章宏左より:加耒 徹、与那城 敬、近藤 圭、宮本益光取材・文:香原斗志文:林 昌英青木篤子62三浦章宏(ヴァイオリン) × 青木篤子(ヴィオラ) デュオコンサート in 東京2つの弦楽器が響き合う親密なアンサンブル ヴァイオリンとヴィオラのデュオ。作品はそれなりにあるものの、実演で聴けるチャンスは多くはないし、その一組だけでのコンサートとなるとなかなかレアだろう。その貴重な機会が9月に実現する。出演は東京フィルハーモニー交響楽団コンサートマスターの三浦章宏と、東京交響楽団首席ヴィオラ奏者の青木篤子。それぞれの楽団の中枢を担い、数々のソロ演奏で聴衆を唸らせてきた二人の共演ということで、親密かつ高水準な演奏への期待が高まる。 曲目も興味深く、ヘンデル「パッサカリア」(二重奏版)、モーツァルトの二重奏曲

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