eぶらあぼ 2022.08月号
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第743回 東京定期演奏会〈秋季〉9/2(金)19:00、9/3(土)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 https://japanphil.or.jp9/3(土)18:00 Bunkamura オーチャードホール問 日本アーティストチケットセンター03-5305-4545 http://www.visavision.co.jpを変えるのではなく、自分の芯をしっかり持っているところも、息の長い人気の理由だろう。 今回の来日公演の予定曲目には、〈アメイジング・グレイス〉〈タイム・トゥ・セイ・グッバイ〉といった人気曲をはじめ、ランゴレン音楽祭でタイトルロールを歌った歌劇《カルメン》から〈ハバネラ〉、2016-17年の東急ジルベスターコンサートで歌った〈ワールド・イン・ユニオン〉などが並ぶ。また、本公演は文化庁「子供文化芸術活動支援事業」となっており、18歳以下は無料招待の席が用意されている(要申込)。アンソニー・イングリスが指揮する東京フィルハーモニー交響楽団との共演でゴージャスな一夜を楽しみたい。山田和樹していたウォルトンだったが、最初の交響曲には呻吟し、32年に着手しつつ貴志の協奏曲と同じ35年までかかっている。しかしその内容は充実したもので、初演時からイギリスを代表する傑作との呼び声が高かった。シベリウス的なダイナミズムを感じさせる第1楽章、パワフルに突き進む第2楽章に続き、分厚文:江藤光紀文:原 典子©David Venni田野倉雅秋いオーケストレーションで描き出される第3楽章は重苦しくも抒情的で深い感興をもたらす。フィナーレでは勇壮なテーマが輝かしい大団円を導く。 日本とイギリスの若き作曲家たちの同時期の大作を、サービス精神旺盛な山田がゴージャスな装いのもとに届けてくれるはずだ。57山田和樹(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団第二次世界大戦前夜に書かれた2作品 日本フィルの新シーズンが、今年も正指揮者・山田和樹のタクトでスタートする。 邦人作品の演奏にも積極的な山田だが、今回は貴志康一の「ヴァイオリン協奏曲」を取り上げる。貴志は戦前にヴァイオリンや作曲を学びに渡欧、ベルリン・フィルで自作を録音するなど、キャリアを極めて帰国し、これからという矢先に28歳で病没している。「ヴァイオリン協奏曲」は欧州滞在中の1931年に書き始められ、死の2年前の35年に完成された。ロマン派的な語法やヴァイオリンの超絶技巧を、日本風の響きとドッキングさせた意欲作だ。戦前期の日本作曲界の到達点を示す作品を、日本フィルが誇るコンサートマスターの田野倉雅秋のソロで。 後半は1909年生まれの貴志とほぼ同世代の、イギリスの作曲家ウォルトン(1902年生まれ)の交響曲第1番。すでに「ベルシャザールの饗宴」などの大作を発表し、作曲家としての地位を確立キャサリン・ジェンキンス コンサート世界中で愛される“シルキー・ボイス”を心ゆくまで堪能 クラシカル・クロスオーバー界の歌姫、キャサリン・ジェンキンス。2004年のアルバム・デビュー以来、リリースごとにヒットを記録し続け、17年には英ラジオ局のClassic FMが「過去25年間においてもっとも多くの売り上げを記録したクラシック・アーティスト」と公式に発表。いまやイギリスでもっとも愛されるシンガーとしての地位を確かなものにしている。 “シルキー・ボイス”と称される彼女のメゾソプラノは、聖母マリアのような清らかさとあたたかな慈愛に満ちている。南ウェールズに生まれ、ニースのセント・デイヴィッド教会の聖歌隊で音楽への愛を育み、英国王立音楽院で声楽を学んだ。そのレパートリーはクラシックからミュージカル、映画音楽、ポップスまで多岐にわたるが、ケルト民族にルーツをもつ故郷ウェールズのトラディショナル・ソングなども大切に歌ってきた。流行りに任せて方向性

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