eぶらあぼ 2022.08月号
52/153

第702回 定期演奏会 8/20(土)18:00 サントリーホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 https://tokyosymphony.jp神奈川県民ホール開館50周年記念オペラシリーズ Vol.1 フィリップ・グラス/ロバート・ウィルソン《浜辺のアインシュタイン》(新制作)ダンス界の鬼才が演出、豪華キャストで贈る前衛オペラの傑作10/8(土)、10/9(日)各日13:30 神奈川県民ホール問 チケットかながわ0570-015-415 https://www.kanagawa-arts.or.jp/tc/ 演出家ロバート・ウィルソンと組んだ《浜辺のアインシュタイン》(1976年初演)は、ミニマル・ミュージック第一世代の作曲家フィリップ・グラスの評価を確立した最初の大作である。 このアメリカ発のオペラは何が新しかったのか? 彼らは明瞭なストーリーを用いず、物理学者アインシュタインの人柄や業績から連想されるものを、幕のタイトルや歌詞・台詞、作曲法の中にアイコンのように散りばめていった。これは起承転結というドラマ構造を持たないミニマリズムと、まさに相性の良い劇作法だった。列車の旅のように心地よいリズムに身を委ねながら、聴き手は左より:フィリップ・グラス/平原慎太郎 ©Hajime Kato/キハラ良尚/辻 彩奈 ©Makoto Kamiya/松雪泰子/田中要次/中村祥子 ©Masatoshi Yamashiro家・ダンサーの平原慎太郎。音楽面で重要な役割を担うヴァイオリンには若き大器・辻彩奈、東京混声合唱団の常任を務めるキハラ良尚が指揮にあたる。日本語の上演となる台詞部分には松雪泰子、田中要次というテレビでもおなじみの俳優を起用し、Kバレエカンパニー名誉プリンシパルの中村祥子をはじめ実力派ダンサーが揃った。 オペラ・シーンに新たな歴史を刻んだ名作が、21世紀の日本でどんなふうにバージョンアップされるのか。い若手有望株を真っ先に指揮台に呼ぶことで定評のある東京交響楽団。激しく期待していい。 プログラムは、ピンチャーが振る予定だったウェーベルンの「夏風の中で」と、ラフマニノフの交響的舞曲がそのまま残っているのが嬉しい。若きウェーベルンによる爽やかなロマン派風作品で始まり、生と死のコントラストが鮮烈なラフマニノフの最後の作品で終わるという趣向だ。その合間に、ベルクの歌劇《ヴォツェック》から3つの音楽のみならず言葉や舞踊、ウィルソン独自の所作などを通じ、目前に展開されるものが次第に一つのイメージへと育っていくプロセスを体験する。 首都圏のオペラ上演で重要な役割を担ってきた神奈川県民ホールが2025年の開館50周年を記念して手掛ける今回の上演は、本邦では30年ぶり二度目で、各界のトップランナーを結集した豪華キャストが早くも話題を呼んでいる。演出は東京オリンピックの開・閉会式で振付ディレクターを務めた振付ペトル・ポペルカ ©Khalil Baalbaki断章が入る。輝かしいキャリアを築いてきたソプラノ森谷真理が、その豊穣な声で魅了すること間違いなし。文:鈴木淳史文:江藤光紀49ペトル・ポペルカ(指揮) 東京交響楽団注目の気鋭指揮者が振る新ウィーン楽派とラフマニノフ最後の作品 当初はマティアス・ピンチャーが指揮する予定の公演だったが、来日できなくなり、代わりにペトル・ポペルカが指揮台に上がる。この指揮者、いったい何者? 1986年プラハ生まれの36歳。2020/ 21シーズンからノルウェー放送管弦楽団首席指揮者を務め、22年9月からはプラハ放送交響楽団の首席指揮者・芸術監督にも就任するという。ヨーロッパ中堅どころの楽団の舵取りを任された注目の若手だ。作曲家としても活躍しつつ、2010年から19年まで、シュターツカペレ・ドレスデンの次席ソロ奏者を務めたコントラバシストという多彩な顔をもつ。 彼の指揮をディスクや動画で確認すると、鮮やかなアーティキュレーションの切り替えは、指導を受けた一人であるペーテル・エトヴェシュを思わせつつ、出てくる音楽はずいぶんダイナミック。日本ではまだ名前を知られていな

元のページ  ../index.html#52

このブックを見る