eぶらあぼ 2022.08月号
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久保田チェンバロ工房 https://kubota-cembalo.comフォルテピアノ・アカデミーSACLAhttps://fortepianoacademy.jimdofree.com チェンバロ製作家として、長年古楽界を支えてきた久保田彰さん。埼玉県新座市に工房を構える歴史的鍵盤楽器製作の第一人者だ。久保田さんは、学生や演奏家たちが楽器に触れる機会を少しでも多く提供しようと、このたび工房の近くにスタジオを完成させた。そこには、チェンバロのみならず、近年特に製作に力を入れている初期のフォルテピアノがずらりと並ぶ。 久保田さんが通称「クリストフォリ3兄弟」と呼んでいるクリストフォリ、ジルバーマン、アントゥーネスの3モデルが揃う空間は、世界的に見ても珍しい。ピアノの発明者とされるバルトロメオ・クリストフォリの名は聞いたことがあるという方も多いだろう。久保田さんが最初にクリストフォリを製作したのは十数年前。スタジオに置かれた楽器は3台目となるが、「ようやく納得できるものができた」という。 現存する楽器や設計図面・資料など限られた情報をもとに楽器を復元するのは非常に困難な作業だ。いずれも見た目はチェンバロに酷似しているが、ピアノのアクションはパーツの数が圧倒的に多く、製作にあたっては、アクション部分だけでチェンバロ1台分くらいの労力を要するという。 「フレームには補強材がチェンバロの3倍くらい入ってます。弦もチェンバロより太い。『叩く』と『弾く』では振動の伝わり方がまったく違うんです。実際に作ってみて、ピアノは最終的には鉄骨を入れないと楽器として成り立たないというのを実感しました。音量を求める限りは、現代のピアノの形になっていくのは必然なんですね」東京・春・音楽祭でも活躍したジルバーマン・ピアノ取材・文:編集部左:久保田 彰 右:平井千絵後ろの楽器は左よりクリストフォリ、アントゥーネス クリストフォリが作ったアクションの完成度は非常に高く、ジルバーマン(晩年のバッハがフリードリヒ大王の前で演奏したという逸話で有名)やアントゥーネス(スカルラッティが仕えていたポルトガルの宮廷で使われていた)にも、ほぼそのまま引き継がれたが、ハンマーに使用する素材によって音のキャラクターは異なる。詳細な資料が残っていないケースも多いが、当時の人がどんな音を好んでいたかを想像するのは楽しいそうだ。 「ポルトガルのピアノはイメージ的に情熱的でギラギラした感じ。東洋人が勝手にイメージするイベリア系の音。本当は全然違うかもしれないけど(笑)」 フォルテピアノと言えば、ヴァルターなどウィーンのイメージが強いが、それ以前の時代の系譜を辿っていく作業は、長年鍵盤楽器の製作に携わってきた久保田さんにとっても非常に興味深いという。編集部とともに工房を訪れたフォルテピアノ奏者の平井千絵さんも「チェンバロと打弦構造のピアノが共存していた時代は意外に長かった。そういう視点で見ると、また違ったアプローチができるような気がします」と、楽器に触れてその音色とタッチの感覚にすっかり魅了された様子。 7月下旬には「フォルテピアノ・アカデミーSACLA」(小倉貴久子さんプロデュース)がさいたま市内で開催される。久保田さんの楽器を含め、様々な時代のフォルテピアノが11台並ぶ貴重な機会なので、楽器を間近に見たい方にはお勧めだ。46日本を代表する鍵盤楽器製作家を訪ねて―久保田チェンバロ工房―

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