eぶらあぼ 2022.08月号
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拡大版はぶらあぼONLINEで!→境高校での練習の様子は日本を代表するプロ吹奏楽団、東京佼成ウインドオーケストラのコンサートマスターだ。 緊張するふたりに本橋さんが語りかけた。「部員は17人? 他の学校と比べると少なくても、小編成には大編成にない魅力があるので、そこに気づけるといいですよね」 本橋さんは「アルメニアン・ダンス パートI」(リード)や「ボレロ」(ラヴェル)など、吹奏楽や管弦楽曲の名曲を10人未満で演奏するシュピール室内合奏団の代表。今回の低音ぶれいくCafe♪吹奏楽団も小編成。まさに小編成の魅力を追求している音楽家集団だ。「小編成は一人ひとりが主役になれるのが良いところですね。個々の頑張りが全体のレベルアップにもつながるし、充分ふくよかなサウンドを奏でることはできます。ぜひ少人数でも希望を持って練習を続けてほしいです」 本橋さんの言葉を受け、羽叶はこう思った。「去年は15人で東関東大会まで進めた。今年も17人で本橋さんが言うふくよかなサウンドをつくれれば、きっと上を目指せるはず」 亜実の心にも、本橋さんの「小編成は一人ひとりが主役になれる」という言葉が響いた。大人数の吹奏楽部に比べると、個々人にかかる責任は大きいが、みんなにスポットライトが当たる。 ふたりは小編成に「希望」を見出した。         ♪ 亜実はプロに聞きたいことがあった。「吹奏楽部の中でホルンは私ひとりなんです。どうやってクラリネットやサックスと音を合わせていったらいいでしょうか?」 すると、田中さんが笑顔で答えてくれた。「僕が東京佼成ウインドオーケストラに入団したとき、フレデリック・フェネルさんが指揮者だったんですよ」 フェネルは日本はもちろん、世界中の吹奏楽に影響を与え、発展させた指揮者だ。「合奏をしていると、フェネルさんが僕たちに『キイテ!』と言うんですね。演奏ではまずまわりの人の音を『聴く』ことが大事、ということなんです。僕は自分の生徒には『相手の音の中に入るように』と教えています」 亜実は思い出した。曲を合奏するとき、境高校吹奏楽部ではみんな必死で楽譜に齧りついていて、まわりの音が聴けていない。もし、「相手の音の中に入る」ことができたら、いくつもの楽器の音が溶け合い、豊かな響きを持つ音楽が出来上がるだろう。 すると、田中さんはもうひとつ付け加えた。「プロのコンサートを『聴く』ことも大事なんですよ。目指す音のイメージがわかったり、憧れを抱いたり、自分たちの演奏に活かせるアイディアが生まれたりしますから」         ♪ 本橋さんと田中さんにアドバイスをもらった後、羽叶たちは客席に座り、低音ぶれいくCafe♪吹奏楽団のコンサートを見た。そして、演奏を通じて二人が教えてくれたことを全身で感じ取った。「なんて楽しいんだろう。私もステージで一緒に演奏したい!」「プロの演奏は表現力がすごいな。これからもっといろいろなコンサートを聴いてみたい」 羽叶と亜実はそう思った。 ステージ上でプロの演奏家たちがキラキラ輝きながら音楽を奏でていた。そこに境高校吹奏楽部の17人の姿が重なる。 いまはまだ足りないところがたくさんある。 でも、いつかきっと私たちも……。39

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