12694歳(録音時)のブロムシュテットの指揮が素晴らしい。「ザ・グレイト」の序奏から細やかな神経が行き届き、楽想の豊かな拡がりが実に味わい深い。主部の木管にはワクワクさせられる。ゲヴァントハウス管によるトゥッティの響きの充実とリズムの推進力は尋常ではない。緩徐楽章でも繊細なテクスチュアが随所で光っている。スケルツォのエネルギー爆発も怖ろしいほど。終楽章は永遠に続くかのような美の饗宴。コーダの渾身のハ音ユニゾンとそのあとの堂々たる終結は感動的。「未完成」も見事な造形だ。第1楽章展開部の憧れの高揚や第2楽章第2主題の繊細な弦のさざ波はとても美しい。(横原千史)演奏活動60周年のヴァイオリニスト前橋汀子が、大きな節目を迎えるにあたり取り組んだのはベートーヴェン。協奏曲は意外にも初録音だが、活動初期から共演を重ねてきた秋山和慶の盤石の指揮に乗って、凛とした佇まい、音の一つひとつの瑞々しさ、決めどころでの集中力など、達人の至芸を聴かせる。ことに第2楽章は深遠だが深刻にはならない絶妙な美を実現。第3楽章は技巧が冴え、最後のカデンツァの完璧なキレには驚嘆。ライブ感あふれる圧巻の演奏だ。ロマンス第2番は慈しむような深い歌が穏やかな感動を生む、本作代表盤にもなり得る名演。超一流の何たるかを知る一枚。(林 昌英)BCJ首席の三宮正満(オーボエ)と元N響首席の福川伸陽(ホルン)が中心となり、日本のトップ管楽器奏者らにより、2021年に結成されたピリオド楽器アンサンブル。その第1弾アルバムで取り上げた、ベートーヴェンとモーツァルトの八重奏曲は、18世紀に流行した娯楽を目的とした“ハルモニームジーク”の編成を採りつつ、芸術性を追求し、奏者に高い技術を要求する。手練れ揃いのアンサンブルは、ピリオド楽器の演奏の難しさを微塵も感じさせぬどころか、これらの楽器でしか出せない滋味を余さず表現。随所にあふれる創意と愉悦、丁々発止のやり取りには、もはや溜め息しか出ない。(寺西 肇)昨年急逝したピアニスト、斎藤雅広の最晩年の録音。ショパンにスクリャービン、フォーレ、ベートーヴェンなどが収められており、近年さらにレパートリーを拡大し、その技術とセンスを最大限に発揮していた斎藤の魅力が詰まった一枚となっている。輝かしい音色、タッチの多彩さ、いきいきとしたリズム感が存分に活かされており、一音聴いた瞬間に魅了されるほど圧倒的な世界観を創り出している。まさに「ヴィルトゥオーゾ」と呼ぶにふさわしい存在だということを改めて実感する内容だ。一方で、ベートーヴェンの「田園」ソナタのあたたかく包み込まれるような音楽にも注目したい。(長井進之介)シューベルト:交響曲第8番「未完成」、同第9番「ザ・グレイト」ヘルベルト・ブロムシュテット(指揮)ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調、ロマンス第2番 ヘ長調前橋汀子(ヴァイオリン)秋山和慶(指揮)オーケストラ・アンサンブル金沢ベートーヴェン:八重奏曲 変ホ長調、ロンド(ロンディーノ)変ホ長調/モーツァルト:セレナード ハ短調「ナハトムジーク」レ・ヴァン・ロマンティーク・トウキョウ【三宮正満 荒井豪(以上オーボエ) 満江菜穂子 戸田竜太郎(以上クラリネット) 岡本正之 村上由紀子(以上ファゴット) 福川伸陽 藤田麻理絵(以上ホルン)】ショパン:バラード第4番/スクリャービン:ピアノ・ソナタ第4番/フォーレ:ヴァルス・カプリース第4番/シューマン:6つの間奏曲 op.4/ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第15番「田園」斎藤雅広(ピアノ)ユニバーサルミュージックUCCG-45053/4(2枚組) ¥3520(税込)収録:2021年11月、石川県立音楽堂(ライブ)ソニーミュージックSICC-19061 ¥3300(税込)コジマ録音ALCD-3125 ¥3080(税込)ナミ・レコードWWCC-7968 ¥2750(税込)シューベルト:交響曲第8番「未完成」&第9番「ザ・グレイト」/ブロムシュテット&ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調、ロマンス第2番 ヘ長調/前橋汀子モーツァルト・ベートーヴェン 木管八重奏/レ・ヴァン・ロマンティーク・トウキョウ斎藤雅広 ザ・ヴィルトゥオーゾ!CDSACDCDCD
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