eぶらあぼ 2022.7月号
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第742回 東京定期演奏会〈春季〉 7/8(金)19:00、7/9(土)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 https://japanphil.or.jp7/2(土)15:00 神奈川県立音楽堂問 チケットかながわ0570-015-415 https://www.kanagawa-ongakudo.com75 神奈川県立音楽堂で、企画公募のためのシリーズ「新しい視点〈紅葉坂プロジェクト〉」が始まっている。音楽界を牽引する一柳慧、沼野雄司、鈴木優人が選んだ、いずれも既成の枠を破る尖った3組が7月に公演を開催する。 国内外で活躍する滝千春(ヴァイオリン)と中野翔太(ピアノ)による「音+音」は、若き作曲家、梅本佑利(2002年生まれ!)とのコレクティブで、バロック時代の大聖堂から現代のゲームセンターまでを独自の視点で再現し、グレゴリオ聖歌から新作までのプログラムで響きの物語を編む。 河村絢音(ヴァイオリン)と佐原洸(エ滝 千春中野翔太 ©Taira Tairadateレクトロニクス)による「kasane かさね」は、今や楽器といえるほど発展した電子音響を用いてヴァイオリンの可能性を拡張し、音響表現の現在を提示する。現代音楽界の雄グロボカール、マヌリから佐原の新曲までと精選のプログラムだ。 ささきしおりらによるパフォーマンスは、バスドラムに貼った特殊な紙に絵具で描くことで音を鳴らし、同時にその音の証しである描く行為と線描の映像を流す。聴く/観るという異なる表現形式を混在させて音楽/美術の広上淳一 ©Masaaki Tomitoriフィルとのブルックナー、それも人気作の第7番(ハース版)ということで、独特の旋律美と豊麗な音響をどう表現するのか。広上の新境地に期待したい。 ヴァイオリン独奏に米元響子を迎える、ブルッフの名曲「スコットランド幻想曲」も楽しみだ。民謡の旋律と繊細河村絢音境界をも融解する企てだ。 彼らは今年2月、観客を迎えて公開プレゼンテーションを行った。沼野や鈴木からのコメントに向き合い観客からの質問・意見を受け止め、推敲を重ねている。 なお、公演日には審査で次点となった2企画、PAO-C(中川丘、野呂有我)によるサウンドアートと西原尚によるサウンドスケープ・パフォーマンスも行われる。 7月2日は紅葉坂で創造力の刺激を全身に浴びる一日を。米元響子 ©Hirotada Onakaなハーモニーが郷愁を誘い、殊に著名なメロディがしみじみと歌われる第3部は目頭が熱くなるはず。近年充実を深める米元の豊かで繊細な音で聴けるのも嬉しい。ハープの響きも美しい本作で、広上と米元の協演に浸る30分、なによりの癒しの時間になるだろう。佐原 洸文:林 昌英文:有川真純ささきしおりシリーズ「新しい視点」 紅葉坂プロジェクト Vol.1常識をくつがえす新鮮なアイディアの公募プログラムを紹介! 広上淳一(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団充実のコンビで味わうブルッフ&ブルックナーの旋律美 日本フィルハーモニー交響楽団といえば、首席客演指揮者カーチュン・ウォンを2023年9月より首席指揮者に迎えるという発表が話題になったばかり。彼が登壇した5月定期では伊福部昭とマーラーを刷新した解釈で聴かせて、オーケストラからも前向きな感情が発散されていた。 その日本フィルが好調を維持するもう一つの理由が、「フレンド・オブ・JPO(芸術顧問)」という地位にある広上淳一の存在だろう。楽団のモチベーションを高め、濃密な演奏を引き出すマエストロで、以前から同楽団と良好な関係を維持していたが、この2年近くの数々の共演で繋がりがより深まっている。その例のひとつが、昨年6月の定期で東京では機会のなかった「広上のブルックナー」が解禁されたことである。交響曲第6番を取り上げ、弦楽セクションの人数を刈り込み、作曲者のイメージを洗い直すユニークな姿を構築したのである。今年も引き続き日本

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