eぶらあぼ 2022.7月号
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第354回 定期演奏会 9/2(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 https://www.cityphil.jp7/22(金)19:00 王子ホール問 王子ホールチケットセンター03-3567-9990 https://www.ojihall.jp68ピアソラ、グアスタビーノ、ラミレスなどの南米の作曲家の作品、バルバラのシャンソンなどを、北村が自由なインスピレーションで行ったオリジナル編曲によって披露するとのこと。波多野はコロナ禍の2年間を経て「同じ場所に居て、同じ香りをかぐ、そんな何気ない高関 健 ©K.Miura至る所で苦悶の表情を湛えるが、時折ふっと希望の光が差し込んでくる。この曲の前にシベリウスが重い病を患い、そこから再び生命の活力を得たことと、これは無関係ではないだろう。 このところシンフォニックな大作で大きな成果をあげている高関&東京シティ・フィルらしい選曲だが、この2曲が波多野睦美 ©HAL KUZUYA北村 聡竹澤恭子 ©松永 学ほぼ同時期に作曲されている点も見逃せない(エルガーは1910年、シベリウスは同年から翌年にかけて)。ロマン派の先を追求した2人の作品を並べることで、無調へと急進化していくモダニズムとは異なる、もう一つの時代性が浮かんでくる。そのあたりのプログラミングの妙も味わいたい。田辺和弘ことの価値に気づいた」と語っている。心の琴線に直に触れてくるような雄弁なバンドネオンと柔らかい情熱を支えるコントラバス。それらの楽器の音色と波多野が歌に込めた「想い」が出会う時、音楽はどのように「変容」していくのか、非常に楽しみだ。文:江藤光紀文:室田尚子高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団初秋に味わう近代作品の傑作プログラム 東京シティ・フィルのオータムシーズンは常任指揮者・高関健のタクトのもと、芸術の秋らしい渋いプログラムで幕を開ける。 前半に演奏されるエルガーのヴァイオリン協奏曲は3楽章で50分近くかかる大作だ。作品の構えも大きく、大オーケストラの堂々とした序奏の後に、独奏ヴァイオリンが濃厚な歌を聴かせる第1楽章、郷愁を誘う第2楽章、超絶技巧の連発となるフィナーレへと続く。頻繁に取り上げられる曲ではないが、作品を献呈されたクライスラーが初演し、その後も時代を代表する名手たちが弾きついできた。今回の独奏は豪快なテクニック、スケールの大きい演奏でツウをうならせてきた竹澤恭子。まさにドンピシャの人選だ。 後半、シベリウスの交響曲第4番は、彼のシンフォニーの中でもとりわけ思弁性が高く、考え抜かれた作品として知られる。チェロが重々しく歌いだし、波多野睦美 歌曲の変容シリーズ 第15回想いの届く日ふたたび 〜氷と熱の楽器 バンドネオンと共に〜互いに呼応し合う声と楽器の息づかい バロック・オペラにおける第一人者として名高いメゾソプラノの波多野睦美は、また、現代作曲家の作品にも積極的に取り組むなど、意外にボーダーレスの歌手だ。そんな波多野がプロデュースする王子ホールの「歌曲の変容シリーズ」は、様々な楽器との共演によって時代を超えた歌曲の多様なすがたを紹介するシリーズ。第15回となる今回ゲストに迎えるのは、バンドネオンの北村聡とコントラバスの田辺和弘だ。実は波多野は北村と録音したアルバムのリリースを7月に控えており、このコンサートはそのお披露目的な役割もあるようだ。 北村といえば、クラシックのみならずテレビや映画音楽の録音にも参加するなど、「今」を代表するアーティストのひとり。また田辺はタンゴにおけるコントラバス奏者の第一人者である。コンサートは、タンゴの名曲であるガルデルの「想いの届く日」を副題に据え、

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