eぶらあぼ 2022.7月号
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第642回 定期演奏会〈トリフォニーホール・シリーズ〉 7/9(土)14:00 すみだトリフォニーホール〈サントリーホール・シリーズ〉 7/11(月)19:00 サントリーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 https://www.njp.or.jp7/11(月)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 https://www.operacity.jp55対照性を見て取ることも可能だろう。 「カルミナ・ブラーナ」ではパワフルな合唱団の活躍が欠かせない。実力者ぞろいの二期会合唱団に流山少年少女合唱団、柏少年少女合唱団が加わる。ソプラノに今井実希、テノールに清水徹太郎、バリトンに晴雅彦が配さユのために書かれた作品であること。19年度武満徹作曲賞審査員のマヌリや映画音楽で知られるデスプラ等が、パユの持ち味を想定して書いた最新作は、実に興味深い。しかもそれだけではない。テレマンと交互に演奏されることで、「互いにこだまし合い、奥行きのある写真のような効果が生まれる」(パユ〈前回のプログラムより要約〉)のだ。 パユ自身も語るように「音が旅し、空気が旅するには、十分な空間が必要」。その点で、生気ある音が空間を満たす東京オペラシティはこの上なく相応し左より:クリスティアン・アルミンク ©Shumpei Ohsugi/今井実希/清水徹太郎/晴 雅彦れ、万全の声楽陣とオーケストラが一体となって、壮麗な音のスペクタクルを築く。冒頭の有名な「おお、運命の女神よ」が最後にふたたび帰ってくる瞬間は、なんど体験してもぞくぞくする。記念イヤーにふさわしい名演を期待したい。文:飯尾洋一文:柴田克彦©Denis Felixい。ここは、休憩なし約70分の「時空を超えた音の旅」に身を浸し、「スリリングで価値ある体験」(パユ)を得ることにしよう。クリスティアン・アルミンク(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団第3代音楽監督とともに盛大に祝う記念イヤー 創立50周年を迎えた新日本フィルは「過去に思いを馳せ、未来に繋ぐ」をコンセプトに節目のシーズンを迎えている。7月の定期演奏会では、第3代音楽監督のクリスティアン・アルミンクが招かれる。アルミンクは2003年から13年まで新日本フィルの音楽監督を務めた功労者。若くして抜擢された際は大きな話題を呼んだ。また、2011年から19年にかけてベルギー王立リエージュ・フィルの音楽監督を務めている。経験を積んだ元音楽監督の帰還に胸を躍らせる方も多いことだろう。 プログラムはバルトークの「弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽」とオルフの「カルミナ・ブラーナ」。両曲はともに1937年に初演されたという共通項を持つ。バルトーク作品は独自の編成からこれまでにない響きを生み出した理知的な楽曲、オルフ作品は世俗的な題材をもとに人間の根源的な喜びにフォーカスした情熱的な楽曲。そんなエマニュエル・パユ SOLO Vol.3笛のカリスマが導く、時空を超えた「音の旅」 エマニュエル・パユの演奏は、一流フルート奏者の中でもひときわ特別感がある。ベルリン・フィルの首席奏者とソリストの両面で活躍する彼の、破格の技量は言わずもがな。それ以上に特別感をもたらしているのは、他の奏者にない豊麗な音色と歌い回し、そして並外れた吸引力や訴求力であろう。そうした特別感が最大限に発揮されるのが、東京オペラシティで行う無伴奏リサイタル「SOLO」だ。同公演はこれまで2017年と19年に開催され、一人舞台に立つパユのカリスマティックな音楽性に、満員の聴衆が息をするのも忘れるほど惹き込まれた。 その第3弾が7月に行われる。プログラムは19年のコンセプトを踏襲し、バロック時代の巨匠テレマンの「無伴奏フルートのための幻想曲」全12曲中の6曲の間に、5曲の現代作品が挟まれる。今回の現代ものの特徴は、ブーレーズ作品以外の4曲が18年以降にパ

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