eぶらあぼ 2022.7月号
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民の中にずっとあるのではないかと感じています。それに気付いたのは北九州市のジュニア・オーケストラでの体験でした。市が練習場や楽器を提供してくれるなど、バックアップがとても充実しています。田中香織 私は吹奏楽部でクラリネットを始めたのですが、その部活動に対する親たちの支援にすごく熱があるのです。それがあるから部活を続けられるというぐらいの応援ぶり。その熱さは北九州らしいなと思う点です。長 それから、やはり北九州国際音楽祭の存在も僕にとっては大きかったです。毎年、世界の一流オーケストラを地元で聴くことができる。さらにはMaroさん(篠崎)のオーケストラと共演もできて、刺激がとてもありました。谷 昂登 音楽がすごく身近にある街だなという感じがしますね。この音楽祭には小学生の時から参加していますが、ソロだけでなく、室内楽をこの音楽祭の中で初めて体験させていただきました。篠崎 谷君はほんとうに小さな頃、まだハイハイしている頃から知っています。こんなに早く成長するとは、時間が経つのは早いね(笑)。彼の演奏の特徴はロマンティックな音とフレーズ感覚の豊かさ。当時から人に何か感じさせるものを持っていて、可能性を感じていました。だから年齢差を感じないし、共演の時はその年齢差を感じさせてはいけないと思います。篠崎 双紙は半ズボンの頃からの付き合いです(笑)。マイスター・アールトは小さなグループからスタートし、年を追うごとに大きくなって、いまはライジングスター オーケストラ(次代を担う若手奏者のオケ)と共演することが恒例となりました。そこで大事にしているのはクラシック音楽で重要な「再生」と「継承」というテーマですが、この音楽祭ではそれがうまくいっていると思います。——基本的に指揮者をおかず、レパートリーも古典派が中心です。篠崎 音楽祭の特徴は独自のプログラムを組んでいることですが、必ず海外オーケストラの公演があり、そのプログラムは規模の大きな作品、近代の作品が多いので、我々はもっと古典派に近い作品を中心にやっていこうと考えました。その基本は室内楽なのです。室内楽的な音楽作りを、交響曲にまで広げていこうということですね。——今年の音楽祭のキャッチフレーズは「アンサンブルで行こう!」で、8月の「特別コンサート」からスタートします。そこではシューマンとドホナーニのピアノ五重奏曲が取り上げられ、谷さんが共演されます。篠崎 ドホナーニの作品はどうしても皆さんに聴いていただきたくて、今回のプログラムに入れました。日本ではあまり演奏されない作品ですが、ブラームスに絶賛された作品で、ドホナーニの若い頃の勢いを感じさせる傑作です。谷 僕にとっては新しい作品なので、音楽そのものを知っていくという過程が楽しいです。——音楽祭の多くのコンサートは北九州市立響ホールで開催されます。700席ほどの親密な空間で、「教育プログラム」などの会場でもあります。2023年で開館30周年を迎えるんですね。長 マイスター・アールトのメンバーとの演奏はいつも和気あいあいという感じで、その中にも真剣さがあり、普段とは違った意味の緊張感があります。それを支えてくれるのが響ホールの音響かな。田中 マイスター・アールトの奏でる音、その本番の時の熱量はとてもすごいものがあります。それはやっぱり響ホールのアコースティックがあればこそだと思います。篠崎 お客様と演奏家の一体感がとても大事だと思うのですが、それが可能なホールです。そして街が一緒になって音楽を育む姿がそこにある。北九州からそれを発信していきたいですね。——今年も楽しみにしています。ありがとうございました!43Information2022北九州国際音楽祭10/9(日)〜12/3(土) 北九州市立響ホール、北九州ソレイユホール、西日本工業倶楽部 他夏の特別コンサート8/14(日)14:00 北九州市立響ホール7/1(金)発売■ 北九州国際音楽祭事務局093-663-6567 http://www.kimfes.com※各公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。発信拠点となるホールの存在発信拠点となるホールの存在オリジナル企画が次世代を育てるオリジナル企画が次世代を育てる——この音楽祭のハイライト公演と言えるマイスター・アールトは篠崎さんが率いるMaroオケから派生した実力派を揃えたオーケストラ。メンバーには同じく北九州市出身の双紙正哉さん(都響第2ヴァイオリン首席奏者)などもいらっしゃいますね。

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