これは、彼女が東京・春・音楽祭のイタリア・オペラ・アカデミーで、巨匠ムーティから学んだことでもある。 「ムーティ先生が何度も話されていたのは『言葉の二重の意味』。裏に含まれた下世話な意味などを知ることです。先生は『言葉の裏にあるニュアンスやリズムにテンポが隠れている』と言われていました。それにイタリア語のリズムがそのまま音楽になっているので、楽譜以上に台本を読んで、リズム感を掴むよう意識しています」 むろん今回の大役への意気込みも強い。 「この公演は間違いなく今年の私の活動のハイライト。これまで培ってきたすべて─アシスタントやピアニスト、プロンプターの経験、学生時代の演出の経験や時間をかけてイタリア語の詩を読んできたことなど─を注ぎ込めるよう、全力で臨みたいと思います」 話を聞くだに、この《フィガロ》は見逃せないとの思いひとしおだ。取材・文:柴田克彦©Felix Broede41Information2022 セイジ・オザワ 松本フェスティバル8/13(土)〜9/9(金) キッセイ文化ホール(長野県松本文化会館)、松本市音楽文化ホール(ザ・ハーモニーホール)、まつもと市民芸術館 他●オーケストラ コンサート(デュトワ)8/26(金)19:00、8/28(日)15:00 キッセイ文化ホール(長野県松本文化会館)曲目/武満徹:セレモニアル - An Autumn Ode - ドビュッシー:管弦楽のための「映像」 ストラヴィンスキー:春の祭典●オペラ モーツァルト《フィガロの結婚》(沖澤)8/21(日)15:00、8/24(水)17:00、8/27(土)15:00 まつもと市民芸術館・主ホール●30周年記念 特別公演 アンドリス・ネルソンス指揮 サイトウ・キネン・オーケストラ11/25(金)19:00 キッセイ文化ホール(長野県松本文化会館) 11/26(土)15:00 ホクト文化ホール(長野県県民文化会館)曲目/マーラー:交響曲第9番 ニ長調■ セイジ・オザワ 松本フェスティバル実行委員会0263-39-0001 https://www.ozawa-festival.com※フェスティバルの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。沖澤のどか Nodoka Okisawa/指揮沖澤のどか Nodoka Okisawa/指揮《フィガロの結婚》の魅力はレチタティーヴォにこそ 現在、ベルリンでキリル・ペトレンコのアシスタントを務めながら、ベルリン・フィルのカラヤン・アカデミーのコンサート等を指揮している沖澤のどか。彼女はOMFにもSKOにも初の出演となる。 「このフェスティバルは、色々な指揮者や一流奏者が快適な場所に集まって演奏するという意味で、ヨーロッパの夏の音楽祭と似ている印象があり、オーケストラ(SKO)には、ソリストと様々な楽団の奏者の良い部分を集めたような特別感があります。まだ小澤征爾さんとの直接の交流はありませんが、新日本フィルのリハーサルやベルリン・フィルの公演で拝見していますし、子どもの時から本や映像、CDで触れてきた方。親しみやすいような、それでいて住む世界が違うような、本当に唯一無二の存在です」 今回の演目は《フィガロの結婚》。沖澤は、日本ではこれまでに東京二期会の《メリー・ウィドウ》(2020)と神奈川フィルの《ヘンゼルとグレーテル》(2018)を指揮した経験がある。 「オペラは歌手とのコンタクトやバランスの取り方が大事。またモーツァルトの『ダ・ポンテ・オペラ』ではレチタティーヴォのテンポ感やナンバーとの繋がりがカギになる。《フィガロ》の魅力はやはりそこだと思います。それにフランス革命の高まりなどの政治的背景。状況は違っても共感できる部分がありますし、貴族への強烈な風刺などを現代にどう反映させるかが面白いところではないでしょうか」 レチタティーヴォ重視の発想はとても新鮮だ。「名曲揃いなので音楽だけを聴いてももちろん楽しいのですが、どういう状況や会話から歌に繋がっていくのかという点が、通して観る際の大きな楽しみだと思います」
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