eぶらあぼ 2022.7月号
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最初から勤勉で規律正しく、若い世代は世界各地で学び柔軟性も身につけていますから、例えばドビュッシーの場合、弓にあまり圧力をかけず、より軽く速く弾くといったボウイングのコツを伝えるのは、昔ほど困難ではなくなりました。SKOも昨年、非常にスペクタクルな結果を出してくださったので、フェスティバル30周年の節目に再び、ドビュッシーを指揮できるのは大きな喜びです」 デュトワが意識する音楽の「伝統」は、実にオーソドックスなものだ。 「若い頃、ピエール・モントゥーとボストン交響楽団の実演から多くを学び、スイス・ロマンド管弦楽団ではリハーサルに出入り、創設指揮者のエルネスト・アンセルメに直接質問することを許されました。モントゥーは『春の祭典』の世界初演者で、アンセルメは現行版の改訂に関わっています。それぞれの作品には必要とされるサウンドが確固として存在し、その違いを忘れてはなりません」取材・文:池田卓夫©Kiyotane Hayashi©大窪道治/OMF40 小澤征爾が恩師・齋藤秀雄の名を冠し1992年に創設したセイジ・オザワ 松本フェスティバル(OMF) 小澤征爾が恩師・齋藤秀雄の名を冠し1992年に創設したセイジ・オザワ 松本フェスティバル(OMF)が30周年を迎えた。この2年は世界的なパンデミックの影響で中止を余儀なくされたが、この夏3年ぶりにが30周年を迎えた。この2年は世界的なパンデミックの影響で中止を余儀なくされたが、この夏3年ぶりに開催される。昨年、来日するも無観客配信のみとなってしまったシャルル・デュトワが今年もサイトウ・キネ開催される。昨年、来日するも無観客配信のみとなってしまったシャルル・デュトワが今年もサイトウ・キネン・オーケストラ(SKO)の指揮台に上がる。一方、初登場となる沖澤のどかが《フィガロの結婚》を振るのン・オーケストラ(SKO)の指揮台に上がる。一方、初登場となる沖澤のどかが《フィガロの結婚》を振るのも大きなトピックス。重鎮と注目の若手、二人の指揮者に話を聞いた。も大きなトピックス。重鎮と注目の若手、二人の指揮者に話を聞いた。シャルル・デュトワ Charles Dutoit/指揮シャルル・デュトワ Charles Dutoit/指揮ドビュッシーにはモントゥー、アンセルメの時代から受け継がれた響きがあります シャルル・デュトワが昨年(無観客配信)に続き登場、武満徹とドビュッシー、ストラヴィンスキーを組み合わせたプログラムをSKOと演奏する。 「武満の『セレモニアル』はフェスティバル側からの希望です。徹さんの誕生日は10月8日、私は7日というご縁で1980年代末に東京都内のレストランで互いにお祝いをした時、彼はお箸の使い方を教えてくれました。今回の作品以外にも『ノスタルジア』『精霊の庭』『系図』『ノヴェンバー・ステップス』『弦楽のためのレクイエム』など、数多くの作品を指揮しています。 ストラヴィンスキーのバレエ音楽『春の祭典』は2021年の初共演の際、やはりフェスティバル側の希望で手がけるはずでしたが、コロナ禍でオーケストラ人数の制限などもあり、今年に繰り越されました。武満とストラヴィンスキーの間に何を入れるか? 私は昨年、SKOがドビュッシーの『海(管弦楽のための3つの素描)』を素晴らしく奏でたことへの敬意も踏まえ、同じ作曲家の『管弦楽のための映像』が最適だと判断しました」 世界のオーケストラを長く指揮してきたマエストロは、SKOをどう評価するのか? 「大変すばらしいオーケストラですが、ラヴェルやドビュッシーを“正しく”演奏するのは容易ではありません。1970年に初めて日本を訪れ、読響を指揮した時から一貫して感じるのは、日本のオーケストラの音色や響きにドイツ音楽、とりわけロマン派の影響が強く、レパートリーも60〜70%はドイツ=オーストリアとロシアが占め、フランスやイタリア、英国などの音楽の比重が低いことです。日本の音楽家は30周年を迎えた30周年を迎えたセイジ・オザワ 松本フェスティバルセイジ・オザワ 松本フェスティバル

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