eぶらあぼ 2022.7月号
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Profileのりこしたかお/作家・ヤサぐれ舞踊評論家。『コンテンポラリー・ダンス徹底ガイドHYPER』『ダンス・バイブル』など日本で最も多くコンテンポラリー・ダンスの本を出版している。うまい酒と良いダンスのため世界を巡る。http://www.nori54.com144乗越たかお第93回 「競いすぎると、狭くなる。ダンスに必要なのは美談より……」 コロナ禍で上海が2ヵ月以上ロックダウンしていた それよりもオレが興味深かったのは「KUROKO影響は、舞台芸術界にも大きな影を落としている。が一番TikTokっぽかったな」ということだ。他の海外からの招聘公演に必要な舞台美術のセットはグループ作品は舞台空間全体にダンスを展開する。大きく重量もあるため船便で送ることが多いのだだがKUROKOは縦長映像で見るのがベストと思えるようなサイズ感で、ほぼパフォーマーの周囲のみ。が、上海沖には上陸許可が下りないコンテナ船が200隻以上も停泊を余儀なくされた。上海は世界の審査員はほとんどがダンスの専門家だったが、大会物流のハブ港で、世界中の船がここで荷物を積み替コンセプトが「楽しませたもの勝ち」という以上、こえてそれぞれの目的地に運ぶ。舞台美術が陸揚げの結果は妥当なものだろう。できずに延期された公演が、すでに出てきているの とはいえ目の前で生のパフォーマンスを見ながら「広い空間を使い切った群舞作品よりも、ユーモアだ。6月1日に一部地域を除いて解除されたが、はやく平常の日々がもどってほしいものである。と視覚的な驚きのあるTikTok風縦長映像的作品が さて5月18日に『THE DANCE DAY』という番組優勝する」というのは舞台芸術の危機なのだろうか。が放映された。「ダンス日本一を決める」「優勝賞 オレは単に「先生に怒鳴られ、涙を流しながら一丸となって頑張りました、という部活的なダンス」に、も金1000万円」とテレビ的アオリ文句満載のコンテストである。ストリートばかりではなくコンテンポラリーう飽きてるのだと思うよ。美談仕立ての番組を山ほや社交ダンス、学ラン姿の応援団から「タット(Tut)ど見せられたしな。ダンスの世界はもっと広くて自由ダンス(ツタンカーメンTutankhamen時代の象形文だということをエンタテインメント作品が示した、と字の形をモチーフにした手指中心のダンス。東京パいうだけのことだろう。 さてこの号が出る頃、オレはシンガポールの「cont-ラリンピックの閉会式でも登場した)」等々、ダンスを幅広く捉えており、いずれもクオリティは高かった。act コンテンポラリー・ダンスフェスティバル」へ行っが、結果には一悶着あったのだ。ている予定だ。ヨーロッパに比べるとアジアはまだ 優勝したKUROKOは、黒子姿の4人が1人のパまだコロナ禍に対する入国手続きが厳しい。またコロナ対策に力を入れるあまり他に手が回らず、世界フォーマーの周りで箱や椅子などを操作し、イリュージョンを見せる独自の表現方法で海外でも高く評価各国で従来型の伝染病が復活してきているという。されている。シンガポールではデング熱が急増中で、感染者はす しかし番組終了後のネットでは「あれはダンスなでに3万人を超えている。虫除けスプレーを持って行ってくるよ!のか論争」が巻き起こった。マイム的な動きと相まって、人と物の間が有機的につながり、ストップモーションや急加速など3D的な効果まで生んでいたが、そのほとんどが「物と身体」の関係だった。「なんでもあり」のコンテンポラリー・ダンスの世界からすると当然ダンスなのだが、習い事文化と言われる日本のダンス教育では、こうした飛び道具的なアイディアはオリジナリティではなく「ズルい」と言われがちである。

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