eぶらあぼ 2022.7月号
141/165

138ピアソラ・トリビュート/福田進一ショパン:ソナタ第2番・第3番/浅田真弥子夢の色彩/伊藤万桜&陬■■波花■■■梨&黒岩航紀ピアソラ(1921-1992)によるクラシック・ギターのためのオリジナル作品「5つの小品」(この分野の草分けである福田進一にとって35年ぶりの再録音)とM.D.プホールがピアソラに捧げた「あるタンゴ弾きへのエレジー」を核とする、生誕100年&没後30年記念盤。プホール編曲による「南へ帰ろう」や「アディオス・ノニーノ」「ロコへのバラード」、キューバのブローウェルによる「天使の死」やビリャダンゴスが映画サントラのために編曲した「オブリビオン」などの人気曲も聴きどころ。極めつけは福田&鈴木大介の師弟コンビによるデュオ作品「タンゴ組曲」からの2曲だ。(東端哲也)弓圧を十分にかけ、時にたっぷりのヴィブラートもいとわない“伝統的スタイル”の延長線上にあるバッハ。気迫のこもった熱演は、まるで求道者のよう。戸田弥生は、決して聴き手に媚びない。安易に“流行り”のピリオド奏法へ寄せもしない。息つく間すら与えぬ、緊張感の連続。無伴奏6作の全楽章でもっとも浮遊感に満ちたソナタ第3番の「ラルゴ」ですら、それなりの重みを伴う。しかし、聴き進むうち、いつしか、深い彫琢が随所に施された、独特の響きの世界へ引きずり込まれてしまう。そして、すべての出来事が、堅固で一貫した、戸田の美学のもとに収斂されていることを知る。(寺西 肇)浅田真弥子はパリのエコール・ノルマル音楽院で学び、マリア・カナルス国際コンクール3位、マルサラ国際コンクール3位などの実績を持つピアニスト。東京や金沢でリサイタルを行うなど着実にキャリアを重ねている。3枚目となるアルバムはショパンのソナタ第2番・第3番を金沢市アートホールで収録。ライナーノートなどに録音に関する詳細な情報はほとんど見受けられないが、おそらく編集の手をほぼ入れていないライブに近い録音と思われる。推進力を効かせながら音色には安定感がある。時折響かせる滑舌の良いタッチや間合いにはっとさせられる。 (飯田有抄)当人たちも「異色のトリオ」と称する意外な組み合わせだが、それが幸運な出会いだったことは当盤を聴いてもよく伝わる。新しいけど心地よい響きは発見で、3人のやさしい個性にも合っているようだ。オリジナルは2作品。ドフォンテーヌ「夢の色彩」は、近代フランス風の儚くたゆたうハーモニーが美しい、なかなかの佳品。過去の作曲家たちを題材にしたピーターソンは、作品も演奏ももっと深掘りできそうな感はあるものの楽しく聴ける。可能性を感じさせる編成で、3人の息の長い活動と、いずれオリジナルの名品(併録のピアソラにも匹敵するような)が出現することを期待したい。(林 昌英)J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番〜第3番、無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第1番〜第3番戸田弥生(ヴァイオリン)ピアソラ:南へ帰ろう、アディオス・ノニーノ、ロコへのバラード(以上プホール編)、セーヌ川(カルレバーロ編)、5つの小品、「天使の組曲」より〈天使の死〉(ブローウェル編)、「タンゴ組曲」より〈タンゴ 第2番〉〈同第3番〉、オブリビオン(ビリャダンゴス編)、リベルタンゴ(鈴木大介編)/プホール:あるタンゴ弾きへのエレジー福田進一 鈴木大介(以上ギター)マイスター・ミュージックMM-4507 ¥3300(税込)ショパン:ソナタ第2番、同第3番浅田真弥子(ピアノ)ドフォンテーヌ:夢の色彩/ピーターソン:ヴァイオリン アルト・サクソフォン ピアノのための三重奏曲第2番/ピアソラ:オブリビオン伊藤万桜(ヴァイオリン)陬波花梨(サクソフォン)黒岩航紀(ピアノ)妙音舎MYCL-00021(2枚組) ¥4400(税込)ヴァリエテVA-09005 ¥2500(税込)アールアンフィニMECO-9071 ¥オープンプライス配信CDSACDCDJ.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ(全曲)/戸田弥生

元のページ  ../index.html#141

このブックを見る