eぶらあぼ 2022.7月号
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136ベートーヴェン:チェロ・ソナタ全曲/長谷川陽子&松本和将グレグソン:3つのダンス・エピソード/オズカ・ブラス・コネクションリリコ・カンタービレ/髙木凜々子1990年代、ロックを思わせる鮮烈さで衝撃を与えたイル・ジャルディーノ・アルモニコのヴィヴァルディ「四季」。そのソリストを務めた鬼才オノフリが、手兵イマジナリウム・アンサンブルと臨んだ「四季」の再録音は、生成りの布のように素朴な質感ながら、繊細かつ緻密、随所に創意があふれている。1725年にアムステルダムのル・セーヌから出版された楽譜に立ち返り、細かな演奏指示の違いも再現。通奏低音も「秋」のみチェンバロ、他はオルガンを使用するなど、サウンド創りも斬新だ。“自然”を題材とした、ルネサンスとバロックの佳品も併録。各曲が、互いに共鳴するかのよう。 (寺西 肇)デビュー35周年の節目となる今年はぜひベートーヴェンのソナタ全曲に挑みたい、と長谷川陽子は語る。この5月に発売された本作はその言葉を裏付けるまさにメルクマール的な録音であり、事実その内容の「濃さ」は尋常ではない。どっしりと骨太、スケール雄大かつ渋みのある音を響かせる長谷川に対し、時にはフォルテピアノのような音色で軽やかに遊ぶ松本の闊達なピアノ。両者の性格は対照的なれど、それゆえに起伏と変化、多彩な表現に富んだ名演が実現しているのだ。第1番の第2楽章や第5番のフーガを聴けばそれが腑に落ちるはず。3つの変奏曲は演奏者が細部を味わい尽くしている。名盤。(藤原 聡)体を預けられるようなシンプルなリズムやメロディ。ハーモニーがバチッと決まって、カラッと鳴ること。オリジナル曲のみならず、民謡や古楽からポピュラーな旋律まで、多彩なレパートリー。ブラス・アンサンブルの演奏会をやるならいくつか押さえるべきツボがあるが、それらをすべてクリアしたお手本のような一枚だ。曲の難易度も見本市のように様々で、実力に応じた曲をチョイスしてチャレンジする愛好家もいるのではないか。すべての曲にユーフォニアムが加わり中声に厚みを加えているのも本盤の特徴だが、とりわけ委嘱作品である「リバーサイド・ストリート」ではユーフォの齋藤由美子が活躍する。(江藤光紀)活躍顕著な気鋭のヴァイオリニスト、髙木凜々子の公式初アルバムは、「カンタービレ」をテーマとする歌心あふれる小品集。清楚で純度の高い美音を持ち味として、A線・D線のハイポジションの温かみ、優しく懐かしいメロディの表現が絶妙で、幾度も郷愁に誘われる。長めの3曲、「シャコンヌ」「ツィガーヌ」は雑にならずに感情の変化を万全に表現し、「詩曲」は丁寧な中に妖艶でドキリとする重い表現も聴かせて(実演でも驚かされた)、いずれも引き込まれる。可憐な笑顔のジャケット通りの爽やかな快さと、時折それを裏切るギャップが心憎い。真の名手誕生を確信させる一枚。 (林 昌英)ジャヌカン:4声のためのシャンソン「鳥の歌」/ウッチェッリーニ:2つのヴァイオリンと通奏低音のためのアリア第9番「異種混淆:雄鶏とカッコウによる麗しき奏楽」/パシーノ:2つのヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ第11番「様々な野蛮動物の鳴き声を模倣して」/ヴィヴァルディ:和声と創意の試み op.8より「四季」 他エンリコ・オノフリ(指揮/バロック・ヴァイオリン)イマジナリウム・アンサンブルAnchor RecordsUZCL-2226 ¥3000(税込)ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第1番〜第5番、《魔笛》の「愛を感じる男の人たちには」の主題による7つの変奏曲、《魔笛》の「恋人か女房か」の主題による12の変奏曲、《マカベウスのユダ》の「見よ、勝利の英雄の来るのを」の主題による12の変奏曲長谷川陽子(チェロ)松本和将(ピアノ)フランク:金管のための序曲/竹鼻雪乃:金管6重奏のための「2つのケルト民謡」/ガブリエリ(キング編):ソナーレのためのカンツォーナ第1番〜第4番/ヤン・ファン=デル=ロースト:4つの古い舞曲/グレグソン:3つのダンス・エピソード/大野雄士:リバーサイド・ストリート/河合和貴:金管8重奏のためのラファーガ 他オズカ・ブラス・コネクションコジマ録音ALCD-3123 ¥3080(税込)ポンセ:エストレリータ/ヴィターリ:シャコンヌ ト短調/J.S.バッハ:G線上のアリア/アルベニス:タンゴ ニ長調/フォスター:金髪のジェニー/ショーソン:詩曲/ドヴォルザーク:ユーモレスク/ドルドラ:思い出/ショスタコーヴィチ:映画『馬あぶ』より「ロマンス」/ラヴェル:ツィガーヌ 他髙木凜々子(ヴァイオリン)三又瑛子(ピアノ)BRAVO RECORDSBRAVO-10007 ¥3300(税込)日本アコースティックレコーズNARD-5079/80(2枚組) ¥4400(税込)CDCDCDCDINTO NATURE 自然の中へ/エンリコ・オノフリ&イマジナリウム・アンサンブル

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