eぶらあぼ 2022.6月号
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Interview中畑有美子(ソプラノ)アジリタもレガートもあるフィオルディリージに向ける意欲 潤いのある声、美しいフレージング、巧みな装飾歌唱。いま存在感を増しているソプラノ、中畑有美子は言葉も美しく、固めた基礎の違いが感じられる。 「イタリア声楽コンコルソでミラノ大賞をいただき、ヴェネツィア国立音楽院に2年半ほど通いました。向こうの学生はみな絶対に舞台に立つという強い気持ちがあって、すごく刺激になりました。また、フェニーチェ劇場で学生は10ユーロでオペラが観られ、生の舞台を観るとやる気になりました」 もちろん苦労もあった。 「母音が浅いとかさまざまに指摘されましたが、居残りも含めてよく指導してもらえました」 それがすぐれた歌唱の土台になっていることは、言うまでもない。 ピアノやエレクトーンに親しんだ少女が、その先生に促されて高校時代に志した声楽。昭和音楽大学のイタリア研修でオペラのおもしろさに目覚めたが、本気になったのは「イタリアに留学してからですね」。そこではほかにも大事な決意をしている。 「日本では私でもどちらかといえばドラマティックな声ですが、イタリアではもっと重い声の人が多いので、勧められるレパートリーが日伊で違って悩んだことも。結局、自分をくくるのをやめるところに落ち着きました。自分が歌最晩年の作、そして我らが酒井健治(今回最も取り上げたかったと田中は言う)まで、多彩を極めた内容だ。これらの小品を通じてピアノの書法の歴史的な展開だけでなく、“旅”、“感情―構造”、“ネットワーク”といった作品相互間から生まれるテーマも伝わってくるはずだ。弾き手としての田中のテクニックはもちろん、作り手としてみた作品解釈、さらにはそれを演奏会体験へと昇華する手並みを楽しみたい。6/14(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール問 東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 https://www.operacity.jpいたいものをあきらめず、トライできるものはトライしていこうという気持ちになりました」 一番好きな役は《愛の妙薬》のアディーナで、《コジ・ファン・トゥッテ》ならデスピーナに思い入れがあると語るが、7月の藤原歌劇団・NISSAY OPERA 2022公演(演出:岩田達宗、演奏:川瀬賢太郎指揮 新日本フィル)でのフィオルディリージへのトライに躊躇はない。 「このオペラでアジリタと美しいレガートの両方を与えられているのはフィオルディリージだけ。恋人がいるからダメ、と葛藤しながら、好きな気持ちに抗えないところなど、実はかわいらしい女性ですし、大変ですがやりがいのある役です。ただ、聴いている分には軽やかでも、自分がコンサートで歌うと、アリアと重唱だけでもかなり疲労感があるので、本番までに鍛えます」 クラシカル・ポップや歌謡曲も歌う女声8人のアンサンブル「OTTO GIGLI(オットジーリ)」(イタリア語で「8本の百合」の意)でも活躍する。 「音色が違うソプラノの声をそろえる藤原歌劇団・NISSAY OPERA 2022 公演モーツァルト《コジ・ファン・トゥッテ》(新制作、全2幕・字幕付き原語(イタリア語)上演)7/1(金)、7/2(土)、7/3(日)各日14:00 日生劇場問 日本オペラ振興会チケットセンター03-6721-0874 https://www.jof.or.jp※中畑有美子は7/2(土)に出演。その他の配役は上記ウェブサイトでご確認ください。のは男性との重唱より断然難しい。アンサンブルの勉強になっています」 それが《コジ》に活きるのは疑いない。ところで、4月には藤原歌劇団《イル・カンピエッロ》のガスパリーナも歌ったが、「なにかがあるとパッと火が点くところはフィオルディリージと似ています」と語るので、そういう面は自分にもあるかと問うと、「女性ならみんな持っているのでは」。 持てるものが幾重にも重ねられ、役が深まりそうだ。取材・文:香原斗志文:江藤光紀51東京オペラシティ B■■■■■■■→C 田中翔一朗(ピアノ)作曲家の視点が浮かび上がらせるピアノ音楽の果てなき可能性 ピアニストとして、そして作曲家として、数多くの現場にかかわってきた田中翔一朗が、独自の視点から選んだこだわりのプログラムをひっさげて「B→C」に登場。 プログラムはバッハをベースにおきつつ、20世紀(ドビュッシー、スクリャービン、ラフマニノフ、メシアン、ノアゴー)のピアノ音楽の水脈を織り込みながら、21世紀現在の創作の最前線を幅広く紹介するものとなっている。ドイツのボロフスキ、オーストリアの女流ノイヴィルト、フランスの故ベルトランといった中堅世代の近作の他に、長老カーターの

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