eぶらあぼ 2022.6月号
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6/14(火)19:00 東京文化会館(小)問 プロアルテムジケ03-3943-6677 https://www.proarte.jpInterview海野幹雄(チェロ)アイディアと音の記憶が凝縮されたフランス・プロ 多方面にわたって活躍を繰り広げるチェロの海野幹雄が、最も大きな活動の柱としているのが、年に1回開催するリサイタルである。今年6月に披露するのは、ドビュッシーとプーランクのソナタ、生誕200年を迎えたベルギー生まれのフランクのヴァイオリン・ソナタのチェロ版というフランス・プロ。ドビュッシー晩年のソナタは海野が校訂した楽譜(全音楽譜出版社)が今年出版されたばかり。 「大好きなソナタで、弾き方について多くの先輩方とディスカッションしてきて、指使いやボウイングの様々なアイディアがあります。そこから作曲者の意図を隠さないよう、慎重に選びました。さらに、チェロ譜は元のデュラン社の手を加えていないものと、僕が書き込みをしたものの2種類を付けました。何かの参考になって、弾こうと思う人が増えればいいなと。お値段もお手頃です(笑)。音楽には物語を感じ、簡潔なのに内容が濃い。本当に名作だなと思います」 プーランクのソナタは今回の演目の中心的位置づけであるという。 「プーランクをどうしてもやりたくて、そこから組み合わせを考えました。シャンゼリゼの大通りを歩いているかのような、時代の最先端の街の感覚みたいなものがある。1948年に完成し曲の演奏は、オーケストラパートと独奏ピアノとの音量バランスや音の立ち上がり方が原曲と異なり、作曲家が書き残した音楽のテクスチュアがより鮮明に浮き立って、特有の迫力を帯びる。共演は高橋和歌、三瀬俊吾(以上vn)、民谷可奈子(va)、香月圭佑(vc)、安田修平(cb)という、ソリストやオーケストラ奏者として活躍する実力派たち。室内楽版の醍醐味を堪能できそうだ。た作品ですが、いま聴いても本当に新鮮で楽しいし、チェロの可能性を広げてくれたソナタだと思います。弾けるのが嬉しいです」 フランクのソナタには父親の海野義雄が奏でた音の記憶が深く刻まれている。 「それはもう神がかっていました。美しさとは、人の心を打つとはこのことか、という音。それ以来自分には無理だと思っていましたが、ここ数年でやっと、チェロなら違う魅力が出せると素直に思えるようになりました。アプローチも音域も変わるし、チェロの方が人間的な声で身近に感じられるのでは。全曲すばらしいですが、特に第3楽章が好きです」 全幅の信頼をおく妻の海野春絵のピアノとともに臨むリサイタル。毎年9月開催だったが、今年は6月に変更。そこには意外な微笑ましい理由があった。 「秋には仕事が重なりやすいことと、家庭の事情です。子どもが小学生になり、夏休みじゃないと一緒に遊べなくて(笑)。これまで8月はリサイタル前で両親がピリピリ、という状態が続いていたので……夏休み前の時期に定海野幹雄 チェロ・リサイタル 2022〜ドビュッシー「チェロ・ソナタ」校訂楽譜出版に寄せて〜6/5(日)14:00 Hakuju Hall問 新演コンサート03-6384-2498 http://www.shin-en.jp着させていきたいです」 チラシの写真、海野が座るベンチの色がさりげなく青白赤黄黒になっている。そう、フランスとベルギー国旗を合わせた色だが、その洒脱で嫌味のない工夫は、海野の誠実で親密な演奏に通じるところも感じられる。ぜひHakuju Hallの響きで体験したい。©️Eisuke Miyoshi ©️塩澤秀樹文:飯田有抄取材・文:林 昌英49ミュージック・イン・スタイル 岩崎 淑シリーズ Vol.43〜ピアノコンチェルトの夕べ 弦楽五重奏とももに〜室内楽バージョンで楽しむ2大コンチェルト   コロナ禍によって中断を余儀なくされていた「ミュージック・イン・スタイル 岩崎淑シリーズ」が2年ぶりに開催される。43回目を数える本シリーズでは、さまざまな編成による室内楽の名曲や委嘱作品を意欲的に紹介し続けてきた。今回のテーマは「ピアノコンチェルトの夕べ 弦楽五重奏とともに」。モーツァルトの華やかなピアノ協奏曲第26番「戴冠式」と、ベートーヴェンの堂々たるピアノ協奏曲第5番「皇帝」の室内楽版を取り上げる。  弦楽アンサンブルとのピアノ協奏

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