eぶらあぼ 2022.6月号
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6/3(金)18:30 日経ホール問 日経公演事務局03-5227-4227https://stage.exhn.jp第523回日経ミューズサロン岸本 力 デビュー50周年記念バス・リサイタル 平和回復への祈りロシア歌曲の第一人者が伝える平和への希求 バス歌手の岸本力がデビュー50周年記念リサイタルを開く。自他共に認めるロシア音楽の第一人者であり、その声は深く重く、そして豊か。半世紀にわたり、ロシア語の美しい響きとその魂を歌で伝え続け、魅力を知らしめてきた。 今回は「我が愛するロシアの歌」と題して、ピアニスト村上弦一郎との共演で、岸本が心から愛する歌の数々を。3部構成で、1部はチャイコフスキーとラフマニノフの著名な「ロマンス」で、ロシア歌曲の深奥を聴かせる。2部は7/10(日)15:00 神奈川県立音楽堂問 チケットかながわ0570-015-415 https://www.kanagawa-ongakudo.com他公演アレハンドロ・ヴィニャオ ポートレイト・フォー・パーカッション7/14(木) 名古屋市熱田文化小劇場(ミューズクリエート052-910-6700)7/20(水) サントリーホール ブルーローズ(小)(ミリオンコンサート協会03-3501-5638)シリーズ「新しい視点」ダブルポートレイト・フォー・マリンバ・アンド・ザ・フューチャー横浜で体感するマリンバ音楽の最前線 最近、横浜から音楽の新しい風が吹いている。前川國男による戦後モダニズム建築の名作として知られる神奈川県立音楽堂が、この7月、これまでにない攻めた企画「シリーズ〈新しい視点〉」を始動させる。中核となるのは2本の柱で、まず3人の企画委員が公募企画から選定した「紅葉坂プロジェクト」(7/2)。もうひとつが、「ダブルポートレイト・フォー・マリンバ・アンド・ザ・フューチャー」(7/10)。こちらはマリンバが主役となったユニークな演奏会プロジェクトだ。この楽器のための名作を生み出してきた一柳慧、そして今世界でもっとも重要なマリンバ音楽の作曲家アレハンドロ・ヴィニャオを特集する。両作曲家によるトークも行われるほか、マリンバ奏者の小森邦彦、橋本岳人(フルート)、ブルックス信雄トーン(クラリネット)、岡本麻子(ピアノ)らが演奏を担当する。一柳の「共存の宇宙」「風の軌跡」といった名作に加えて、エレクトロニクス音楽も得意とするヴィニャオのフルートとクラリネットと打楽器、エレクトロニクスのための「ファイナル デ フレーズ」の世界初演もあるなど、マリンバ音楽の“今”を堪能できる絶好の機会となっている。 今回のプログラミングについて、「打楽器でありながら、打楽器のためだけではない、この20年の創作の成果をご〈ともしび〉など「ロシア歌謡」、3部は〈黒い瞳〉などの「ロシア・ジプシー歌謡」で、広く歌い継がれてきたロシアの旋律と詩をたっぷり披露する。 本公演は平和回復への祈りを込めて、19世紀ウクライナの国民的詩人タラス・シェフチェンコ作詞のラフマニノフ〈私は悲しい恋をした〉〈思い〉が追加された。ロシアの芸術に人生を捧げてきた彼の現状への心痛は察するに余りある。だからこそ歌わねばならない。まさしく岸本の集大成、入魂の記念公演となる。紹介します。エレクトロニクスの入ったものそうでないものなど、できるだけ色々なタイプの音楽を取り上げます」(ヴィニャオ)。 共演する小森は、一柳、ヴィニャオについてこう語る。 「打楽器に異なる楽器を組み合わせる室内楽編成によって、色彩や音圧でその魅力や効果が増幅します。今回のヴィニャオの来日公演では、私がこれまで彼に委嘱した作品も取り上げますが、聴きながら足踏みしたくなるような魅力あふれる曲ばかりです」   世界をリードする2人の作曲家のトークにも期待だ。「私たちの音楽への理解に役立ててほしい」(ヴィニャオ)。「日本と西洋ではマリンバの演奏文化は異なるように感じますが、作曲家に直接様々な好奇心を投げかけて確認で岸本 力村上弦一郎 ©️Hayashida一柳 慧 ©️Koh Okabeきる、贅沢な機会になります」(小森)。ヴィニャオ自身も訪日を楽しみにしているという。「3週間の滞在で、プロの音楽家、そして学生たちと交流できますので、有意義な日々になると思います」。7月は、海辺をのぞむ横浜の風景が美しい輝きを放つ季節だが、「ダブルポートレイト・フォー・マリンバ・アンド・ザ・フューチャー」は、屈指の名建築ホールでのスリリングな「新しい風」を体感させてくれるにちがいない。アレハンドロ・ヴィニャオ文:林 昌英文:伊藤制子46

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