eぶらあぼ 2022.6月号
43/133

Interview戸田弥生(ヴァイオリン)人として、演奏家としての深化を映したバッハ無伴奏が300年経っても色褪せないで、生き 日本屈指の実力派ヴァイオリニスト・戸田弥生が、J.S.バッハの「無伴奏ヴァている。勢いや精神的な揺さぶりを強イオリン・ソナタ&パルティータ」全曲く感じます。ソナタは特にそう。ヴァを、20年ぶりに再録音した。まず彼女イオリンを自分の体の一部と思って弾にとってその意味は大きい。き切らねばならず、それでいて冷静な 「前回の録音は、エリザベート王妃国構築も必要です。対するパルティータ際音楽コンクール優勝後の、演奏家は舞曲の連なりなので、演奏者も愉しとしての方向性を探っていた時期にめます。いずれにしても弾きながら、凄チャンスをいただき、バッハの音楽からい響き、凄い作品だと感動し、本物の芸色々教わった感じでした。しかし20年術に携われる喜びに浸っています」経てば多くのことが変化します。最も 各曲の多様性も妙味をなしている。 「ソナタ第1番は、演奏するとパイプオ大きいのは家族ができたこと。二人ルガンが後ろで鳴っているような気がの子どもを育てる中で人として変わりします。曲集が始まる大きな作品としましたし、家族の協力あってこそ人間ての別格感や強いエネルギーを感じまは成り立つのだという、感謝の気持ちすね。第2番はもう少し人間的。内面も生まれました。ならばそこに音楽面に入っていく感覚があり、和音と和音の成熟も加わった今の音を聴いてほしの間に流れがあります。パルティータいと思い、一生かけて演奏したい唯一第1番は、とても綺麗な曲。各曲に続く無二の作品で、子育ての間も可能な限ドゥーブルには、前の曲の影や気持ちり弾いてきたバッハの無伴奏曲を録音の襞のような意味があると思います。しようと。今の時期にそれが実現でき同じく第2番は、やはりシャコンヌが非て本当によかったと思います」常に深く厳しく、神様との対話が全部 やはり「バッハの無伴奏は別格」だと音に反映されています。でもソナタもいう。 「これが私の最後の録音になってもいパルティータも第3番になると光が射してくる。ソナタの長大なフーガは生いくらい大事な作品。自分の精神性がきる喜びを湛えています」すべて反映されますし、弾いていると自 今回の録音には「とても自然な、身の内側に引き戻され、バッハと向かい合うことになります。何しろ音楽自体演奏会に近い状態で臨むことができナタ第23番「熱情」とショパンの「24の前奏曲」ほか、ラフマニノフの小品も演奏。特に「24の前奏曲」はショパン・コンクール時のレパートリーにはなかった作品で、沢田がまた一歩深いところでショパンの音楽世界を探る姿を見せてくれる。 人気上昇中とはいえ、学業との兼ね合いもあり、沢田のリサイタルはそう多くない。遠方からでも足を運ぶ価値がありそうだ。7/23(土)13:30 住友生命いずみホール9/10(土)13:30 三井住友海上しらかわホール問 大器株式会社03-6435-1090 Twitter/Instagram @daiki_groupた」。そして「弾きながら感じたバッハの世界に包まれる幸せが、皆様に伝わればいいなと思う」と話す。さらには楽曲誕生の時期に近い1728年製の名器「グァルネリ・デル・ジェス」の音色も注目点。音楽の脈動感や芳醇な深みに魅せられるこのディスクを、一人でも多くの人に聴いてほしい。SACD『J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ(全曲)』MYCL-00021(2枚組)妙音舎 ¥4400(税込)取材・文:柴田克彦文:高坂はる香 ©️Akira Muto40沢田蒼梧 ピアノリサイタル医学の道を志す音楽家として子どもたちのためにできること 昨年、ショパン国際ピアノコンクールに出場して大きな注目を集めた沢田蒼梧。名古屋大学の現役医学生という点も話題を呼び、春休みに行われた紀尾井ホールでのリサイタルは早々に完売。繊細さと伸びやかさをあわせ持つショパンを披露し、満員の聴衆を魅了した。 そんな沢田が、大阪と名古屋で行われるDAIKI GROUPチャリティーコンサートに出演。入場料収入はすべて、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンと日本赤十字社に寄付されるといい、医師を目指す沢田も、まずは音楽家として子どもたちの未来に少しでも貢献したいと語る。 演目は、ベートーヴェンのピアノ・ソ

元のページ  ../index.html#43

このブックを見る