eぶらあぼ 2022.6月号
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6/4(土)15:00 東京文化会館(小)問 ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 https://www.japanarts.co.jp都響スペシャル「チック・コリアに捧ぐ」7/17(日)、7/18(月・祝)各日14:00 サントリーホール問 都響ガイド0570-056-057 https://www.tmso.or.jpからは、寺田が昨今「再び心を奪われてしまった」と語る後期のソナタ第30番を取り上げる。終楽章に変奏曲形式をもつこのソナタは、晴朗で繊細な表情を見せる。続くシューマンの「幻想曲」は、ベートーヴェン記念碑建立募金に貢献するために書かれた大曲であり、激しさと優雅さとを持ち合わせている。後半にはショパンの「24の前奏曲」を据えた。全調を網羅しながら多様なキャラクターを聴かせるショパンの名曲を、寺田の多彩なタッチで聴き終える頃、私たちの眼前にはロマン派の世界が鮮やかに広がっていることだろう。アラン・ギルバート ©️Rikimaru Hotta話題作を早くも日本の聴衆にお披露目してくれるが、他のプログラムもラテン系の血を持つコリアへのオマージュとなっている。ガーシュウィンの「キューバ序曲」で幕を開け、協奏曲で盛り上げた後、後半はラヴェル「スペイン狂詩曲」「ボレロ」へとつなぐ。ジョセフ・アレッシ 首席客演指揮者でもあるギルバートが振る時の都響は、サウンドに弾力と勢いが加わり、滅法ノリがいい。プログラミングからして、会場の熱狂ぶりが目に浮かぶようだ。夏真っ盛り。暑さにバテ気味な方は、音のビタミンをたっぷり摂取してほしい。文:江藤光紀文:飯田有抄©️Akira Muto37アラン・ギルバート(指揮) 東京都交響楽団世界的ジャズ・ピアニストが遺した最後の大作を日本初演 ジャズ界の巨匠チック・コリアは、クラシック界でも異色の存在感を放ってきた。“巨星堕つ”の報が届いたのは昨年2月のこと。世を去る前にコリアが残した最後の大作は、没後半年を経て日の目を見ることとなる。 その作品、「トロンボーン協奏曲」は、ニューヨーク・フィル首席奏者のジョセフ・アレッシが、ニューヨーカーでありニューヨーク・フィルの音楽監督も務めたアラン・ギルバートと、小曽根真のセッションを聴きにいったことがきっかけで生まれた。そこでコリアの曲が取り上げられ、感銘を受けたアレッシが小曽根経由で新曲を依頼したのだ。ジャズはもちろんのこと、いろいろな音楽のエッセンスを散りばめつつ、トロンボーンがオケと語り合う。“そぞろ歩き”を意味する「ア・ストロール」というタイトル通り、ムーディーで賑やか、肩の凝らない音楽だ。 今回の「チック・コリアに捧ぐ」では、協奏曲誕生のきっかけを作ったアレッシが、ギルバートとそろい踏みで、この寺田悦子 ピアノ・リサイタル 《ロマン派への扉》永く傾倒してきたベートーヴェン、シューマン、ショパンの代表作を 50年を超えるキャリアを経てなお第一線で輝き続けるピアニスト寺田悦子。その情感豊かで誠実な演奏によって、多くの聴衆を魅了してきた。近年では渡邉規久雄とのデュオ・リサイタル・シリーズが話題を呼び、ベートーヴェン、ドビュッシー、ショスタコーヴィチらの作品を取り上げ、多岐にわたる時代様式への精通と、音楽的な視野の広さを示した。また「調の秘密」シリーズや、時代楽器とモダンピアノを弾き比べるリサイタルなどを企画し、独自の探究心から聴衆の関心を誘うステージを展開している。 この6月に行うリサイタルは、題して「ロマン派への扉」。19世紀に大きく花開いたピアノ文化の中で、新しい地平をそれぞれに切り開いた3人の作曲家、ベートーヴェン、シューマン、ショパンに焦点を当てる。まさにロマン派の「扉」を開いたベートーヴェンの作品

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