eぶらあぼ 2022.6月号
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CDSACDCDCD108佼成ウインドLIVE 2022年度 全日本吹奏楽コンクール課題曲/大井剛史&東京佼成ウインドオーケストララガッツィ!《オペラ名アリア・重唱曲集》/所谷直生&中村元信&村上敏明&渡邊公威&須藤慎吾&鶴川勝也&斉木健詞 他セロ弾きのゴーシュ 林光作品集/佐山真知子&藤原真理ザ・ライブ I/田尻洋一日本を代表する吹奏楽団が、今年度の全日本吹奏楽コンクールの課題曲となった5曲すべてを演奏したライブ録音。むろんこうしたディスクは、演奏団体の課題曲の選択と実演の参考といった要素が極めて強い。だが、5曲いずれもテイストの異なる音楽ゆえに、聴くだけで興味深く楽しめるのも確か。過去の多数の課題曲がその後スタンダード・ナンバーとして愛されているので、そうした作品を探す面白さもある。そして何より、各曲の音楽的な魅力を真摯に追求し、それを見事に表出した細やかで深みのある演奏は、コンクールと無関係の聴き手にも大きな感銘をもたらす。(柴田克彦)国立音楽大学で同時期(1992年入学)に青春を謳歌し、今はそれぞれ第一線で活躍する仲間たち(ragazzi)…7人の男性歌手と指揮者1名らによる競演盤。ワーグナー〈夕星の歌〉やヴェルディ〈見よ、恐ろしい炎よ!〉、ビゼー〈聖なる神殿の奥深く〉などの有名なアリアや二重唱もあるが、《愛の妙薬》のネモリーノ&ベルコーレ、《マクベス》のマクダフ&マルコム、《運命の力》のアルヴァーロ&カルロ、《カルメン》のホセ&エスカミーリョ…あたりの“通好み”な選曲はお互い気心の知れた関係があってこそ。全員参加の〈行け、我が想いよ、黄金の翼に乗って〉が最高。   (東端哲也)林光は宮沢賢治をはじめ自由や反戦の言葉を、私たちの身近にある様々な音楽イディオムを取り込みながら、大衆の耳になじむメロディーに乗せ続けた。林はこれらをリートやアリアではなくソングと呼んでいたが、シンプルなソングを集めた本作からその思想がダイレクトに伝わってきた。溌剌としたリズム、陰影豊かなハーモニー、日本語の抑揚を的確に捉えた品のよいフレージング。さりげないなかに一流のセンスが光る。林作品に長年親しんできたべテラン勢の優しく、楽しく、時にはしんみりとしたソングの数々は、聴き手の体と心に沁みいって、やがて一つの豊饒な世界へと成長していく。(江藤光紀)田尻洋一の自身の編曲によるベートーヴェン交響曲のピアノ独奏版。これが頗る面白い。オーケストラで普段聴こえてこないバスや内声を強調して、浮かび上がらせるのも実に新鮮だ。第7番序奏の上昇音階は盛大。第1主題トゥッティはオケのように量感がある。展開部後半の息の長い漸強から第1主題の再現に突入する箇所は、雄大な構築に興奮を禁じ得ない。スケルツォもトリオもクレシェンドの迫力が尋常でない。終楽章の主題の反復回転は凄み連発。最後はライブの興奮も手伝ってド迫力で終わる。第2番も古典的ながら、ベートーヴェンの精神が宿っていて、本当に素晴らしい。新しいCDも聴いてみたい。(横原千史)コジマ録音ALCD-9234 ¥3080(税込)収録:2012年2月、伊丹アイフォニックホール(ライブ) 他BRAVO RECORDSBRAVO-10004 ¥3300(税込)杉浦邦弘:やまがたふぁんたじぃ〜吹奏楽のための〜/鈴木雅史:マーチ「ブルー・スプリング」/鈴木英史:ジェネシス/奥本伴在:サーカスハットマーチ/前川保:憂いの記憶―吹奏楽のための大井剛史(指揮)東京佼成ウインドオーケストラ収録:2022年2月、東京オペラシティ コンサートホール(ライブ)日本コロムビアCOCQ-85581 ¥1980(税込)ドニゼッティ:《愛の妙薬》より〈20スクーディ!〉/ワーグナー:《タンホイザー》より〈夕星の歌〉/ヴェルディ:《ナブッコ》より〈行け、我が想いよ、黄金の翼に乗って〉/ビゼー:《カルメン》より〈私はエスカミーリョ〉 他所谷直生 中村元信 村上敏明 渡邊公威(以上テノール) 須藤慎吾 鶴川勝也(以上バリトン) 斉木健詞(バス) 西正子(ソプラノ/賛助) 仲田淳也(指揮) F.O.A.オーケストラ収録:2021年10月、豊洲文化センター(ライブ)オクタヴィア・レコードOVCL-00781 ¥3520(税込)宮沢賢治(林光編):星めぐりの歌/林光:三十五億年のサーカス、グランド電柱、ねがい、夢、祈り(吉川和夫編)、チェリストのための童話「セロ弾きのゴーシュ」、あまのがわ、八匹めの象の歌、歩くうた、ものがたり(吉川編) 他佐山真知子(うた/語り)藤原真理(チェロ) 倉戸テル(ピアノ)ベートーヴェン(田尻洋一編):交響曲第2番、同第7番田尻洋一(ピアノ)

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