eぶらあぼ 2022.04月号
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鐵 百合奈 シューベルトからシューマンへ 第1回9/17(土)18:00 東京/美竹清花さろん問 美竹清花さろん03-6452-6711http://yurinatetsu.com625/8(日) 14:00 東京文化会館(小)問 プロアルテムジケ03-3943-6677 https://www.proarte.jp興味は尽きません。すべてのソナタが攻めの姿勢で書かれ、生きる力をもらうことができる。25歳で始めたということは未来を見据え、後期に向かって進むことを意味しています」 上巻の収録曲は「熱情」「ワルトシュタイン」などを含む全16曲。鐵自身による読み応えのあるブックレットとともに、彼女の視点で解き明かされるベートーヴェンをたっぷりと味わいたい。Interview鐵 百合奈(ピアノ)演奏と研究を通して独自の視点でベートーヴェンの核心に迫る 若手ピアニストのなかには演奏以外にもさまざまな分野で才能を発揮する人がいるが、鐵百合奈はピアニスト・文筆家・研究者という多彩ぶりを発揮し、2017年と18年に2年続けてベートーヴェンに関する論文で柴田南雄音楽評論賞(本賞)を受賞した。子どものころから読書家で、ピアノのレッスンのときも先生とともに楽曲分析をしていたという。 「小学5年生のときにベートーヴェンのピアノ・ソナタの楽譜に出合い、先生とソナタ形式について話し、それがとても興味深く、全曲を弾いてみたいと夢見るようになりました」 そんな長年の夢が実現したのは、2019年から22年2月にかけて美竹清花さろん(東京・渋谷)で開催された8回のベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏会。並行して録音も行い、3月21日に上巻(5枚組)がリリースされる。 「高校に入って人生が大きく変わり、読む本やレッスン内容にも変化が訪れました。やがて大学ではさまざまな先生から教えを受け、自分が書く文章も変化し、いまは音楽と文字は密接なものと考えています。私は奏者と聴衆がともに音楽を分かち合い、一方が能動的、他方が受動的という形ではなく、演奏会ではともに音楽に参加するという空気を生み出すことを理想としてい概念を採り入れた新たなピアノ練習法の研究と普及にも尽力。幅広い活動で音楽文化の発展に貢献し、多彩なレパートリーで聴衆を魅了してきた。 今回は、ベーゼンドルファー・アーティストに認定されてから初のソロリサイタルとなる。モーツァルト「ソナタ第13番」(K.333)と2つの「ロンド」(K.485&K.511)、サティの「前奏曲」4曲に、父貴四男のソナタ(第1楽章)とソナチネ、西村朗「ピアノのための『星の鏡』」と自在に選曲。「私の恋人」と平尾が語る銘器インペリアルで、思い入れとともに披露する。ます。この全曲演奏会ではプログラムノートも執筆していますが、回を重ねるごとにお客さまの意識や共感が増し、温かな雰囲気に包まれて演奏できました。今回はベートーヴェンのピアノ・ソナタを8つのテーマに分け、独自のタイトルを付しています。各々のソナタのなかに共通項を見出し、それに沿って分けていきました。子どものころにピアノ・ソナタ第1番を練習していたときには、ひとつの物語のように書かれていると感じました。以来、ソナタを研究・分析し、シューマン、シューベルトの作品などについても、その内奥に迫ろうと考えています」 実は、この全曲演奏を開始するには、年齢が大きなキーワードの役割を果たした。 「ベートーヴェンがソナタ第1番を作曲したのは25歳のとき。私もそれに因み、25歳のときに全曲演奏に踏み出しました。ベートーヴェンは偉大な作曲家ですが、作品を深く掘り下げていくと人間性も浮き彫りになり、ネジが外れているところなども発見でき(笑)、取材・文:伊熊よし子文:笹田和人©武藤 章©井村重人CD『ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集 上巻』N&F NF29503/7(5枚組)¥オープンプライス3/21(月・祝)発売平尾はるな ピアノコスモス2022 ベーゼンドルファーコンサート現代音楽界を牽引する名手の音楽性を堪能 新作の委嘱・初演を含めて、現代日本の作品の啓蒙や紹介に大きく寄与、後進の指導にも力を注ぐなど、半世紀以上にわたり、コンテンポラリー・シーンをリードし続けてきた平尾はるな。時代を超えた佳品の数々を、独特の音色と感性で結び付け、88鍵の“宇宙”を創り上げる。 日本作曲界の先駆者である父・平尾貴四男とピアニストの母・妙子の四女として生まれ、7歳で安川加壽子に師事。パリ国立高等音楽院をプルミエ・プリで卒業し、帰国後は国際舞台で活躍を続ける一方、スポーツトレーニングの

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