eぶらあぼ 2022.04月号
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第246回 土曜マチネーシリーズ 4/23(土)第246回 日曜マチネーシリーズ 4/24(日)各日14:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 https://yomikyo.or.jp4/27(水)19:00 トッパンホール問 トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 https://www.toppanhall.com谷 昂■■■登(ピアノ)進化=深化を遂げる驚異のピアニズム 昨年秋の日本音楽コンクールのピアノ部門で第1位および聴衆賞を受賞した谷昂登は、現在18歳である。音楽を受け止める力と、それを聴き手に伝える力には、驚くほどに成熟したものがあり、若い身体能力だけに頼らない、知的かつ情感に満ちた演奏表現には、円熟味すら感じさせる逸材である。 そうした谷の素質をいち早く見出し、聴衆に届けようと積極的に働きかけてきたのがトッパンホールだ。同ホールには15歳でデビュー、その後も谷の音楽的成長を後押しし続けてきた。そんなトッパンホールを、谷は「親しみを感じ、自分の出したい音が出せるホール。お客さまの共感もよく伝わる」と語る。 4月のリサイタルは、歴史と思想と芸術性とが密接に結びついた、谷らしい選曲で開かれる。冒頭はベートーヴェンのソナタ第24番「テレーゼ」。ベー52トーヴェンの「カンタービレ期」を伝える美しく朗らかな2楽章構成のソナタだ。続くシューマンの「幻想曲」は、リストによって呼びかけのなされた「ベートーヴェン記念碑建立募金」に貢献するために書かれた作品。第1楽章の終わりにはベートーヴェンの連作歌曲「遙かなる恋人に」の一節が引用されている。そして締めくくりには、リストのソナタ ロ短調を演奏する。谷が優勝した日本音楽コンクールの第3次予選でも演奏した単一楽章の大作であり、リストがシューマンに捧げた名曲だ。作品が生み出された多様なコンテクストに関心を持ち、一つひとつを丁寧に関係づける谷の演奏に、私たちはきっと心を震わされるに違いない。小林研一郎 ©読響周防亮介 ©TAKUMI JUN国内外のコンクールで優れた成績を収めてきた若手ヴァイオリニストの周防亮介、チェロの遠藤真理(読響ソロ)、ピアノの小林亜矢乃(小林研一郎の娘でもある)という3人の名手がベートーヴェンでのソロに挑む。遠藤真理 ©Yuji Hori文:飯田有抄小林亜矢乃 ©Hiromi Uchida 土日の午後、東京芸術劇場で開催される読売日本交響楽団「マチネーシリーズ」で、私たちは再びその19世紀の傑作に触れ、音楽を革新しようとしていた作曲家の熱い情熱に出会う。現代でも通用する新しさが感じられるコンサートだ。©井村重人小林研一郎(指揮) 読売日本交響楽団炎のマエストロの指揮で新時代を開いた作曲家たちの熱き情熱に触れる文:片桐卓也 今から200年ほど前の19世紀初頭。フランス革命の余波がまだ全ヨーロッパの政治に影を落としていた時代は、音楽の大きな変革期でもあった。実はベートーヴェンの傑作の多くが書かれたのはそんな時代だった。 2020年はベートーヴェンの生誕250年だった訳だが、19世紀初頭のベートーヴェンは壮年期にあり、時代の常識を超えた作品を次々と生み出していた。ヴァイオリン、チェロ、ピアノという3つの楽器を独奏に起用した「三重協奏曲」もそのひとつ。いわゆるピアノ三重奏の編成とオーケストラを結びつけるという大胆な発想の協奏曲を書いた。そしてフランスの作曲家ベルリオーズはベートーヴェンの死の3年後に、それまでの枠を超える自由な発想による「幻想交響曲」を発表。当時ベルリオーズはまだ20代だった。 壮年期のユニークな協奏曲、そして若さほとばしる交響曲を、80歳を超えても音楽に情熱を燃やし続ける小林研一郎が指揮する。「三重協奏曲」では、

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