eぶらあぼ 2022.04月号
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第237回 芸劇シリーズ 4/17(日)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール第376回 横浜定期演奏会〈春季〉4/23(土)17:00 ミューザ川崎シンフォニーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 https://japanphil.or.jp 17世紀から生き続ける不老不死のカストラートが400年の音楽史を辿る。カウンターテナー藤木大地主演の歌劇《400歳のカストラート》が2年ぶりに再演される。2020年2月に初演された東京文化会館のオリジナル・プロダクションで、ルネサンス末期から現代まで20曲以上の楽曲を用いてオムニバス形式で描く音楽ドラマ。企画原案と選曲は藤木大地。脚本と演出・美術に平常(たいら・じょう)、音楽監督・作編曲は加藤昌則。 去勢手術と厳しい訓練によって超絶技巧を獲得した男性高音歌手であるカストラートたちは17~18世紀のオペ49藤木大地 ©hiromasa平 常 ©Daisuke Omori同日に初演された2作品をセットで。23日のミューザ川崎ではシベリウスの交響詩「エン・サガ」にベートーヴェンの交響曲第2番と第4番の2曲の偶数番号作品を組み合わせた。 もとよりワーグナーを得意とし、現在はドイツのザールブリュッケン・カイザースラウテルン・ドイツ放送フィル首席指揮者も務めるインキネンは、ドイツ音楽を重要なレパートリーとする指揮者。インキネンが求めるのは20世紀の巨匠風でもなければ、歴史的奏法の再現でもない、現代の清新なベートーヴェン像であるはず。コロナ禍の苦悩を勝利へと導くような快演を期待したいものである。ラ界のアイドル的存在だが、この舞台が焦点を当てるのは、そんな華やかさよりも、声の女神によって永遠の生命を与えられたカストラート「ダイチ」の恋と孤独、戦争の傷痕、そして声と音楽を巡る葛藤だ。藤木の独壇場である抒情的で丁寧な歌が、それを巧みに描き出す。演奏は音楽監督・加藤のピアノのほか、成田達輝、周防亮介(以上ヴァイオリン)、東条慧(ヴィオラ)、上村文乃(チェロ)と6/26(日)15:00 東京文化会館(小) 4/9(土)発売問 東京文化会館チケットサービス03-5685-0650他公演 7/3(日) 愛媛/西条市総合文化会館(0897-53-5500) 7/10(日) 三重/四日市市文化会館(059-354-4501)加藤昌則精鋭が集った贅沢なアンサンブル。 初演同様、俳優の大和田獏と大和田美帆父娘の朗読劇が、400年の時空を超えた物語へいざなう。プロの舞台人だから、劇場外の出来事はシャットアウトして眼前の仕事に専心できるのかもしれないけれど、2年前の舞台の直後に痛切な悲しみに見舞われた2人にも、心からのエールを送りたい。今回もまた、素敵な舞台を期待しています。ピエタリ・インキネン ©Mechthild Schneider大和田 獏文:飯尾洋一文:宮本 明大和田美帆ピエタリ・インキネン(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団現代の清新なベートーヴェン演奏に期待! 入国制限の影響で長らく日本の音楽界は著しくドメスティックな状況にあったが、春の訪れとともに雰囲気も変わってきそうだ。春に草木が芽吹くように、停滞していたプロジェクトもまた活発に動き出すのではないか。この4月に予定される首席指揮者ピエタリ・インキネンと日本フィルの2種類のベートーヴェン・プログラムを見ると、そんな期待が湧いてくる。 インキネンと日本フィルがヨーロッパ・ツアーを敢行したのは2019年。本来であれば翌年のベートーヴェン・イヤーで一層の飛躍を果たすはずだったが、新型コロナウイルスの感染拡大により、両者の共演は久しく実現しなかった。首席指揮者としての任期を2年間延長したインキネンは、ようやく21年11月に2年ぶりの来日を果たす。そして、この4月にふたたびベートーヴェンに取り組む。17日の東京芸術劇場では交響曲第6番「田園」と第5番「運命」という歌劇《400歳のカストラート》時空を超える名曲で語られる物語、再び!

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