eぶらあぼ 2022.04月号
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122Profileのりこしたかお/作家・ヤサぐれ舞踊評論家。『コンテンポラリー・ダンス徹底ガイドHYPER』『ダンス・バイブル』など日本で最も多くコンテンポラリー・ダンスの本を出版している。うまい酒と良いダンスのため世界を巡る。http://www.nori54.com乗越たかお第90回 「ダンスの『振付家=演出家問題』『プロデュース公演問題』」 田村興一郞が主宰するDANCE PJ REVO パニーがないとダメだよね」と堂々巡りだったわけ『STUMP PUMP TOKYO』のアフタートークでだが、杉原は、話された、演出家・舞台美術家の杉原邦生からのダ「背景の違う人々を集めているんだから、まずは一ンス界への問題提起が非常に興味深かった。ダン体化させるための作業をするべきだ」という。やりようはいくらでもあるのに、やってないサーとの協働経験豊かな杉原が指摘したのは「振付家と演出家は一緒でいいのか問題」と「プロデューだけじゃないの? ここに説得力があるのは、杉原自ス公演問題」。オレもこの連載で書いてきたことだ身のカンパニー「KUNIO」が、固定メンバーを持たが、じつに的確だ。ないプロデュース公演カンパニーの形を取り、数多の名作を生み出しているからである。 実際ダンスは、たいていの場合、振付家と演出家(さらに出演も)を兼ねる。ひとつには「ダンスはソ オレは似た話を、若手振付家の中川絢音にロンロから始める人」が多く、また(厳密な区分ではないグインタビュー(国際交流基金の「パフォーミングが)「演劇やミュージカルなどに呼ばれて部分的なアーツ・ネットワーク・ジャパン」)をした際に聞いて振り付けをする=振付師」とは違い、「最初から最いた。 昔のような閉鎖的・固定的なカンパニーを維持す後まで自分ひとりの世界観が主体の作品を作る=振付家」たる意気込みもあろう。だが杉原は、るのが難しい現状を、まずは認める。そこでカンパ「ダンスの『振付ができた段階』は、演劇で言ったらニー同士の交流の中で、フレキシブルでオープンに『脚本があがって役者に台詞が入った段階』ですよ磨き合い、いつでも一体感を持てるような関係を普段から作っておくというのだ。問題はそれが可能なね。演出と作品を練り上げていくのはそこからなのに、ダンスはそこがゴールみたいになってませんか」のかだが、今回の田村の作品には中川もダンサーと うむ。じつにありがちだ。ダンスの場合、振付と演して参加しており、2人とも横浜ダンスコレクション出を分けるのは海外でもあまりないが、演出を共にで受賞する実力を示している。もちろん厳しさに耐え、あえて固定的なカンパニーで素晴らしい作品を考えてくれるドラマトゥルクは盛んであり、日本でも必要性が認識されつつあるところだ。作り出している若いダンサーもいる。 次の「プロデュース公演問題」は、いま過渡期に 足らぬと不満をいうだけではなく、タフに生き残ある。コンテンポラリー・ダンスの初期は、すべてはる戦略を考えているのだ。あとは我々オトナが彼らカンパニー単位で動いていた。「クセのある振付家の環境を整える戦いをしなくてはならない。をよく理解しているダンサーたちが、一丸となって作っていく」イメージだ。 しかし今は主に経済的な理由から大きなダンスカンパニーを維持するのが難しい時代。振付家以外の固定メンバーはゼロか数人で、あとは作品ごとに集められたフリーや他カンパニーのダンサーが集まることが多い。そのため動きの質がバラバラな「寄せ集め感」が出る。そこで古い世代は「やっぱりカン

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