eぶらあぼ 2022.04月号
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114バッハ:ヨハネ受難曲/ガーディナー&モンテヴェルディ合唱団&イングリッシュ・バロック・ソロイスツハイドン:交響曲集Vol.14/飯森範親&日本センチュリー響名匠ガーディナーによる、3度目の「ヨハネ」の録音。久々のドイツ・グラモフォンへの復帰作でもある。特定の楽曲を長いツアーを通じて練り上げ、最後にライブ収録するスタイルを続けてきたが、今回は無観客ライブ配信との同時録音。全員が一丸となって、ひとつの音楽的目標に向かっていくような2003年の前回録音と比べ、表現の彫りが深く劇的だ。冒頭の合唱曲から、ビートを利かせた速めのテンポ取りで、「Herr(主よ)!」という3回の呼びかけには鬼気迫る感も。随所での対旋律の強調や奏者個々の自主性の露出など、まるで各々の心の叫びを反映しているかのよう。コロナ禍ゆえに、生まれた凄演か。(寺西 肇)豊かな詩情。大人のノスタルジー。ヴァイオリンを聴く喜び。元東京フィル・コンサートマスターの青木高志と、アメリカで活躍するピアニスト弘中美枝子。高校時代に共演機会のあった彼らが30数年ぶりに再会したことから録音が実現し、ふたりの経験と年輪が美しい融和をみせて、すてきなアルバムが完成した。繊細でメロウ、でも力強さもある青木の美音が郷愁を誘う。弘中の無理なく空間を包み込む響きも温かい。選曲も彼らの特長に合ったもので、歌曲の編曲やブラームスの表現は心の襞に触れる。図らずも不安の重なる時期のリリース、部屋の空気が和らぐ大切な一枚となるはず。(林 昌英)愛知を中心に活動する女性5人組ブラス・アンサンブルの結成20周年記念アルバム。全体に、美しい響きと緻密な構築、そして長き活動がもたらす力みのない曲作りが光っている。シリアスな五重奏曲から「愛の讃歌」等の小品に至る、コンサートのような構成もまた良し。エヴァルドの五重奏曲をはじめとするまろやかなテイストが心地よさを与えてくれるし、ハープを交えた六重奏という珍しい作品、クーツィールの「スメタナの『モルダウ』の主題によるメタモルフォーゼス」も興趣を盛り上げる。ブラス・ファンでなくともこの形態の魅力をストレートに楽しめる一枚。(柴田克彦)飯森&日本センチュリー響によるハイドンの交響曲全曲録音企画の第14弾。中盤に差しかかり、手慣れた印象だ。様式感を押さえすっきりと聴かせる。ややアップテンポで心地よくスタートした「王妃」は、展開部でぐっと押しこんだかと思えば、さらっと引いて、コントラストが明快。フルートのチャーミングなオブリガート、しっかりとしたメヌエット、軽快なフィナーレとお手本のような演奏。タイトルにまつわる優雅なイメージも伝わってくる。シンフォニックで朗らか、創意に富んだ第23番、トランペットやティンパニが祝祭的な気分を盛り上げる第20番と、ハイドンの進化のプロセスも浮き彫りにする。(江藤光紀)J.S.バッハ:ヨハネ受難曲 BWV245ニック・プリッチャード(福音史家/テノール) ウィリアム・トーマス(イエス/バス) ジョン・エリオット・ガーディナー(指揮) モンテヴェルディ合唱団 イングリッシュ・バロック・ソロイスツ 他青木高志(ヴァイオリン)弘中美枝子(ピアノ)収録:2021年4月、オックスフォード(ライブ)ユニバーサルミュージックUCCG-45041/2(2枚組) ¥3960(税込)ナミ・レコードWWCC-7962 ¥2750(税込)収録:2019年5月、いずみホール(ライブ)オクタヴィア・レコードOVCL-00778 ¥3520(税込)スーク(コチアン編):愛の歌/マスネ:タイスの瞑想曲/ショーソン:詩曲/ブラームス:旋律のように(ハイフェッツ編)、ヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」/R.シュトラウス:夜、明日!/ドヴォルザーク(クライスラー編):我が母の教えたまいし歌エヴァルド:五重奏曲第2番 変ホ長調/クーツィール:スメタナの「モルダウ」の主題によるメタモルフォーゼス/モノー(照喜名有希子編):愛の讃歌 他ブラスアンサンブル・ロゼ【稲垣路子 近藤万里子(以上トランペット) 杉浦美紀(ホルン) 照喜名有希子(トロンボーン) 加藤日名子(テューバ)】松村衣里(ハープ)妙音舎MYCL-00013 ¥3300(税込)ハイドン:交響曲第85番「王妃」変ロ長調、同第23番 ト長調、同第20番 ハ長調飯森範親(指揮)日本センチュリー交響楽団CDCDCDSACDPoésie〜詩■■を奏でる/青木高志&弘中美枝子Brass Ensemble ROSE with you/ブラスアンサンブル・ロゼ

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