ぶらあぼ2022年3月号
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SACDSACDCDCD96N響の福川伸陽(ホルン)ら主要楽団などで活躍する5人の管楽奏者と三浦友理枝(ピアノ)、同世代の気鋭の若手によって2015年に結成され、独創的かつ先鋭的な活動を続ける「東京六人組」。今回は「ダンス」をテーマに、鮮烈なハーモニーを聴かせている。彼らのために編曲された、ラヴェル「ラ・ヴァルス」の豪奢な響きと伸縮するリズム。剛柔が交錯するプロコフィエフ。繊細で瀟洒なダンディ。そして、スリリングかつ闊達な動きで、息をもつかせぬハチャトゥリアン……。超絶技巧をそれと感じさせぬ自然な音楽の流れ、同じ編成によると思えぬ多彩な響きで、聴く者の耳を釘付けにする。(寺西 肇)スケールの大きな若き才能に出会える喜び。戸澤采紀のファーストアルバムは特筆すべき水準の記録となった。知らずに聴けば、20歳の若者による演奏とは思えないだろう。技巧は完璧の域といえるが、それ以上に落ち着いた佇まい、芯の強さと柔らかさを兼備した音色、豊かな歌など、視野の広い成熟したヴァイオリニストの姿が浮かび上がる。もちろん瑞々しさや表現意欲も十分で、林絵里の練達のピアノとのアンサンブルも万全。プロコフィエフの妖しい抒情と力感、サン=サーンスの洒脱な歌心にフィナーレの興奮も素晴らしく、モーツァルトの均整と深き境地は心に残る。(林 昌英)ベートーヴェン生誕250年のメモリアルイヤーに、ピアノ界の重鎮・野平一郎が王子ホールで2回に分けて行った「ピアノ・トリオ全曲連続演奏会」(意外にもこの時まで“楽聖”の室内楽作品で唯一ピアノ・トリオだけ全曲演奏していなかったとか)のライブ録音・第1弾。共演は野平が芸術監督を務める静岡音楽館AOIの「ピアニストのためのアンサンブル講座」で講師としてもお馴染みの漆原啓子(ヴァイオリン)と向山佳絵子(チェロ)のふたり。今回は20代の頃に書き、記念すべき「作品1」を与えた第1番と第2番、「街の歌」の愛称で知られる「第4番」を収録。次回の「大公」も楽しみだ! (東端哲也)スケールが大きく、多彩な音色の変化で劇的な音楽を届けてくれるピアニストの小菅優。演奏はもちろん、創意に溢れたリサイタルやディスクのプログラミングも注目を集めている。特に2017年にスタートしたコンサート・シリーズ「Four Elements(四元素)」は彼女の哲学的なアイディアのもとに楽曲が集められており、本盤はその完結編。「大地」をテーマに、多岐にわたるプログラムで楽曲の本質を見るような深い演奏を聴かせてくれるが、特に最後に置かれたショパンの「ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調」では、あらゆる苦悩や葛藤の末に見えてきた希望を感じさせる演奏となっている。(長井進之介)高崎芸術劇場 大友直人Presents T-Shotシリーズ vol.5 戸澤采紀 IN CONCERTモーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ K.454/サン=サーンス:ヴァイオリン・ソナタ第1番/プロコフィエフ:ヴァイオリン・ソナタ第1番戸澤采紀(ヴァイオリン)林絵里(ピアノ)ベートーヴェン:ピアノ・トリオ全集・Ⅰ/野平一郎&漆原啓子&向山佳絵子オクタヴィア・レコードOVCX-00091 ¥3630(税込)(SACD+DVD)[初回限定盤]OVCL-00773 ¥3520(税込)[通常版]収録:2020年11月、王子ホール(ライブ)ナミ・レコードWWCC-7961 ¥2750(税込)プロコフィエフ(松下倫士編):バレエ音楽「ロメオとジュリエット」(ハイライト)/ラヴェル(浦壁信二編):ラ・ヴァルス/ハチャトゥリアン(竹島悟史編):バレエ音楽「ガイーヌ」より〈レズギンカ〉 他東京六人組【上野由恵(フルート) 荒絵理子(オーボエ) 金子平(クラリネット) 福士マリ子(ファゴット) 福川伸陽(ホルン) 三浦友理枝(ピアノ)】妙音舎MYCL-00012 ¥3520(税込)ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第1番、同第2番、同第4番「街の歌」野平一郎(ピアノ)漆原啓子(ヴァイオリン)向山佳絵子(チェロ)シューベルト:幻想曲 ハ長調「さすらい人」/ヤナーチェク:ソナタ「1905年10月1日街頭にて」/藤倉大:Akiko’s Diary/ショパン:ピアノ・ソナタ第3番小菅優(ピアノ)ORCHID CLASSICS/ナクソス・ジャパンNYCX-10267 ¥2750(税込)Dance/東京六人組Four Elements Vol.4:Earth/小菅優

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