ぶらあぼ2022年3月号
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第18回ショパン国際ピアノ・コンクール・ライヴ/ブルース・リウSACDCDCDCD92舘野泉は病で左手のピアニストとなってから、左手のレパートリーをライフワークとして委嘱・開拓してきた。そこに息子・ヤンネとのコラボで新たな彩が加わった。ジャズピアニストで作曲家の谷川賢作「スケッチ・オブ・ジャズ2」は、妖しげなテイスト、晴れやかな気分、スイングする身体など、5つの楽曲それぞれにジャズの持ち味を落とし込んだ。シンプルな2本の線の絡まりから歌心が溢れる。続いてピアソラの名旋律の数々がアレンジされ、2018年に亡くなった作曲家・歌手の西村英将(ひでゆき)の民謡の節回しを薫らせたどこか不思議で懐かしい旋律で閉じる。どの曲もわかりやすく、訴える力がある。(江藤光紀)名古屋フィルの奏者およびソリストとして活躍する林裕人のソロ・デビュー・アルバム。全体にテューバで無理をした感がまったくなく、温かく柔らかな音色によるナチュラルな音楽が続いていく。ヤコブセンやクーツィール等のテクニカルなナンバーでの鮮やかさと、ヴォーン・ウィリアムズ等での情感豊かな歌の双方を楽しめるし、「イタリア協奏曲」の軽快な動きや、「愛のあいさつ」(指揮者の川瀬賢太郎がピアノを担当)の優しい表現にも魅せられる。新居由佳梨のピアノもバランスの良い合わせ。独奏楽器としてのテューバの魅力に気づかされる、聴き応え十分の一枚だ。 (柴田克彦)フェルナンド・ソル(1778~1839)はスペイン出身、パリやロンドンで活躍したギターの名手。教育にも力を入れ、6つの練習曲集を発表した。その全曲録音に臨んだのは、1973年にデビュー、ドイツにも学んで、国際的な活躍を続けるギタリストの原善伸。ソルも認めた銘器ラコート(1828年製)を用い、やはり彼が推奨した、爪を使わない「指頭奏法」を実践。その音色は豊潤かつ繊細で、様々なギター奏法を体系的に学ぶための「練習曲」でありながら、彩り豊かで芸術的な芳香を放つ、これらの曲集の魅力を浮き彫りに。ソルと原、2人の先達への敬愛の込もった鈴木大介の解説も、一読の価値がある。(寺西 肇)配信の影響もあり、世界的に大きな注目を集めた2021年の第18回ショパン国際ピアノ・コンクール。個性豊かな出場者が多く、審査は非常に困難を極めた。その中で第1位を獲得したブルース・リウは、人を惹き付ける輝かしい音色、そして非常に鮮やかなタッチを持っている。それらが卓越した技巧と結びつくことで、楽曲の魅力を聴き手へとまっすぐに届けてくれるのだ。本盤はコンクールの演奏から、ファイナルのピアノ協奏曲第1番などを収録。ソナタやバラードなどでは彼の幅広い音楽性を存分に味わうことができ、協奏曲ではオーケストラとの見事な調和とスリリングなスピード感が圧巻だ。(長井進之介)谷川賢作:スケッチ・オブ・ジャズ2―ピアノ(左手)とヴァイオリンのために/ピアソラ:ブエノスアイレスの夏、悪魔のロマンス、鮫、タンティ・アンニ・プリマ、オブリビオン(以上啼鵬編)、オブリビオン(ベリ・クヤラ編)/西村英将:かもめ ヤンネ舘野(ヴァイオリン)舘野泉(ピアノ)ヘンデル(ヒルガース編):協奏曲 ト短調/ヤコブセン:テューバ・ブッフォ/ヴォーン・ウィリアムズ:イギリス民謡による6つの練習曲/J.S.バッハ:イタリア協奏曲第3楽章/クーツィール:コンチェルティーノ/エルガー:愛のあいさつ 他林裕人(テューバ)新居由佳梨 川瀬賢太郎(以上ピアノ)ソル:12の練習曲 op.6、同op.29、24の漸進的なレッスン op.31、24の課題曲 op.35、24の漸進的な小品 op.44、25のギター練習への入門 op.60原善伸(ギター)ショパン:バラード第2番、ロンド・ア・ラ・マズル、ピアノ・ソナタ第2番「葬送」、ピアノ協奏曲第1番ブルース・リウ(ピアノ)アンドレイ・ボレイコ(指揮)ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団オクタヴィア・レコードOVCL-00774 ¥3520(税込)妙音舎MYCL-00025 ¥3300(税込)コジマ録音ALCD-7272〜7275(4枚組) ¥4950(税込)収録:2021年10月、ワルシャワ(ライブ)Narodowy Instytut Fryderyka Chopina/東京エムプラスPNIFCCD 638 ¥3143(税込)タンティ・アンニ・プリマ/ヤンネ舘野&舘野泉ソル:ギターのための全練習曲/原善伸It would be fantastic/林裕人

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