ぶらあぼ2022年3月号
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3/20(日)①14:00 ②19:00 トッパンホール問 プロジェクトQ実行委員会(テレビマンユニオン内)03-6418-8617 http://www.tvumd.com4/10(日)14:00 東京文化会館(小)問 ムジカキアラ03-6431-8186 https://www.musicachiara.com2楽章、氷が溶けるように心を緩ませる第3楽章、童心のように喜び、怒り、夢見るような第4楽章からなっています。死を目前にした人間にしか見えない世界観を思わせる作品です。客席の皆さまは、心を自由に開放し、身を委ねるようにして、その音楽表現に浸っていただければ嬉しく思います」38Interview東 誠三(ピアノ)ラフマニノフとシューベルトのピアノ作品で味わうカンタービレ 4月に東京文化会館で開かれる東誠三のピアノ・リサイタルは、昨年4月からの“続編”と言える内容だ。ラフマニノフの13の前奏曲集 op.32(昨年は10の前奏曲 op.23)と、シューベルトは最後のソナタである第21番 D960(昨年は第20番)を組み合わせる。 「ラフマニノフとシューベルトは、一見関連性が薄いように思われるかもしれませんが、どちらも素晴らしい歌曲を残し、カンタービレの世界を重んじた作曲家です。ラフマニノフは、シューベルトの歌曲をピアノ用に編曲して愛奏し、尊敬を寄せていました。時代も国も違う2人ですが、並べて聴くと改めて感じられるものがあります。とりわけ私が思うのは、これらの前奏曲やソナタは、世代を超えて訴える力のある音楽だということです。どんなにテクノロジーが進化しても、血の通った人間なら誰もが持っている強い感情を喚起します」 ラフマニノフはすべての調を網羅する24曲の前奏曲を残した。 「その着想の根底にショパンの前奏曲集があります。簡潔な小品でありながら、濃密で多様な世界を表したショパンの作品は傑作です。ラフマニノフはそれを超える作品を目指したのだと思います。op.23よりもいっそう円熟した技法で書かれているop.32は13曲東亮汰らによるポローニア・クァルテットが第14番、それぞれ注目の挑戦となる。 夜は活動3年目ながら音楽祭等に出演を重ねるレグルス・クァルテットの第15番、活動9年目で単独公演も開催しているタレイア・クァルテットの「大フーガ」と、広く活躍中の2団体が登場。ヴァイオリン岸本萌乃加、林周雅らによって東京藝大在学中に結成された、ほのクァルテットの第16番が締めくくる。あります。明快で誰が聴いても感激するような美しいメロディの第5番、第12番以外は、あまり知られていないかもしれません。しかし、ロシアの広大な大地を吹き荒れる激しい風のような第1番、第6番、第8番、そうかと思えば穏やかに散歩をしているような第7番、茫漠としつつも言葉にならない喜びを表している第9番、一生分の深い悲しみと怒りを幾重にも重ねたような第10番、ロシア正教に基づく彼の傑作『徹夜祷』を彷彿とさせる重厚な和声の第13番など、ラフマニノフがその本心をさらけ出しているかのような作品集なのです。調の並びはランダムですが、最後の曲は、若き日に初めて書いた前奏曲の『鐘』へと循環していくような調関係にあります」 シューベルトのソナタ第21番もまた、各楽章が描き出す世界、精神性の振れ幅が大きい。 「極めて神秘的な第1楽章、時間感覚を失わせて生命の終焉を描くような第取材・文:飯田有抄©Ariga Terasawa文:林 昌英プロジェクトQ・第19章 〜若いクァルテット、ベートーヴェンに挑戦するベートーヴェン 後期弦楽四重奏曲 全曲演奏会①②清新な感性が紡ぐベートーヴェン後期の世界 弦楽四重奏ファン注目の「プロジェクトQ」が今年19回目を迎える。今回は同ジャンルの頂点にそびえたつベートーヴェンの後期6曲に、期待の若手奏者たちのクァルテットが1曲ずつ取り組む。各組がその成果を披露する「本公演」は、6団体の競演を体験できる機会としても貴重。 本公演は昼夜それぞれ3曲の2部構成で、昼は東京藝術大学3年生の俊才4人が集うアーテム・クァルテットの第12番で開始。東京音楽コンクール優勝の前田妃奈らによるクァルテット・リ・ナーダが第13番、日本音楽コンクール優勝の

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