ぶらあぼ2022年3月号
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第350回 定期演奏会 3/26 (土) 14:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 https://www.cityphil.jp3/14(月)19:00 東京文化会館(小)問 日本演奏連盟03-3539-5131 http://www.jfm.or.jp35ら、不思議なほどに聴く者の心を温かくする演奏を聴かせ続けてきた高関。本作でも同様に、恣意的な解釈や感情を押し付けることなく、緻密にオーケストラ芸術の粋を聴かせながら、最大限の感動を引き出すに違いない。 マーラー第9番といえば「死への恐怖」「生への執着」「告別」等のイメージがあるかもしれないが、いまの彼らの演奏ならば、それらをも包み込む「安息」そして「人生の喜び」にすら到達する、特別な境地が体験で永井和子言える。追悼公演が山田耕筰をはじめとする日本歌曲の代表的名曲で構成されたのは、故人の業績を振り返る機会としてじつにふさわしい。今後“21世紀のつう”の期待もかかる砂川涼子による、つうの名アリアも加わる。 出演は、ソプラノの砂川涼子、古瀬ま砂川涼子 ©Yoshinobu Fukayaきを、小林実佐子、メゾソプラノの永井和子、カウンターテナーの彌勒忠史、テノールの福井敬、中鉢聡、バリトンの大島幾雄、須藤慎吾、ピアノの森裕子、寺嶋陸也。幕開けには伊藤から後任を託された現日本演奏連盟理事長・堤剛のチェロ演奏も(ピアノ:野平一郎)。高関 健 ©K.Miuraきそうな予感がある。いずれにせよ、この困難期に実現する“高関のマラ9”、今年の最重要公演のひとつになるものと確信している。文:林 昌英文:宮本 明高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団ついに実現する“マラ9”の深き境地 高関健が東京シティ・フィル常任指揮者に就任したのは2015年。7年目のシーズンの最終月となる3月、ティアラこうとう定期でブラームス第1番、東京オペラシティの定期演奏会でマーラー第9番、高関が定期では取り上げてこなかった名作交響曲2作に、満を持して挑む。特に第350回という節目のマーラーは、これまでの集大成となる。 以前は定番演目だったマーラーの交響曲だが、20年3月からの2年間、東京のプロ楽団による演奏が実現したのは11曲中の半分ほど。ひときわ複雑なテクスチュアをもち、編成も規模も大きめなためか、第9番の実演は未だに実現されていなかった。2年の時を経て、いよいよ“マラ9”の世界に浸れるのである。 しかも高関と東京シティ・フィルの演奏で聴けるということに、なにより深い喜びを覚える。どんな複雑な楽曲でも見事なバトンテクニックで統率しなが伊藤京子追悼演奏会 “つう”の愛した日本歌曲戦後日本の音楽界で功績を残した名ソプラノを偲んで 昨年7月に94歳で静かに生涯を閉じた日本声楽界のレジェンド伊藤京子。戦後を代表するソプラノの追悼演奏会が、門下の永井和子らが出演して行われる。主催は日本演奏連盟。伊藤は1996年から2015年まで同連盟の3代目理事長を務め、音楽界の発展を先導した。 1949年、日本音楽コンクール第1位。1951年に《トゥーランドット》日本初演のリューでオペラの主要役デビューを飾った。最大の当たり役が、今回の公演タイトルにもなっている團伊玖磨の歌劇《夕鶴》(1952)の「つう」。1960年の初役以来25年にわたり演じ続け、この役の一つの完成形を作り上げた。 一方で日本歌曲にも精力的に取り組んだ。自然で聴きやすい日本語のディクションを活かしつつ、詞の表現にけっして過度に寄りかからない。旋律と言葉の絶妙なバランスで、現代的な日本歌曲のあり方をいち早く示したと

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