ぶらあぼ2022年3月号
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第130回 定期演奏会 4/22(金)19:00、4/23(土)14:00 紀尾井ホール問 紀尾井ホールウェブチケット webticket@kioi-hall.or.jp https://kioihall.jp3/23(水)19:00 トッパンホール問 トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 https://www.toppanhall.com32後年ウィーンで交響曲として編み直したものだ。広い音程の跳躍で始まる堂々とした第1楽章をはじめ、耳をそばだててしまう美しい旋律にあふれている。 最後を飾るのは晩年の三大交響曲から第39番。古典派交響曲の完成形ともいうべき貫禄の大曲だ。ピノックはこの曲をKCOと2012年にも取り上げており、10年の歳月を経てどのように深化するか興味深い。 ザルツブルク、マンハイム、パリ、そしてウィーン。モーツァルトが各地を旅する中から生まれたこれらの交響曲 この春、トッパンホールでの初リサイタルは、メンデルスゾーンとシューマン、武満徹、ショスタコーヴィチという大きな振れ幅の選曲で、2作のソナタを両端に据えつつ、19世紀と20世紀の音楽を対峙させる。ピアニストは、作曲家としても多彩に活躍する加藤昌則。多様なスタイルへの知見を望んでのものだろう。 現在もベルリン芸術大学、イェンス=ペーター・マインツのもとで研鑽を積むが、現代曲だけでなく、とくに古典派やロマン派初期での優美な軽やかさに学ぶところが多いと言う。ドイツと20世紀は師の出自でもあるが、新時代の佐藤晴真が選りぬきの名作にどのような展望をもたらすのか楽しみだ。には、18世紀の国際感覚が息づいている。KCOがホーネックを通じて音楽の“ウィーン訛り”を身に着けたとすれば、ピノックはそこに時代の奥行きを付け加えてくれるだろう。トレヴァー・ピノック ©三好英輔文:江藤光紀文:青澤隆明©ヒダキトモコトレヴァー・ピノック(指揮) 紀尾井ホール室内管弦楽団 第3代首席指揮者就任記念コンサート古楽界の巨匠と築く新時代はオール・モーツァルトで幕開け 紀尾井ホール室内管弦楽団(KCO)が、新時代を迎える。楽団の気風を作った尾高忠明、そこにウィーンの香りを吹き込んだライナー・ホーネックからバトンを受け継ぎ、新しい船出を先導する第3代首席指揮者は、古楽演奏の第一人者トレヴァー・ピノック。新しい航路を果敢に切り開いてくれる頼もしい船長だ。 就任披露となる4月の定期は3つの交響曲を並べたオール・モーツァルト・プログラム。まずは、ウィーンと並び一大音楽都市だったパリの名門オーケストラの依頼で書かれた第31番「パリ」。マンハイムで流行した新しいスタイルやパリのギャラント様式を取り入れた当時としては大編成の交響曲だ。短いながらも、華やぎに満ちた内容を持つ。 続いて第35番「ハフナー」。こちらは出身地であるザルツブルクの貴族の依頼で書かれたセレナードを元に、佐藤晴真(チェロ)挑戦を続ける若きチェリスト、“弦のトッパン”での待望のリサイタル 賢くて繊細な人、というのが、佐藤晴真のチェロからまず感じることだ。よく作品の内実を考えて、イメージを明確に見据えること、それを表現する精細な技術を磨いていること。いちど話したときにも、演奏と響き合うものを覚えた。挑戦するチェリストでありたい、という思いが若い彼にはまずあって、今後もさまざまな時代や国の作品に取り組んでいきたいと語っていた。 2018年にルトスワフスキ国際チェロ・コンクールで優勝、19年のミュンヘン国際音楽コンクールのチェロ部門では日本人として初めて優勝して国際的な注目を集めた。ブラームスのソナタとリートによる『The Senses』、ドビュッシーとフランクをあわせた『SOUVENIR』と、趣を違えた2作のCDでも柔軟な感性を示している。共演ピアニストに関しても、作品の像に沿って、さまざまな個性に触れながら、毎回の探求を進めているようだ。

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