ぶらあぼ2022年3月号
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28C × Baroque シー・バイ・バロック大塚直哉が誘うバロックの世界 Vol.1 バロックの生まれた時〜オペラの誕生3/26(土)15:00 神奈川県民ホール(小)問 チケットかながわ0570-015-415 https://www.kanagawa-arts.or.jp/tc/Interview大塚直哉(チェンバロ)オペラの発展とともに花開いたバロック150年の諸相をたどる 演奏はもちろん、トークや企画性豊かなコンサートで評価の高い鍵盤奏者が、新たに開始するシリーズ。それが神奈川県民ホールの「C × Baroque(シー・バイ・バロック)大塚直哉が誘うバロックの世界」だ。毎回異なるテーマを設け、チェンバロという楽器をナビゲーターとして、ゲストの演奏も楽しみながら約150年にわたるバロック音楽の世界を探訪してゆく。第1回のテーマは「バロックの生まれた時~オペラの誕生」。 「バロックの草創期は、オペラに代表される、新しいものを生み出そうという気概のある人々の時代でした。それを知ってもらうために、カッチーニの歌曲やモンテヴェルディのオペラの二重唱などを最初に演奏します。この時代の音楽は、とにかく〈歌〉へのこだわりで始まり、それが発展したんです。舞台では照明や衣裳、演技も工夫してオペラの場面のように構成します」 ゲストには鈴木美登里と中山美紀という華やかなバロックのスペシャリストが登場する。 プログラム後半は、大塚が「バロック屈指の劇場人」と呼ぶヘンデルの傑作オペラ《エジプトのジュリオ・チェーザレ》等で〈歌〉をつづる。 「作曲者が『歌うように弾け』と指示したフレスコバルディの『トッカータ』や、ヘンデルが劇場公演の幕間にオルガンを弾いたように、僕がチェンバロ独奏で『シャコンヌ』を披露します」 バロックの〈歌〉と〈劇場〉が全編に展開する大塚ワールドだ。 さらに特筆すべきは笙の宮田まゆみとの現代曲のコラボレーションもあること。 「一柳慧さんが1998年に発表した『ミラージュ』です。チェンバロと笙、異なる二つのものの対比と融合から成立するバロックの精神と共通するかもしれないし、あの時代はアイディア勝負的な要素もあって『こんな組合せもアリなの?』という点もバロック的ですよ(笑)」 コンテンポラリー作品ともクロスする本シリーズならではの面白さと言えよう。 大塚はこれまで神奈川県民ホールでチェンバロの魅力についての講座を8年間にわたり続けてきたが、このシリーズは、初心者のみならず、本格的バロック・コンサート愛好者にも満足し宮田まゆみ新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、公演やイベントの延期・中止が相次いでおります。掲載している公演の最新情報は、それぞれの主催者のホームページなどでご確認ください。取材・文:朝岡 聡てもらえる内容にしたいと言う。 「この会場は約400席で客席と遠すぎず近すぎずという親密さが最高。今後のシリーズではバッハの平均律やバロックダンス、協奏曲も予定しています。複数の視点と対比というバロックの精神が毎回繋がっていきますよ」 多彩な知と刺激に満ちた空間。横浜の春が待ち遠しい。大塚直哉 ©T.Kaneiwa中山美紀 ©Kohán István鈴木美登里

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