ぶらあぼ2022年3月号
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6月の見もの・聴きもの■■■■■■ 最初に修正を一つ。先月号の本欄でウィーンで開催される「ムジークフェライン・フェスティバル:A!」の「A」の意味について、「ドイツ語の「Auftakt」(幕開き、序曲というような意味)をもじっているようだ」と記述したが、これは筆者の読み違えで、「オーケストラのチューニング音でもある「A」の音から調性に関わる発想を様々に広げるコンセプト」というのが本来の趣旨であった(趣旨全文はホームページに記述されている)。お詫びして訂正したい。 さて、その「ムジークフェライン・フェスティバル:A!」。ラトルがヨーロッパ室内管を指揮してマーラー「大地の歌」の室内オーケストラ版を演奏するのが面白い。なお、この演目は、ルクセンブルクのフィルハーモニー(1日)、ケルンのフィルハーモニー(3日)、ハンブルクのエルプフィルハーモニー(7日)でも演奏される。その他の音楽祭として、まずは「ザルツブルク聖霊降臨祭音楽祭」。バルトリ出演のロッシーニ「セビリアの理髪師」はもちろん、古楽系のラルペッジャータ(プルハー指揮)やサヴァール指揮の演奏会など短期間(4日間)だが充実した内容。「ライプツィヒ・バッハ音楽祭」は、複数会場で11日間に147ものバッハ関連公演が行われる文字通り街がバッハ一色と化す音楽祭。ガーディナー、ルセ、コー106ムジークフェライン・フェスティバル:A!(5月7日-6月17日)[会場:ムジークフェライン大ホール(ウィーン)](6月分/他会場の公演は省略)6月2(19:30)日 M.オルソップ指揮ウィーン放送響 J.アダムズ:ローラ・モンテスがスパイダー・ダンスを踊る、B.A.ツィンマーマン:静寂と反転、G.F.ハースの「新作」(世界初演)、J.アダムズ:シティー・ノワール◎6月5(19:30)日 S.ラトル指揮ヨーロッパ室内管 R.シュトラウス:メタモルフォーゼン(変容)、マーラー:大地の歌(G.コルテーゼ編曲による室内オーケストラ版) 独/M.コジェナーS、A.ステープルズT◎6月12(19:30)、14(19:30)日 A.シフp バッハ:平均律クラヴィーア曲集〜第1巻(12日)/第2巻(14日)◎6月15(19:30)、17(19:30)日 L.ヴィオッティ指揮ウィーン響 スクリャービン:プロメテ-火の詩、ラヴェル:ダフニスとクロエ独/J=Y.ティボーデpウィーン国立歌劇場6月2日 ベッリーニ:清教徒 指/F.ランツィロッタ、演出/J.デュー、出/R.タリアヴィーニ、J.オズボーン、I.ゴロヴァテンコ◎6月3、6、8、10、15日 モーツァルト:ドン・ジョヴァンニ[21年12月プレミエ] 指/P.ジョルダン、演出/B.コスキー、出/K.ケテルセン、A.アンガー、H=E.ミュラー、S.ドゥ・バルベイラク、K.リンゼー6月4、7、9、12日 ロッシーニ:セビリアの理髪師[21年9月プレミエ] 指/S.モンタナーリ、演出/H.フリッチュ、出/J.D.フローレス、P.ボルドーニャ、C.モリナーリ★◎6月11、13、16、18日 モンテヴェルディ:オルフェオ[プレミエ] 指/P.エラス=カサド、演出/T.モリス、出/K.リンジー、G.ニグル、S.ザメチュニコヴァ、C.ボック6月14、17、21、24日 ヴェルディ:ファルスタッフ指/G.ビサンティ、演出/M.A.マレッリ、出/G.フィンリー、B.ピンハソヴィチ、F.アントゥン、E.ブラット6月19、22、25日 モーツァルト:魔笛 指/I.ボルトン、演出/M.ライザー、P.コリエ、出/A.イェルクニカ、S.ピルギュ◎6月20、23、27、30日 R.シュトラウス:カプリッチョ 指/P.ジョルダン、演出/M.A.マレッリ、出/M.ベングトソン、A.エレート、D.ベーレ、A.シュエン★◎6月28日 ロッシーニ:チェネレントラ(セミ・ステージ形式)[プレミエ] 指/G.カプアーノ、演出/C.ブラーシュ、出/C.バルトリ、E.ロチャ、N.アライモ、演奏/レ・ミュジシャン・デュ・プランス-モナコウィーン・フォルクスオーパー6月1(19:00)、5(19:00)日 J.ハーマン:ラ・カージュ・オ・フォール(ミュージカル)[22年3月プレミエ] 演出/M.キング◎6月3(19:00)、7(19:00)、11(19:00)、17(19:00)、22(19:00)、25(19:00)日 スッペ:地上の悪魔 演出/H.ホルストコッテ6月6(19:00)、8(19:00)、16(19:00)、19(19:00)、27(11:00)日 C.コロノヴィツ:ヴィヴァルディ-第5の季節 演出/R.マイヤー6月10(19:00)、13(19:00)、18(18:00)、28(11:00)日 C.コロノヴィツ:アントニアと鬼演出/R.マイヤー6月12(18:00)、15(19:00)、20(19:00)、23(19:00)、26(18:00)、29(19:00)日 プッチーニ:トゥーランドット 演出/R.ドゥセ6月30(19:00)日 J.シュトラウスⅡ:こうもり校訂演出/H.ツェドニクウィーン・フィル[会場:無印=ムジークフェライン(ウィーン)、(KH)=コンツェルトハウス(ウィーン)、(PRG)=プマン、クリスティらの指揮やシフ、トリフォノフのピアノといった有名アーティストの出演もあれば、教会でのオルガン・リサイタル、合唱コンサートなど実に多彩な内容となっている。フランケン・ワインでも有名なドイツ・バイエルン州のウンターフランケン地区にあるバート・キッシンゲンとヴュルツブルクには、それぞれ「キッシンゲンの夏音楽祭」と「モーツァルトフェスト(ヴュルツブルク)」という魅力的な音楽祭がある。前者にはドイツ国内のメジャー・オーケストラが次々と客演するし、後者にはアンサンブル・ムジークファブリク(現代音楽系)、アンサンブル・レゾナンツ(ユンゲ・ドイチェ・フィルのメンバーにより結成)、ベルリン・ラウテン・カンパニー(ピリオド系)といったユニークな活動を行う団体が興味深い演目で登場する。 もちろん6月といえば「ミュンヘン・オペラ・フェスティバル」。今年は2年前に亡くなったペンデレツキの「ルダンの悪魔」という意欲的な演目が予定されている。ちなみに毎年恒例の「ドレスデン音楽祭」や「ラインガウ音楽祭」、「フィレンツェ五月音楽祭」は、恐縮ながら、次号にて全体スケジュールを詳述することとしたい。本号では「フィレンツェ五月音楽祭」の6月分のオペラ公演のみ掲載する。6月はドミンゴが登場する。 通常公演のオペラでは、ウィーン国立歌劇場のモンテヴェルディ「オルフェオ」(エラス=カサド指揮)、バルトリ主演のロッシーニ「チェネレントラ」、ベルリン州立歌劇場のプッチーニ「トゥーランドット」(メータ指揮)、ライプツィヒ歌劇場の「ワーグナー・フェストターゲ」、ミラノ・スカラ座のポンキエッリ「ラ・ジョコンダ」、パリ・オペラ座のラモー「プラテー」(ミンコフスキ指揮)、グノー「ファウスト」(ヘンゲルブロック指揮)、スポンティーニ「ヴェスタの巫女」(シャンゼリゼ劇場)、ボルドー国立歌劇場のモーツァルト「ダ・ポンテ三部作」(ミンコフスキ指揮)、フランドル歌劇場のシューマン「ファウスト」(ヘレヴェッヘ指揮)など、どれも要注目。オーケストラでは、ペトレンコ=ベルリン・フィルのツェムリンスキー「抒情交響曲」、ヴィオッティ指揮ウィーン響、オロスコ=エストラーダ指揮のコロンビア・ユース・フィル(ウィーンやケルンで公演)、ヤーコプス指揮フライブルク・バロック・オーケストラのヘンデル「エジプトのイスラエル人」、ロト指揮のケルン・ギュルツェニヒ管やレ・シエクルなどが面白い。ややダークホース的には、シュレキーテ指揮フランクフルト・オーパー&ムゼウム管も要注目。 (曽雌裕一・そしひろかず)(コメントできなかった注目公演も多いので本文の◎印をご参照下さい)【本文中の記号】★=プレミエ[新演出]公演、◎=注目公演スメタナ・ホール[市民会館](プラハ)、(DRS)=クルトゥアパラスト(ドレスデン)、(BER)=フィルハーモニー(ベルリン)、(HAM)=エルプフィルハーモニー(ハンブルク)、(KOL)=フィルハーモニー(ケルン)、(LUX)=フィルハーモニー(ルクセンブルク)、(BRU)=パレ・デ・ボザール(ブリュッセル)、(PAR)=シャンゼリゼ劇場(パリ)]◎6月3(20:00)(PRG)、4(19:30)(DRS)、5(20:00)(BER)、6(19:30)(HAM)、8(20:00)(KOL)、9(20:00)(LUX)、10(20:00)(BRU)、11(20:00)(PAR)日 A.ネルソンス指揮 グバイドゥーリナ:おとぎ話の詩、ショスタコーヴィチ:交響曲第9番、ドヴォルザーク:交響曲第6番(→ 3日は「プラハの春国際音楽祭」、4日は「ドレスデン音楽祭」も参照)◎6月18(15:30)、19(11:00)、21(19:30)(KH)、22(19:30)日 A.ネルソンス指揮 M.ヴァインベルク:トランペット協奏曲、ショスタコーヴィチ:交響曲第9番、ドヴォルザーク:交響曲第6番 独/H.ハーデンベルガーtpウィーン響[会場:(KH)=コンツェルトハウス(ウィーン)、(MV)=ムジークフェライン(ウィーン)](主要公演のみ)◎6月10(19:00)(KH)日 L.ヴィオッティ指揮ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第4番、プロコフィエフ:交響曲第5番 独/ユジャ・ワンp◎6月11(19:30)(KH)日 L.ヴィオッティ指揮ショスタコーヴィチ:祝典序曲、A.ドルマン:フローズン・イン・タイム(打楽器協奏曲)、グリンカ:ルスランとリュドミラ〜序曲、ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第4番 独/ユジャ・ワンp、M.グルービンガーpc◎6月12(19:00)(KH)日 L.ヴィオッティ指揮ショスタコーヴィチ:祝典序曲、A.ドルマン:フローズン・イン・タイム(打楽器協奏曲)、プロコフィエフ:交響曲第5番 独/M.グルービンガーpc、司会/B.レット◎6月15(19:30)(MV)、17(19:30)(MV)、18(19:30)(MV)日 L.ヴィオッティ指揮 〔Ⅰ〕オーストリア曽雌裕一 編2022年6月の

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