eぶらあぼ 2022.1月号
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58アンサンブル・ノマド 第74回定期演奏会 中心無き世界Vol.3 ~人びとの跫あしおと~世界各地の豊かな音のダイバーシティに耳をすます文:藤原 聡1/30(日)14:00 東京オペラシティ リサイタルホール問 キーノート0422-44-1165 https://www.ensemble-nomad.com 毎回挑戦的なプログラミングでファンを唸らせる佐藤紀雄&アンサンブル・ノマドだが、来る1月30日に開催される第74回定期演奏会もまたその例に漏れない。 ここでその作品が取り上げられる7名の作曲家―ジャック・ボディ、福士則夫、ヨルダン・マルコフ、佐原詩音、モニカ・ソカイテ、へベルト・バスケス、ミレナ・ドリノヴァ―のうち、平均的なリスナーがかろうじてその名を知っているのは日本の二人くらいではないか。これは本コンサートのタイトル「中心無き世界」とリンクしていよう。ここでの「中心」とは、独・伊・仏といった国々のアカデミックに体系化されたいわゆる「クラシック音楽」を指すだろう。これにある種の規範を求めつつもローカリティをその作品に持ち込み、抽象化された絶対音楽ではなくより民族的な土臭さを融合させたフュージョンとしてのクラシックをゆるやかに目指した作曲家たちであるが故に、その固有名詞は中心化せず拡散する。「今回の定期では世界各地で暮らす人々の日常の跫に耳をかたむけるプログラムをつくってみた」と佐藤は述べる。 今回、世界初演曲が3曲含まれるが、他の曲たちも大半の人は会場で初めて耳にすることと思う。リラックスしてそれらを虚心坦懐に楽しむのが吉だろうし、恐らくはそれが可能となる空気が醸成されるであろう。佐藤とアンサンブル・ノマドのコンサートでは自ずと複眼的思考が鍛えられ、そして感覚的な快楽も得る。©Maki Takagiマリコとオペラ! ~作家 林真理子のトーク・コンサート旬の歌い手たちとともにオペラの魅力をじっくりと解き明かす文:室田尚子1/29(土)14:00 サラマンカホール問 サラマンカホールチケットセンター058-277-1110 https://salamanca.gifu-fureai.jp “オペラ通”として知られ、脚本も手掛けている作家の林真理子が、その魅力を届ける「マリコとオペラ!」。すでに全国各地で好評を博しているこの企画が、2022年1月、岐阜のサラマンカホールで開催されることになった。 第1部は林が「本とオペラのある人生」というテーマで語るトーク・ステージ。人気作家の生の声を聞ける貴重なチャンスだ。第2部のコンサート・ステージは林がセレクトしたオペラ・アリアの名曲をソプラノ・小林沙羅、テノール・西村悟が河野紘子のピアノとともに歌い上げる。第3部はクロストークで歌手たちとの対話が繰り広げられ、第4部プレゼント・ステージでは出演者からお客様へプレゼント曲が贈られるという趣向。 ナビゲーターは、同ホール音楽監督で文化芸術プロデューサーの浦久俊彦。プログラムのメインはプッチーニの歌劇からのナンバー。《ジャンニ・スキッキ》より〈わたしのお父さん〉、《トスカ》より〈星は光りぬ〉、《ラ・ボエーム》より〈愛らしい乙女よ〉、《トゥーランドット》より〈誰も寝てはならぬ〉など、お馴染みのアリアや二重唱をたっぷりと味わえる。第4部でどんな歌のプレゼントが飛び出すのかも楽しみ。トークと歌でオペラの魅力を存分に味わえる贅沢な時間となること間違いなし! お近くの方はぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。小林沙羅 ©NIPPON COLUMBIA西村 悟 ©T. Tairadate河野紘子浦久俊彦 ©新津保健秀林 真理子

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