50トッパンホール ニューイヤーコンサート 2022世界が注目するチェリストと日本の名手たちで聴かせる粋な演目文:江藤光紀1/25(火)19:00 トッパンホール問 トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 https://www.toppanhall.com トッパンホールの公演ラインナップからは、独自の企画力を持ったプロデューサーの「こうしたら絶対面白いはず」という思いが伝わってくる。2022年も、トッパンでしか聴けない一風変わったニューイヤーコンサートで同ホールの幕は開ける。 前半は若きチェリスト、ズラトミール・ファンの無伴奏。世界の名だたるコンクールを総なめにし、19年には史上最年少でチャイコフスキー国際コンクールを制覇した大型新人だ。豊かで奥深い音色、鮮やかなテクニック、作品に対する確かな洞察…どれもが高い水準に達しており、いよいよ世界の檜舞台での活躍が始まるというタイミング。これからが旬の時期の初物を届けたいというホールの意気が感じられる。 曲目は、デンマークのハンス・アブラハムセン、フィンランドのエサ=ペッカ・サロネンと北欧の現代作曲家の2曲の間にバッハの無伴奏チェロ組曲第2番を入れ、文楽にインスピレーションを受けた黛敏郎作品で閉じる。構成も粋だ。 後半、シューベルトの弦楽五重奏曲も絶妙な選曲だ。チェロが2本入って低音域を増強した大作だが、ファンとともにチェロを弾くのは笹沼樹。カルテット・アマービレをはじめ、アンサンブルやソロに引っ張りだこの若手で、こちらもこれからが旬。 ヴァイオリンの日下紗矢子はベルリン・コンツェルトハウス管と読響、日独2つのオケのコンサートマスターを務める。笹沼と同じくカルテット・アマービレの北田千尋は、この曲もセカンドで日下を支える。読響首席ヴィオラの柳瀬省太も当代きっての名手。トッパンホールゆかりの実力者たちだ。左より:ズラトミール・ファン ©I-Jung Huang/笹沼 樹 ©Taira Tairadate/日下紗矢子 ©Akira Muto/北田千尋/柳瀬省太エンリコ・オノフリ(指揮、バロック・ヴァイオリン)バロックの鬼才が新アルバムをリリース、コンセプトは“自然との共生”文:笹田和人 バロック・ヴァイオリンの名手として知られ、2002年からは指揮者としても活動、その快演で聴衆を魅了し続ける鬼才エンリコ・オノフリ。自身が主宰する「イマジナリウム・アンサンブル」を弾き振りしての、ヴィヴァルディ「四季」を含む話題の新アルバム『INTO NATURE ー自然の中へ ヴィヴァルディ「四季」(全曲)と母なる大地の様々な音色たち』(Anchor Records)が、間もなくリリースされる。 イタリア北部ラヴェンナ出身。1987年から20年以上にわたり、アンサンブル「イル・ジャルディーノ・アルモニコ」のコンサートマスターを務め、斬新な解釈による「四季」の録音で、同作品の“第二次ブーム”とされるほどの旋風を巻き起こした。一方の「イマジナリウム・アンサンブル」は、2006年設立。第一線で活躍中のイタリア古楽界の名手たちで構成される。 「何年も前に、都会の生活を捨て、自然とともに生きる道を選んだ」というオノフリ。新譜では、28年ぶりの再録音となる「四季」をはじめ、ウッチェッリーニやパシーノらイタリア初期~中期バロックの作曲家の作品から、特に人間と自然との関わり合いが、つぶさに感じ取れる佳品を厳選した。なかでも「四季」は、自在なインプロヴィゼーションを披露するが、恣意的なところはまったく無く、水が高い場所から低地へと流れゆくかのような自然な美しさを感じさせる。これもアルバムがDXD 352.8kHz 24bitで収録されたハイクオリティの音質ゆえだろう。オノフリ曰く、「求められるのは、表面的な自己表現を捨て、音楽の僕となること」。 常に古楽界をリードしてきたオノフリの動向から今後も目が離せない。Photo:Paolo PerroneCD『INTO NATURE ー自然の中へ ヴィヴァルディ「四季」(全曲)と母なる大地の様々な音色たち』Anchor RecordsUZCL-2226 ¥3000(税込) 1/26(水)発売
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