30 2022年の東京・春・音楽祭の概要が発表された。3月18日から4月19日にかけて、オペラから室内楽まで大小さまざまな規模の注目公演がずらりと並ぶ。コロナ禍以来、大規模な音楽祭には厳しい状況が続いてきたが、22年は復活の年となることを期待したい。 恒例の「東京春祭ワーグナー・シリーズ」は、マレク・ヤノフスキの指揮で《ローエングリン》(演奏会形式)が上演される(3/30, 4/2)。ローエングリン役はフランクフルト歌劇場をはじめドイツ各地の劇場で活躍するヴィンセント・ヴォルフシュタイナー。エルザ役はノルウェー出身でウィーンやドレスデンなど欧州各地で活動の場を広げるマリータ・ソルベルグ。オーケストラはNHK交響楽団、合唱は東京オペラシンガーズ。名匠ヤノフスキの厳格な指揮のもと、ワーグナーの神髄を体験させてくれることだろう。 もうひとつのオペラ企画、「東京春祭プッチーニ・シリーズ」では《トゥーランドット》(演奏会形式)が上演される(4/15, 4/17)。トゥーランドット役のリカルダ・メルベート、カラフ役のステファノ・ラ・コッラら実力者がそろう。リッカルド・ムーティのアシスタントも経験したピエール・ジョルジョ・モランディが読売日本交響楽団を指揮。プッチーニの絢爛たるオーケストレーションを味わいたい。 リッカルド・ムーティは東京春祭オーケストラによるオープニング公演に登場する(3/18, 3/19)。ムーティがこのオーケストラとマジックを起こす場面はこれまでに何度も目にしてきた。いったいどんなプログラムが用意されるのか、期待が高まる。 「東京春祭 合唱の芸術シリーズ」では、アレクサンダー・ソディ指揮東京都交響楽団、東京オペラシンガーズ他によりマーラーの交響曲第3番が演奏される(4/10)。コロナ禍の間、大規模な合唱作品や大編成のオーケストラ作品を聴く機会は非常に限られていた。マーラーの交響曲第3番のような大作を渇望していた方も多いことだろう。そして都響といえばマーラーを得意とするオーケストラ。マンハイム国立劇場音楽監督を務めるソディとの相性はいかに。 シリーズ企画「ベンジャミン・ブリテンの世界」では、2020年に上演が予定されながら中止となってしまった歌劇《ノアの洪水》(演奏会形式)が復活を果たす(4/1)。教会で子どもたちを中心に上演できるように書かれた作品だ。加藤昌則指揮BRTアンサンブル、NHK東京児童合唱団の出演、ノア役を宮本益光、ノアの妻を波多野睦美が歌う。 来日アーティストに大勢の名前が並ぶ光景も久しぶりだ。名バスバリトンのブリン・ターフェルは、東京交響楽団との共演で「Opera Night」(4/19)と題した公演と、「東京春祭 歌曲シリーズ」(4/16)に出演する。ピアニストではセルゲイ・ババヤン(3/29)、アレクサンドル・メルニコフ(4/7, 4/9)、アンドレアス・シュタイアー(4/9, 4/12)、デジュー・ラーンキ(4/13)がリサイタルを開く。人気の「ベルリン・フィルのメンバーによる室内楽」(3/19)では、樫本大進らによるピアノ四重奏が組まれる。 ミュージアム・コンサートや「子どものためのワーグナー《ローエングリン》」(3/25〜3/27, 4/2, 4/3)など、音楽祭名物企画も健在。百花繚乱のプログラムを眺めつつ、春の到来を待ち望みたい。東京・春・音楽祭 2022 ラインナップ発表東京・春・音楽祭 2022 3/18(金)~4/19(火)東京文化会館、東京藝術大学奏楽堂(大学構内)、旧東京音楽学校奏楽堂、上野公園内博物館・美術館 他問 東京・春・音楽祭実行委員会03-5205-6497https://www.tokyo-harusai.com※各公演、発売日などの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。国内外のアーティストたちによる百花繚乱のプログラム文:飯尾洋一左より:リッカルド・ムーティ指揮 東京春祭オーケストラ(2021年) ©青柳 聡/リッカルド・ムーティ ©Todd Rosenberg by courtesy of riccardomutimusic.com/マレク・ヤノフスキ ©Felix Broede/ピエール・ジョルジョ・モランディ
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