26── コンクールの3週間を経て、ショパンについての感情は変わりましたか? 変わらないですかね。感情が変わったというよりは、この場所で弾きながら、その瞬間にショパンの気持ちを感じようと努力してきたという感じ。 例えば、特に「24のプレリュード」はショパンのコロコロ変わっていく心情を感じながら、瞬間的に感情を変えていくことをすごく意識しました。そこに自分の感情を照らし合わせるというよりは、ただ、ショパンの感情を考えて弾いていったという感じです。あの時代のポーランドの厳しい状況を思えば、どんな曲にも痛みや苦しみ、そして希望が入っていたと思うので。 例えば軽い雰囲気の曲には憧れや恋心が込められているかもしれないけれど、その奥底には、当時のポーランドの状況を反映したものがあったはずです。どの曲からも、彼のポーランド人としてのアイデンティティを証明したいという気持ちを感じるので、それを自分なりに感じ取ろうとしていました。── 音楽家として、これからどういう人でありたいですか? 音楽を感じてもらえるピアニストになりたいです。たとえば、ルプーとか、フレイレ、ピリスみたいな。華やかな演奏で客席を沸かせることができるピアニストもすごいけれど、私が目指しているのはどちらかというと、そうではないタイプのピアニストです。── そうやって近づいていこうと長い時間をかけて練習、準備をしてきたと思いますが、ここまでの道のりを振り返ってみるといかがですか? 2回目の挑戦だから、4位に入賞できてよかったなと思っています。でも、ステージが進むにつれて自分の個性が出過ぎてしまったかなと思うところもあって……前回もそうだったんですけれど(笑)。でも、それを抑えたり、自分がやりたい音楽をそぎ落として演奏しても、後で後悔すると思うから、その時弾きたい音楽を弾けてよかったなって思います。抑えて演奏してもっといい結果が出ていたら、それで良かったと思ったのかもしれないけど(笑)。 コンクールに出ているけれど、最終的にはそんなことはどうでもよくなってくるものですね。◎小林愛実(日本)Aimi Kobayashi © Haruka Kosakaいますぐアクセス!いますぐアクセス!ぶらあぼONLINEの好評連載シリーズぶらあぼONLINEの好評連載シリーズショパン国際ピアノコンクール特集をもっと読みたい方はこちらからhttps://ebravo.jp★海の向こうの音楽家★海の向こうの音楽家 海外を拠点に活躍する日本人アーティストたちが自ら日々の生活や現地の様子を写真入りでレポート★オーケストラの楽屋から★オーケストラの楽屋から N響ゲスト・コンサートマスター白井圭さんとオーケストラのメンバーのリアルな声が満載の楽しいトーク★古楽とその先と★古楽とその先と うどん県出身ベルギー在住のフラウト・トラヴェルソ奏者、柴田俊幸さんがピリオド楽器のスペシャリ ストたちと古楽の魅力を語り尽くす
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