102SACDCDCDJ.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲/小林道夫フランシス・プーランク:ピアノ作品集 Vol.1/鈴村真貴子フレッシービレ/伊藤万桜RAVEL&FALLA/神谷悠生J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲、コラール「いざ来ませ、異邦人の救い主よ」小林道夫(チェンバロ)プーランク:3つの常動曲、「6人組のアルバム」より〈ワルツ〉、2つのノヴェレット、ナポリ―ピアノのための組曲―、プレスト 変ロ長調、ユモレスク、バディナージュ、フランス組曲―クロード・ジェルヴェーズ(16世紀)による―、村人たち―子どものための小品集―、間奏曲 変イ長調、15の即興曲鈴村真貴子(ピアノ)R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調/グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ第3番/ラフマニノフ:ヴォカリーズ/マスネ:タイスの瞑想曲伊藤万桜(ヴァイオリン)山㟢早登美(ピアノ)ラヴェル:前奏曲、ソナチネ、亡き王女のためのパヴァーヌ、夜のガスパール/ファリャ:火祭りの踊り、スペイン舞曲第1番神谷悠生(ピアノ)収録:2020年12月、東京文化会館(小)(ライブ)マイスター・ミュージックMM-4500-01(2枚組) ¥4400(税込)オクタヴィア・レコードOVCT-00190 ¥3520(税込)アールアンフィニMECO-1066 ¥3300(税込)sonoritéSNRT2103 ¥3080(税込)ゴルトベルクを年末に弾き続けて約50年。これは2020年の演奏の記録だ。ある程度聴き進めてからライナーノーツを開いたら、「最初で最後のライヴでのソロの録音」「年令と共に、頭と指が私の意志を裏切ることが多くなってきた」という率直なコメントが飛び込んできた。大べテランにして、この謙虚な姿勢。小林道夫の意志をどう聴き取るか。俄然、面白くなった。音楽的にも難しく、体力的にもきつくなるという第25変奏以降はとりわけスリリングだ。半世紀にわたってバッハの奥義に迫りつづけた巨匠の生きざまが表れている。アリアに帰還して一息ついた後、アンコールの短いコラールが清々しい。(江藤光紀)鈴村真貴子は東京藝術大学大学院博士課程を「F.プーランクのピアノ作品演奏法」をテーマとした論文と演奏で修了。フランスでも学んだ彼女の演奏は音色と表現の幅が広く、スケールが大きい。プーランクの音楽は“半修道士、半放蕩児”と評され、一曲の中でも多彩なキャラクターがめまぐるしく展開するため、まとめるのが非常に難しいのだが、鈴村は作品の魅力を鮮やかに描き出すのと同時に、説得力のあるものとして聴き手に伝えてくれる。今回のアルバムにはプーランクの様々な魅力を味わえる楽曲が多数収録されているが、とりわけ「15の即興曲」は鈴村の幅広い音楽性を存分に味わえる。(長井進之介)どこまでも真摯で清純。新進ヴァイオリニスト伊藤万桜のデビュー・アルバムは、「流れるような、しなやかな」を意味するアルバム名と、あふれる“桜”色のジャケットのイメージ通り。派手さに走らず、自然な美しさを追求した演奏で、ロマンティックな4曲に付いた手垢を洗い流す。R.シュトラウスは曲が進むにつれて感興が乗っていき、第2楽章の清廉なリリシズムは心に残る。グリーグ冒頭のG線の旋律も粗野にならず、丁寧な左手のポジション移動で細かい音をおろそかにしないなど、目配りを利かせて作品を見直し、本来の姿に迫っていく。筋の通った俊英の登場だ。(林 昌英)冒頭に置かれたラヴェル「前奏曲」の、歌い出しの5つの8分音符だけで、その透明感の虜になってしまう。ソリストとして活躍する一方、ベルリン芸大修士課程でさらなる研鑽を積む俊英・神谷悠生。デビュー盤で取り上げたラヴェルとファリャの作品を、「一見、まるで異なるように思えて、音楽に対する視点に共通するものを感じる」と彼は言う。単にダイナミックと捉えられがちな作品にあっても、決して音を荒らすことなく、逆に施される精緻な彫琢。そして、すうっと自然に心に染みわたってくる清冽なる響き。2人の作曲家の佳品を、有機的に結びつけてゆく。(笹田和人)SACD
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